メロンパンは現代美術だ!
2018年10月3日
メロンパンは現代美術である。
「また、いつものこじつけだろ!!」
という声が聞こえてきそうである。
しかし、説明させてほしい。このコラム用に買った上記画像の14個のパンを食べたので、ぜひともメロンパンが、なぜ現代美術なのかを書かせてほしい。
■『メロンパン』には『メロン』が入っていない
そもそもメロンパンはなぜメロンパンなのだろうか?何によって定義されているのだろうか。
『メロンパンにはメロンが入っていない』という有名な歌がある。歌詞を紹介したりしようとすると、ジャスラックに申請をしないといけなくなるので、詳細は書けない。
ただ、歌になってしまうくらい、メロンパンにメロンが入ってないのは、わりと周知の事実である。それなのに、なぜメロンパンと呼ばれるのだろうか?
「いや、かにぱんにも蟹入ってないよ!」
という意見もあるとは思う。
それに対する反論としては、
「かにぱんは蟹の形を模しているパンという意味だから」
と説明することができる。
だが、その論法でいけば、
「メロンパンはメロンの形を模しているパンだから」
とも言える。
■『メロンの形』をしているからメロンパン?
上記の画像を見て、これがメロンに見えるかどうかは、主観の問題だが、完全に似てないとは否定できない。丸いという共通点が見いだせる。なるほど「メロンの形に似ているからメロンパン」ということで決着がつきそうだ、
が、しかし問題はそう簡単では無いのだ。以下の商品を見て欲しい。
このパン、パッケージの表示「5本入」の助数詞「本」でもおわかりのように、細長いのである。どう見ても丸いメロンの形ではないにも関わらず「メロンパン」を名乗っている。
この商品を見るかぎり、メロンの形をしているからメロンパンではないのである。
では、形ではないとしたら何がメロンパンを定義づけているのだろうか?
■『メロンクリーム』が入っているからメロンパン?
画像左「食感を楽しむ もちっと北海道メロンパン」には
【メロンクリームに北海道産のメロンピューレが使用されています。】と書いてある。
画像右「北のメロンパン」
このタイプの「メロンパン」にはメロンクリームが入っていて、しかも外側が緑色でより本物のメロンに近い。表記も「メロンパン」である。
だが、メロンクリームの入った「非メロンパン」というものもある。
■定義を揺るがす『ダブルメロン』の存在
この「ダブルメロン」。ヤマザキの「ダブル」は「メロンジャム」と「メロンクリーム」の二層の「ダブル」で、Pascoのは切り込みが2つの意味の「ダブル」である。メロンパンにもいろいろあるが、ダブルにもいろいろあるのである。
これらダブルメロンを「メロンパン」と言っても良い気がするのだが、あくまでも商品名は「ダブルメロン」である。「非メロンパン」なのである。
ここらで少し頭の中を整理しよう。
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・メロンの味のしないメロンの形のメロンパン。
・メロンの味も形もないメロンパン。
・メロンクリームの入ったメロンの形と色のメロンパン。
・メロンの形ではないメロンクリームが入っている非メロンパン。
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さらにこれを表にしてみた。
しかし、これでは共通項を抜き出して定義化することは難しい。
そして、この定義をさらに困難にする商品がある。
「レモンクリームのメロンパン」である。
■定義を根底から覆す『レモンクリームのメロンパン』
レモンクリームが入っているメロンパンは、「レモンパン」でなはなく「メロンパン」なのである。
これにより、メロンクリームが入っている方のメロンパンの「メロンパン」であることの根拠が、このパンの存在の前では揺らいでしまう。
「たっぷり!ホイップメロンパン」も「ホイップパン」ではない「メロンパン」なのだ。
いや、形がメロンなのだから、クリームの味がメロンで、ある、ない、にかかわらず、メロンパンなのだとしたら、メロンクリームであることがメロンパンであることに影響しないことになるが、それではメロンクリームが入ったメロンパンのメロンクリームの意味はなんなのか?いや、まて、そもそも形は関係なかったはずでは?
■では『メロンパン』とは一体何なのか?
ますます、わからなくなってきたので一般的な「メロンパン」の指すところの意味をWikipediaで調べてみた。以下のような記載がある。
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>>メロンパンとは、日本発祥の菓子パンの一種。パン生地の上に甘いビスケット生地(クッキー生地)をのせて焼いたパンである。
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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%B3
さらにメロンパンの「メロン」が「果物のメロン」を指す言葉ではないという説の記述もある。(メロンは厳密には果物ではなく野菜、もしくは果実的野菜だが、ここでは果物と表記させていただく)
以下wikipediaより引用
「名称の由来より抜粋
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・溝が入れてある様がマスクメロンの模様に似ているため
・「メレンゲパン」が訛ってメロンパンになった。
・ 紡錘形の形状と、表面に数本の溝が入れてある様が、メロン(マクワウリ)に似ているため。
・ 業務用調理器具「メロン型」を使用して成型したパンだから。
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いずれにしろ、「パン生地の上に甘いビスケット生地をのせて焼いたパン」の呼称として浸透していることは間違いない。メロンが果物のメロンを指す言葉でないとしても、これまでの例からも分かるように、もはや名称の由来は意味をなさなくなってきているのではないだろうか。
■定義手法が間違っていた!
つまりは、メロンパンの「メロン」を「果物のメロン」という解釈から定義を導きだそうという手法自体が間違っていたのである。もちろん、由来が「果物のメロンの形」説だとしても、である。
いま考えられる定義は
「パン生地の上に甘いビスケット生地をのせて焼いたパン」と、そこから派生したパン」
ということになるわけだ。
メロンの味も形も無関係な「メロンスティック」がメロンパンなのも、「ダブルメロン」が非メロンパンであるのも、これで全て説明がつく。
メロンパンという名称ですべてを包括して定義づけするのではなく、個々の違いを分類する形で定義づけしなくては、いけなかったのである。また、より正確に定義するには現在販売中のメロンパンだけではなく、メロンパンの歴史や製造方法について調べなければいけないのである。
■『メロンパン』は『現代美術パン』?
名称が実態を表さないという点でメロンパンと現代美術は似ている。
美術の「美」を美しいという意味で捉えた場合、美を志向していない作品や、コンセプチュアルな作品はあてはまらない。メロンパンの「メロン」を「果物のメロン」という意味で捉えた場合の実状とのギャップと同じである。
近年、そのギャップを埋めるために、「美術」より幅の広い意味をもつ「アート」という言葉を使った「現代アート」という言葉が多用されてきている。この「現代美術」の代わりに「現代アート」を使用する流れは、自然な流れとして止められないような気がするのである。
■「現代アート」に感じる違和感
それでも、個人的には「現代アート」という言い方には違和感を感じている。そして不思議と「現代」をつけない「アート」だけでの使用には違和感を感じない。これはどういうことか。
この違和感を自分なりに自問自答して分析してみた結果、
・ そもそも「美術」という言葉も明治初期につくられた訳語である。
・「現代美術」も、その「美術」の意味するものから派生したはずである。
・ つまり「現代」という時代を表す言葉を冠につけているのに「美術」から派生した「現代美術」を「現代アート」と言い換えるのは、その歴史の連続性が断たれてしまう
・ そのことから生じる違和感ではないか。
これが僕が個人的に考えた「現代アート」という言葉への違和感の正体である。
ただ、この主張には弱点がある。最初から「美術」という言葉が訳語であるという点である。また、そもそも歴史の連続性など無いと言う意見もあるだろう。このことは、自分の中でまだ結論の出ない問題ではある。
まあ、はっきり言って
「呼び方なんてどっちでも良いじゃん!」
という意見が大多数だと思う。もちろん僕もそう思っている。しかし、言葉が変化するのには、それなりの理由があるはずである。その理由について考えることは、必要だと思っている。
いつの日か、
『ダブルメロンこそ、真のメロンパンだ!』
という時代がやってくるかもしれない。そのときは素直に「現代アート」という言葉を受け入れようと思うのである。
ということで、メロンパンは現代美術パンなのである。
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今回のコラムは
9月8日(土曜)京都芸術センターでトーク「現代アートという言い方が嫌だ!」京都在住の美術作家木内貴志さんと話した内容の一部を抜粋して書きました。
ちなみに、会員登録しないと読めない中日新聞の方にも、このトークについての記事を寄稿いたしました。こちらと内容が被らないように書いてます!よろしればお読みください。
http://chuplus.jp/paper/article/detail.php?comment_id=582813&comment_sub_id=0&category_id=203
(2021年6月に確認したところリンク先の記事がなくなっていました)