継続利用に問題があるクリスタ素材から己を護る五箇条
September 8th, 2022 19:17・All users
夏らしい話をしておこうと思う。
先日クリスタASSETSにアクセスしたところ、このような通知が届いていた。
"あなたが購入/取得した素材が継続利用に問題がある素材として削除されました。"
キエエエエエエエエエエエ!!!!!!
ざっくりいうと「あんさんがダウンロードした素材、規約違反やったから消したで。あとよろしくな。」というお知らせである。
やはり信じられるのは己の拳のみ。
継続利用に問題がある素材とは
ひらたく言えばASSETSの利用規約に違反した素材のことである。
理由としては何かしらの権利を侵害しているケースが多いだろう。
よくある例として他人が作った画像や素材を使用していた、いわゆる著作権侵害だ。
・個人や企業がHPやSNSなどで公開しているデータを第三者が出品していた
・すでにASSETSに出品されている素材を第三者が再出品していた
・個人や企業がHPやSNSなどで公開・出品しているデータに第三者がトレスなどの改変を加え出品していた
こうした素材を使用して作品を発表した場合、最悪本来の作者(権利者)に訴えられ使用料や慰謝料を請求されるなどといった事態に発展する可能性もある。
だからこそ一部の人間はこの通知を見ると泡を吹きブッ倒れるのだ。
なおインターネットには加工再配布OKであったり、パブリックドメインやCC0などといった著作権が消滅している、あるいは権利者自ら著作権を手放しているコンテンツも多く存在する。
だがASSETSにおいてはたとえ「権利者が二次配布や改変再配布を認めている」場合でも、それらを使った素材の出品は禁止となっている。
権利者も人間である。今は問題なくとも将来気が変わり、やっぱ使わないでと物申してくるなど、なにかと面倒なケースに発展してしまう可能性もゼロではないだろう。
そうしたトラブルなどからユーザーを守る意味でも、セルシスは「ASSETSに出品する素材はすべてを自分で作ってください」というルールを定めている。
そしてこれを破った素材をセルシスは許さない。怒りに触れた素材はセルシスビームによって爆発四散し、永久にDLできない状態となる。
同時にこれをDLしてしまったユーザーにも通知、もとい警告を送る。
さらにDLにあたってGOLDやCLIPPYを支払っていた場合、全額返還する。
返還された額や日付はCLIP STUDIOアカウント>ポイントサービス>GOLD通帳/CLIPPY通帳から確認できる。心当たりがあればぜひ確認したい。
これが先ほど書いた夏らしい話の正体である。
言うまでもないが、こうした通知をスルーし素材を使い続けたところで痛い目を見るのは己自身である。
「ひとつくらい使ってもバレへんか」なんて甘い考えをインターネットマンは許さないのだ。
通知が来たら何をすればいいのか
一にも二にも違反素材を使用しないことだ。
すでに使用した作品を発表してしまった場合はなる早で差し替え修正や公開取り下げを行い、クリスタ内に残っている該当素材やそれに関連するデータも残らず削除することを勧める。
「違反素材、セルシスビームで死んだはずでは?」とお思いかもしれないが、それはあくまでASSETSの中での話だ。
クリスタがいかに多機能といえど、素材フォルダやツールパレットに紛れた違反素材を自動検出して削除などといったセキュリティソフトもどきの事まではできない。
手元にあるデータは、あくまで己の手で整理することだ。
ブラシなど、サブツールパレットに登録して使用するタイプの素材であればパレットからも削除する必要があるし、さらにデコレーションブラシなら先端画像の削除も忘れずに行いたい。
グラデーションやらアクションやらはまた消し方が異なるし、それぞれのやり方まで書いていくと長くなってしまうので詳しくは各自で調べてほしい。
過去の違反素材をまとめて確認する
まずもって通知全然見てないとか通知多すぎ流れたという人もいると思うので、やり方を書いていく。
①マイダウンロードを開く
ASSETS右上アイコンのメニューからいける。
②違反削除のみ表示にする
そのままだと過去のDL履歴が全部並ぶ。左側のプルダウンメニューで絞り込める。
面倒な人のためにリンクも用意しておいた。存分に活用してほしい。
あとは名前やサムネイルをヒントに素材フォルダなどをあさり、該当の素材を削除すればよい。
もし違反素材が一件も表示されなかった人は非常に幸運か、地獄インターネットの心得があるかのどちらかだろう。
このままこの記事を最後まで読み、一層気持ちを引き締めてほしい。
自由の代償
そもそも、なぜASSETSからそうした素材が出てきてしまうのか?答えは簡単だ。
誰でも自由に素材を出品できるからである。
また基本的に出品前のチェック(審査)も行われない。
あくまでセルシスビームが炸裂するのは出品後、ASSETSに並んだあとの話だ。
ユーザーからの通報などによって問題が発覚した素材に対し、順次非公開や出品者への連絡、そして素材削除やアカウント停止などといった対応を行う。
pixivやTwitterと似たようなもの、と言ったほうが早いかもしれない。
インターネットマンならば身にしみて理解している人も多いだろうが、自由に投稿できるコミュニティは人が集まって活発になりやすい反面、ヤバい奴が飛び込んでくるリスクも高まる。
ASSETSとて自己防衛なしには生き抜けない魔界インターネットの一端なのだ。
自己防衛、投資、あと素材整理、汚部屋脱出だよね
セルシスの違反素材に対するスピード感には目をみはるものがある。新着で「明らかに違反やないかい」という素材を見かけても、一晩で消滅することも多い。
おそろしく速い運営削除、オレでなきゃ見逃しちゃうね。
だが例外も存在する。誰にも気づかれないままスーッと新着を流れ、忘れた頃に違反削除となるパターンだ。
これはレアケースかもしれない実体験だが、一度だけ新着からDLした素材が半年後に違反削除されたことがある。そういった事もあるにはあると心に留めたい。
運営とて万能ではない。特にトレスを行っているものなど、一見して違反と気づきにくい素材ほど勘のいいユーザーによる通報頼みになりやすいし、全体的に後手だ。
ASSETSに他力本願寺しつつ安全な創作ライフを送るには、多少なりとも防衛策を講じる必要がある。以下、個人的に考える5つの対策+αを順に解説していく。
①ASSETSのルールを理解する
②GOLDとCLIPPYの性質を理解する
③信頼できる素材を選ぶ
④すぐ飛びつかない
⑤削除済の素材は使わない
EX.素材整理する
おそらくこれ以外にも何かしら有効な策はあるだろうし、特に⑤は意見が分かれる部分だと思う。あくまで参考程度に留めてほしい。
①ASSETSのルールを理解する
あまりにも基本的な話かもしれないが、何事においても規約に目を通しておくことは大事だ。
普段規約を読まない人でも大丈夫だ。ASSETSには頑張れば小学生でも理解できるレベルで噛み砕いたページがご用意されている。
難易度で言えば、この記事を読破するよりはるかに楽なはずだ。
例外もいくつかあるものの、基本的にはここに書かれたルールを破った素材が非公開や違反削除の対象になると考えてよいだろう。
先ほども書いたように、著作権侵害がそれに当たる。
だが、二次創作やファンアート系もそこに含まれるのは意外に意識されにくい点かもしれない。〇〇というキャラクターの××の素材です!なんかもアウトとなる。
また顔写真や、顔が映り込んでいる素材も同様にNGだ。
これらを知っているのと知らないのとでは雲泥の差だろう。とくに素材を出品する気がなくとも、読んでおく価値はある。
②GOLDとCLIPPYの性質を理解する
「有償素材はセルシスが審査してるから安全」と言われるが、少し違う。
正確には「GOLD素材はセルシスが審査してるから安全」だ。
本題に入る前に一度、GOLDとCLIPPYについて整理しておこう。
公式ではどちらもCLIP STUDIOで使えるポイントと説明しており、これらを使わないとDLできないGOLD素材・CLIPPY素材をまとめて有償素材と呼んでいる。
だがその実態を考えると
・GOLD≒現金
・CLIPPY=ポイント
と説明した方が理解しやすいだろう。
さて、それぞれの素材がASSETSに並ぶまでの流れを図解するとこうなる。
CLIPPY素材は大きな括りでは有償素材だが、ASSETS上での扱いは無料素材と同じで、出品前の審査は行われない。
一方GOLD素材はユーザー審査とコンテンツ審査のふたつを抜けないと公開できない。この辺のクソ厳しさ・クソ面倒さに関してはこちらの記事でクソ細かく解説しているので、ぜひ読んでほしい。
クソデカ主語構文となるが、なぜここまでGOLD素材のハードルが高いのかというとインターネットは治安が悪いからである。
うかつに素性のわからないユーザーにGOLD(現金)での売買を許せば、利益のためなら権利侵害や詐欺をもいとわない出品者が増え、今以上に安心して使えない素材が増えることとなるだろう。
またGOLD販売にあたっては出品者の本名・住所・口座といった個人情報フルセットをセルシスに渡すことになる。身元がバレると不都合なユーザー、つまり悪意のある出品者をある程度追い返すねずみ返しとしても機能しているだろう。
繰り返すが、運営も万能ではない。
過去にはGOLD素材から違反削除が出た例もあると聞く。というより、そういった違反行為を繰り返す出品者が出たために審査が厳しくなったのだと。なんとも治安の悪い話である。
そういった意味では「GOLD素材は実績があり、なおかつ身元もバラせるユーザーしか出品できず、セルシスがOKを出すまでASSETSに並ばないので、絶対ではないにしろ何の審査も通さない無料素材やCP素材よりはまだマシな方」がもっとも適切な表現となるだろう。
③信頼できる素材を選ぶ
「いやいやそれがGOLD素材でしょ?」と思われるかもしれない。
だが無料やCP素材にも便利なものは多い。むしろこっちがASSETSのメインコンテンツですらある。
先ほど書いたように、GOLD素材は限られたユーザーしか出品できない。ゆえにその数はCP素材の約半分となっている。当然、選択肢の幅も約半分だ。
「GOLD素材だけで描け」などと言われた日には枕を濡らしてしまうかもしれない。
ではそうした審査を介さない素材は、何を指標にするべきだろうか。
「DL数が多く知名度が高い素材ほど多くの人目に触れやすい、つまり問題のある素材と気づけるユーザーによる発見通報の確率が上がる」ので、ゼロとまではいかないが相対的にリスクは下がるという考え方があるだろう。
つまり、めっちゃDLされてる超人気素材である。
④すぐ飛びつかない
③の延長として「出品からそれほど時間が経っていない(DL数が少ない)素材はリスク高め」と考えることもできる。新着素材である。
ASSETSの中で、ここほどの地雷原はない。
安全かどうか見極められる自信がない人ほど、マイリストを活用した様子見を勧めたい。気になる素材をは☆マークを押し、後日DLするだけだ。
もし「問題がある」と誰もが明確にわかるような素材であれば、数日で削除されるだろう。
なおマイリストへは右上アイコンの横にある☆マークを押せば行ける。
環境によっては右端のアイコンに格納されるので、その場合はアイコンからマイリストを選べばよい。
こちらは左側のボタンから購入/取得済みの素材とそうでないものに絞り込める。上手に活用したい。
⑤削除済の素材は使わない
ところで、素材を使ってはいけないあの素材集の名を聞いたことはないだろうか。
少し前にトレパク冤罪というワードがTwitterトレンドにあがった際、思い出す人も多かったかもしれない。
トレパクに関してはGoogle検索などを活用すれば著作権に詳しいインターネットマンによるわかりやすい解説がいくらでも出てくるはずなので、そちらに丸投げする。
重ねてあの素材集を知らない人のために、細かい概要が書かれた記事も貼っておく。
いわく、その素材集にはネット検索で出てくる画像をトレスした、いわゆるトレパク素材が多く含まれており、使用すると強制的にトレパクマンにランクダウンしてしまうという恐ろしいものであった。誰が呼んだか特級呪物である。
話をASSETSに戻そう。
規約違反の素材を複数投稿している出品者Xがいると仮定する。だが素材の一つが違反削除となった。出品者Xのもとにも「あなたが公開した素材を違反削除しました」という運営からの通告が届く。
このような状況で、出品者Xは次にどういった行動を取るだろうか。
可能性の一つとして、悪意の有無にかかわらず「他の素材も違反削除される前に自主削除してしまう」パターンがあげられるだろう。
ここまで書いてきたように、ASSETSの素材は運営によって削除されることがある。
だがそれとは別に、出品者自身の意思で自由に削除することもできる。
ここをポチッとするだけで爆発四散、たちまちインターネットという海の藻屑だ。
さらにこれは大事なポイントだが、このように出品者が自主的に削除した素材に関しては通知が発生しない。
素材が消えたことを知るには、マイダウンロードなどをさかのぼって確認する必要がある。わざわざやろうと思わない限り気づけないし、違反素材であったとしてもそれを知る手段は失われるのだ。
ここでもう一段階想像を膨らませ、自分が手がけた作品で盗作を指摘されたとしてみよう。だが問題とされる部分にはASSETSの素材を使用しており、自分自身は関与していなかった。
この場合、おそらく多くの人はASSETSから借りた素材であると反論することを選ぶだろう。証拠として配布ページのURLも添えれば、より一層証明力が高まる。
先ほど紹介した「あの素材集」のケースでもそうだ。指摘された絵描きが素材集から借りた素材であると反論したために再検証が進み、冤罪を晴らす事ができた。
では運悪くその素材が削除済みだった場合、どうやって無実を証明するべきか?
参考までに、マイダウンロードから見た時の削除済み素材を再現してみる。
左は公開中の素材で、右は削除済みの素材だ。
公開中の素材はすべて右下のDLマークから再DLできるようになっている。だが削除されるとこのマークが削除済に変わり、押してもDLできなくなる。
またサムネイルや素材名をクリックし個別ページに飛んでも、このようなメッセージが出るのみでどんな素材が入っていたかを確認することもできない。
このように削除済み素材でもサムネ画像・素材名・出品者名こそは痕跡として残るものの、それ以上の詳細な情報は残らない。
本で言うならば著者と本のタイトルが書かれた表紙カバーだけを残し、中のページはすべて処分されたようなものである。
あの素材集の場合、当事者が反論したことももちろんだが「素材データ収録CD-ROMつき書籍」という、元データの出どころが示せる物理的証拠が残っていたこと、また証拠そのものが多くの書店で流通・入手できる状態であったために検証が容易だったことが大きいだろう。
さて不幸にも素材を借りて制作した作品が盗作を疑われ、なおかつその素材が削除済みであった場合、はたして表紙カバーひとつで疑いを晴らせるだろうか?
状況によっては、たとえ潔白の身であっても分の悪い戦いとなる可能性は十分にある。
あまりにも考えすぎではないか?もっともである。
だがインターネットに限っては常に最悪のケースを想定しておくにこした事はない。その少し斜め上を行くことだって珍しくないのだ。
念のため付記しておくが、自主的に削除された素材やその出品者を「権利的に問題がある」と決めつけたり、非難するような意図は決してない。
素材に限らず、単純に恥ずかしくなったから公開を取り下げたいなんてことは誰にだってあるはずだ。
しかしそうした健全な理由による自主削除と、後ろめたい何かがあっての自主削除を第三者が判断することは非常に難しい。
冤罪による炎上、それらの対応に費やされる手間や費用、精神的負担などといったあらゆるリスクを考えると、「引き続きご利用いただけます」という緑色の字すら罠のように見えてしまうのだ。
結果として削除済み素材の使用は避けるが吉という結論に行き着く。
「使った後に削除された」ものに関しては致し方ないが、「これから使うつもりの素材が削除されていた」なら、自身はそれを使うことを諦めるだろう。
いかに優秀で便利な、救世主的素材であってもだ。
EX.素材整理する
せっかく対策を練り、違反素材に対して人一倍敏感になったところで、手元にある素材のすべてを把握・管理できていなければ意味はない。
うっかりミスで違反素材を使ってしまうようなことが起きては元も子もないからだ。
もし素材フォルダを漁っても目的の素材がどこにあるか分からなかったり、意図せず別々のツールパレットから同じサブツールが複数出てくるというような状態であれば、今すぐ改善した方がよいだろう。
脱線するが、クリスタは起動時にサブツールパレットの読み込みを行う。
無論これはツールの数が多いほど読み込みに時間がかかるし、それだけクリスタの起動も遅くなってしまう。
また素材フォルダにしろツールパレットにしろ、毎回どこにあるかわからないものに時間を費やすよりも自分に合った整理ルールを作っておき、それらに従った並べ替えや整頓をしておいた方が結果としては時間を使わずに済む。
リスク対策だけでなく、ストレージ節約や作業の効率化にもつながるのだ。
人によっては本当に、非常に、まったくもって気が重すぎる作業となるが、取り組む意義はあるはずだ。
なお使う機会がない素材を整理することはもちろんだが、発表済の作品に使用した素材までみだりに整理することは避けた方がよいだろう。
考えたくはないが、⑤で書いたように後の世になって災いを巻き起こす可能性も捨てきれない。あらぬ疑いをかけられた時のために、一度でも世話になった素材は可能な限り手元に残しておく必要があるだろう。
両手を合わせ、感謝の一礼。そして念入りに、厳重にグルグル巻きして保管する。
それが特級呪物とならぬよう祈りながら。
あとがき
延々脅すような記事になってしまったが、リスクと適切な対処法さえ理解していれば必要以上に恐れる必要はない。むしろ、それ以上に受けられる恩恵が大きいだろう。
なにしろここにある素材はぜ~んぶ何度でも使ってOK、商用利用OK、18禁作品でもOK、トレス利用OK、出品者への連絡やコピーライト表記もしなくてOKな太っ腹素材が約14万個(※記事作成時点)だ。
一体何だったらNGなのか?それは各自ルールを読んで確かめてほしい。