8月31日から3日間、パシフィコ横浜で開催されたCEDEC2010に、ベテランアニメーターでテレコム・アニメーションフィルム顧問の大塚康生氏が登場した。大塚氏は『太陽の王子 ホルスの大冒険』などで、東映アニメーション(旧東映動画)の長編劇場アニメーションを支えてきたほか、『ルパン三世』や『未来少年コナン』などの作画監督として宮崎駿氏、高畑勲氏らと仕事をしてきた。日本のアニメーターの顔ともいえる人物だ。
そして大塚氏に対するのは、『ICO』、『ワンダと巨像』などで世界的に高い評価を受けるゲームデザイン・ディレクターの上田文人氏である。細田伸明氏の司会により、世代、ジャンルを超えた才能が「~もっと上手くなりたい!動かす力~」と題して、アニメーションの動きについて語った。
異色の取り合わせではあるが、上田文人氏によれば実は同氏はアニメーションから影響を受けている。大塚氏も活躍したかつての東映アニメーションの劇場長編にどこか違うものを感じ、それは自身の仕事に大きな影響を与えたという。
また、トークの中では、長年アニメーションを見てきた大塚氏が、昨今のアニメーターの状況変化にもふれた。大塚氏によれば、現在のアニメーターは絵を描くことについては、昔より遥かにうまくなっている。しかし、一方で動きに興味のあるアニメーターが減り、かなりのアニメーターが動きを描けなくなっているという。それは、作品に使う原画の枚数が減っているかもしれないとしつつも、絵を動かしたい人は今後CGに行ってしまうかもしれないと危機感をみせた。
セッションは大塚氏の過去の経験や考え方を引き出し、興味深い話となった。ただし、そうした経験と上田氏のトークが切り離されたかたちになったのがやや残念であった。折角、アニメとゲーム、ベテランと新世代と異なる分野の大物いるのだから、相互の違いや影響、あるいは断絶についてより多く語られれば、さらに興味深いトークになったのではないだろうか。上田氏が冒頭に語ったアニメーションのノウハウがCGやゲームに入らないとの危機感は、他国に較べても遠い日本独特のアニメーションとゲームの関係を象徴していたはずだ。
あるいは上月氏の作品を見て、「CGはこんなことも出来るんだね」と驚きの声をあげる大塚氏の姿は、アニメとゲームのいまだ距離のある現実を映し出したものとも言える。アニメーションとゲームは、まだまだ互いに外から見て評価し合うような関係なのかもしれない。
CEDECがゲーム以外の分野からゲストを招くのは、ゲーム開発の可能性と領域拡大を外に求めるものである。だとすれば、今回のトークはゲームとアニメーションの互いの技術を披露するだけでなく、こうした両者の間にあるギャップを明らかにした点でより価値のあるものだったのではないだろうか。
CEDEC(CESA Developers Conference)2010
http://cedec.cesa.or.jp/2010/