あなたは本当に「論理的」か?…「攻撃ボタン」実験が明らかにする「持つもの」の心理と人間の誤作動
また、「持つ」選択をした参加者は、「ボタンを持った方が利益を得やすくなる」と考えていたこともわかった。つまり、「ボタンを持った人」は、合理的な判断をしたつもりなのである。
「興味深いのは、政治的な主義主張と『攻撃ボタン』の所有には明確な関係がなかったことです」と語る。この実験では、参加者それぞれに自身の政治的な意見をたずねている。
実験では、「現在の国際情勢から考えて、日本は核保有を積極的に議論すべきである」や「核保有には、相手国からの攻撃を抑止する機能がある」などの質問をして、「そう思う」「そう思わない」等、7段階で考えを問うている。ただし、大薗氏は「核保有に積極的か否かと、ボタンを保持するかの選択に明確な関連はなかった」と説明する。より抽象的な「保守的か、革新的か」や「ハト派か、タカ派か」という質問にも差は見られなかった。
自身の主義主張とは関係なく、利益を損なうリスクが高い「相手を攻撃できる力を持つ」という選択肢を選ぶ――。このことを大薗氏は「本来は利益につながる行動傾向が、誤作動を起こしたのかもしれない」と表現した。「人間は進化してきた中で、または社会生活の中で『相手が力を持っているならば自分も持つ』という行動を取ったほうが抑止力が働くため、利益になる場合が多かったのかもしれない。攻撃しても反撃される可能性がなく、抑止力が働かない場合でも、直感的にボタンを持つ、という選択をした人が多かった可能性があります」と分析した。
「現実世界で起きていることとは違う」
ただ、今回の実験では、事前に「攻撃ボタン」のことを「武器」や「核のボタン」などと明示しているわけではない。大薗氏も「現実世界で起きていることに直接当てはめて考えることはできません」とも付け加える。「今回の実験は人工的な状況ですし、反撃もできない。利益も損も少額で、現実での武力の保持や行使とは大きく異なります」とも明かす。
その上で、「国際情勢が目まぐるしく変わっている今だからこそ、一度冷静になって自分の考えを整理するきっかけにはなるかもしれない。今回の実験は武力の保有がテーマでしたが、合理的な判断だと思い込んでいても、実際にはメリットが少ないケースはあるということ。そういった誤作動を起こす可能性があるということをこの実験は示しています」と語った。
論文書誌情報
Ozono, H. & Nakama, D.(2024). I will hold a weapon if you hold one: Experiments of preemptive strike game with possession option. Evolution and Human Behavior, online publication.