2022年8月27日、TOKYO SPORT PLAYGROUND(東京都江東区)にて、HEROsが支援する一般社団法人センターポール主催のパラスポーツ体験イベントが行なわれました。本イベントの最後には4月にも行なわれた車いすバスケ ビギナーズカップも開催され、再びHEROsアスリートチームが参加。

<参照記事>

https://sportsmanship-heros.jp/article/220506/

今回集まったのは4チームです。HEROsアスリートチームに加え、センターポールが主催するパラスポーツ体験クラスに毎週参加している小学生チームと、その家族を中心に結成されたお父さんチーム、そして一般参加チームによるトーナメントが行なわれました。

前回優勝チームとして“連覇”を狙ったHEROsチームでしたが、結果は果たして……。

アメリカからも“本格派”が参戦

今回、HEROsアスリートチームに名を連ねるのは、指揮を執る根木慎志さん(元車いすバスケットボール選手、HEROsアンバサダー)を入れた10名です。


東俊介さん(元ハンドボール選手、HEROsアンバサダー)
小塚崇彦さん(元フィギュアスケート選手)
矢野良子さん(元バスケットボール選手)
栗原文音さん(元バドミントン選手)
伊藤俊亮さん(元バスケットボール選手)
田中雅美さん(元競泳選手)
立石諒さん(元競泳選手)
杉本一樹さん(元空手選手)
小池美月さん(元テニス選手)

伊藤さんと矢野さんの2人は共に日本代表経験を持ち、伊藤さんは204cmの長身を武器にアジア大会や世界選手権で活躍。矢野さんは2004年のアテネ五輪に出場したオリンピアンで、共に2000年代の日本バスケットボール界を支えました。競泳から参戦した田中雅美さんと立石諒さんはそれぞれ2000年シドニー五輪、2012年ロンドン五輪のメダリスト。2016年のリオ五輪でバドミントン・混合ダブルスで史上初のベスト8入りを果たした栗原文音さんや、冬季五輪からはジュニア時代からその名を轟かせ世界選手権銀メダルを獲得したフィギュアスケートの小塚崇彦さんら豪華な面々が揃いました。

加えて、HEROsのアスリート育成プログラムである『HEROs ACADEMIA』受講生である小池美月さんと杉本一樹さんも参加。世代、性別、競技の幅を越えて豪華な面々が集った形となりました。

そして今回は、海外メンバーの参戦です。アリゾナの車いすバスケクラブチームで活躍するカールさんとジェシーさんの2人がセンターポールの招待を受け特別参加。優勝チームは彼ら2人に根木さんを加えた特別チームと対戦できる権利が与えられます。

「今回も連覇を狙いに来ました!」と前回優勝メンバーの一員でもある東さんが意気込み会はスタート。

「前回に続いて、HEROsチームに多くのアスリートが来てくれました。それぞれ社会貢献活動や、もっとスポーツの良さを知ってほしいという思いを持った素敵なメンバーです」

根木さんからHEROsチームならびにメンバーの紹介、そしてカールさんとジェシーさんの挨拶を経て、まずはチームごとに練習開始です。カールさんが小学生チームへ、ジェシーさんが一般参加チームへサポートとして入りました。

小学生チームのサポートに入ったカールさん

ジェシーさんは一般参加のチームに入って指導

ジェシーさんはギャングの抗争中に銃で撃たれ、腹部より下を動かせなくなり、車いすバスケを始めたという経験の持ち主です。クラブチームで活動していたところアリゾナ州立大学から声がかかり、全米3位まで上り詰めました。

ほぼ初心者で構成される一般参加チームに対して、「ディフェンスは斜めに動きながらやること」「攻撃のときはフリーの味方を探してすぐに渡すことを続ける」など抑えておくべきポイントを端的に指導し、実践に備えます。

カールさんは少年たちに「とにかく思い切って、リスペクトしながら楽しもう!」とモチベートする言葉をかけたり、プレーを積極的に褒めていたりする姿が印象的でした。

小池さんは持ち前の英語力で積極的にコミュニケーションをとっていました。

トーナメント開始!ハイレベルな試合の末……

あっという間に練習時間も終わり、メインイベントであるトーナメントの開始。試合は8分ハーフで行なわれます。まずはHEROsチームとお父さんチームの対戦です。

開始早々、矢野さんのスリーポイントシュートがリングを揺らしあとわずか、というシーンを見せたHEROsチーム。しかしさすがの経験値を持つお父さんチームのパスワークに翻弄され連続で失点をし、ビハインドの中でゲームが進みます。後半には伊藤さんの高さとシュート精度を活かしたプレーで迫るものの、及ばず。前回優勝のHEROsチームがまさかの敗戦という大荒れのスタートです。

ブロックに入る小塚さん

車いすに乗りながらも違いあるプレーを見せた矢野さん

田中雅美さんが丁寧なドリブルで敵陣へ

初戦から活躍した伊藤さん。ゴール下の活躍はさすがでした

次に行なわれた一般参加チームと小学生チームの戦いでは、少年たちの躍動が際立ちました。毎週末共にトレーニングをしているメンバー同士のチームワークと素早い車いすさばきに、多数のスポーツ経験者の大人たちで構成される一般参加チームは後手にまわります。「大人と子どもだし、正直勝てると思っていました。けど全然うまかったですね」との声も。少年チームが実力を見せて圧倒し、決勝へ駒を進めます。

小児がんの子どもたちのサポートをする元Fリーガー・久光邦明さんも一般で参加

https://note.sportsmanship-heros.jp/n/n0129e08a88e4

次に3位決定戦では白熱の展開が待っていました。HEROsチームと一般参加チームの試合は決めては決められ、のシーソーゲームの末、最後は伊藤さんがさすがのゴール下での強さを発揮し決勝点を記録。未勝利では帰れないHEROsチームが勝利を収めました。

栗原さんは終始、笑顔でのプレーが印象的でした

豊富な運動量で積極的にゴール前に顔を出した立石さん

 勝利の瞬間、杉本さんは思わずガッツポーズを天に突き上げます

勝利に沸くHEROsチーム

この結果、決勝戦は毎週末同じ場所で練習をしている文字通りの“親子”チーム同士の対戦となりました。ここでも初戦のHEROsチーム相手に実力を見せつけたお父さんチームが子どもたちを前に威厳を示し、立ち上がりから攻め込みポイントを重ねていきます。少年たちは持ち前のスピーディな攻撃に積極的なスリーポイントシュートを交えて差を詰めようと迫りますが、勝手知ったるお父さんチームの守備を破りきれず、最終結果はお父さんチームの優勝となりました。

“親子対決”はお父さんチームに軍配

そして、優勝チームはアメリカから来た二人に根木さんが加わったチームとの対戦に臨みます。2000年のシドニーパラリンピックに出た根木さんと、パラリンピック出場こそはないものの全米大会で上位の結果を残したチームで活躍したジェシーさんとカールさんの二人のコンビネーションは圧巻。ボールさばき、車いすでの移動スピードやスラロームのなめらかさ、そしてシュート精度と格の違いを見せつけ会場は大いに湧きます。エキシビションマッチとはいえ三人は手を緩めずにスキルを発揮し、優勝チームを手玉に取るプレーを連発して勝利を収めました。

普段から笑顔が耐えない根木さんも、真剣な“アスリートの表情”を見せます

ジェシーさんはスピード感あるプレーを見せ何度も会場を沸かせました

トーナメントからこのエキシビションマッチまで、盛り上がりが滞ることなく時間が進みました。そして、会は終盤へ。表彰式では優勝チームへ賞品が贈呈された後、ジェシーさんとカールさんからそれぞれ参加者へコメントが送られました。

「とてもみなさんが楽しんでいる姿、みなさんのポテンシャルを見ることができて嬉しかったですし、キッズのみなさんがどれだけ成長するか?ということも楽しみです。日本に来てとても楽しい時間を過ごせました。これを機にみなさんとフレンドシップを作っていきたいです」(ジェシーさん)

「今日この瞬間を体験して、未来は明るいことを確信しました。センターポールの皆さんを始めこういったサポートがないとスポーツは楽しめませんし、感謝しています。色々な障がい者スポーツがありますが、それもみなさんが集まりサポートしてくれることで成り立ちます。また一緒にやりましょう」(カールさん)

「スポーツで一つになれる瞬間を味わえた」とHEROsチームを代表して根木さんもコメントし、一般参加をした元Fリーガーの久光邦明さんも「大人と子ども、障がいのある無しに関わらず一緒になって楽しめるスポーツはやっぱり最高ですね」とイベントを振り返りました。

久光さんの言葉の通り、様々な垣根を越えて一つになれるのがスポーツの魅力。特に、経験者が少ないパラスポーツは実力差が大きく出ないため、誰もがフラットに楽しめます。

みなさんもぜひ一度、車いすバスケを体験してみてはいかがでしょうか。 自然と笑みがこぼれ「スポーツって良いな」と思う瞬間を味わえるはずです。

<本イベントを主催したセンターポールでは様々なパラスポーツイベントの体験会を実施しています>

https://www.centerpole.work/