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「映画秘宝」重要資料編 映画秘宝が選ぶ日本カルト映画傑作選(前編)

文:町山智浩+田野辺尚人
初出:『映画秘宝』2000年5月号
※刊行時後にソフト化が難しかったもので、のちに商品化されたものはその旨書き添えてある。

目次
1 これぞ名画座の定番! 最強のキング・オブ・カルト4本
『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』『新座頭市 破れ!唐人剣』ほか
2 地獄に向かって突っ走る! 暴走ムービー大激突!
『狂った野獣』『ゆきゆきて、神軍』ほか
3 みせます女ド根性! フィメール・アクション4本
『女囚さそり けもの部屋』『赤い天使』ほか
4 アウトロー対決! 渡哲也VS内田裕也!
『仁義の墓場』『水のないプール』ほか
5 『ロッキー・ホラー・ショー』をぶっ飛ばせ! 狂気乱舞の和製ミュージカル
『黒蜥蜴』『星くず兄弟の伝説』ほか


1 これぞ名画座の定番! 秘宝最強のキング・オブ・カルト4本立て!

『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(東映)
1969年10月31日公開/石井輝男監督/キネ旬ベストテン選外
ビデオは絶対に出ない、日本カルト映画の最高峰!※

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輸入盤DVD

 タイトルゆえに、いまだビデオ化されないキング・オブ・カルト映画。『江戸川乱歩全集』という副題はハッタリでもなんでもなく、中身は『孤島の鬼』(人工的に奇形を作る本当の奇形の男の話)と『パノラマ島奇談』(狂った金持ちが桃源郷を作る話)のリミックス。奇形といってもリアルな特殊メイクを使っているのは、生まれつきペンギンのように水掻きのある男(土方巽)と、人工的シャム双生児(近藤正臣)ぐらい。土方が作ったユートピアのフリークスたちは土方主宰の暗黒舞踏劇団アズベクト館の団員たちが白塗りで象徴的に表現。なんの伏線もなくラストで唐突に現れ、すべての謎を解く明智小五郎(大木実)の扱いは実は原作に忠実。石井輝男が乱歩エッセンスを素直に並べてったら『アンダルシアの犬』(1928年)にも勝るシュールレアリズムの傑作となったってこと。「お母さーん」の絶叫と共に不実の兄妹が四散する「人間花火」のラストシーンはいまだに語り草。※本作は2007年にアメリカでDVD化。その後、日本でも東映ビデオから発売された。


『女獄門帖 引き裂かれた尼僧』(東映)
1977年4月8日公開/牧口雄二監督/キネ旬ベストテン65位
『悪魔のいけにえ』を越える幻の長残酷映画

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東映ビデオ

 足抜けした女郎(田島はるか)が逃げ込んだ駆け込み尼寺の正体は、乱交セックスと阿片の栽培と人肉食を生業とする地獄寺だった! 世界中を驚かした『悪魔のいけにえ』(1974年)に対する日本からの返答は、エロ・グロ・バイオレンスにちょっぴり哀愁の泣かせる一品。ヒロインを弄ぶヤクザ連中に佐藤蛾次郎と淡路章、木こりが片岡竜次と異常に濃い面々だが、こいつら全員、寺に誘い込まれ、性に溺れて腑抜けになったスキを突かれて、ナタを振り回す寺男(和製レザーフェイス=志賀勝)に惨殺され、味噌汁の具にされてしまう。そのあまりの怪しさに忍び込んだ隠密(成瀬正=78年『宇宙からのメッセージ』で怪獣のヌイグルミに入っていた人)は生首を飛ばされる。あまりの地獄ぶりにボスの尼僧の娘が寺に放火。紅蓮の炎に包まれた本堂に置かれた即身成仏のミイラが突然立ち上がるラストでは「なぜ?」を通り越して、場内に感動の嵐が吹き荒れるのであった。

『地獄』(新東宝)
1960年7月30日公開/中川信夫監督/キネ旬ベストテン選外
血の池、皮剥ぎ、針の山! 大蔵貢の新東宝が贈る地獄遊園地

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『地獄』(C)国際放映

 グワーンドシャーン「あなた〜ん」「はいカット」パッパーン。オープニング・タイトルを実況中継してみました。音楽の担当は暴力温泉芸者じゃなく天下の渡辺宙明。カルトの殿堂、大蔵貢が社長を務めたエログロ時代の新東宝が、その頂点を極めたのがこの『地獄』。伊武雅刀似の若き天知茂が、盟友・沼田曜一(セミ人間を倒した人類の救世主)とチンピラを轢き殺したことから始まる悲劇、悲劇、また悲劇。婚約者は自動車事故で死ぬわ、実家に帰ると母ちゃん死ぬわ、目の前でチンピラの情婦が橋から落ちるわ、挙げ句の果ては実家が経営している養老院の爺さん婆さんが食中毒で全滅。その他関係者も毒入りの酒飲んで全員死ぬ。とにかくものすごい勢いで人が死にまくる。それで後半の見せ場である地獄では嵐寛寿郎が明治天皇に続いて閻魔大王という大役をゲット。神代辰巳と石井輝男も同じテーマに挑戦しているが、中川信夫のこのオリジナルにはかなわないのであった。


『新座頭市 破れ!唐人剣』(勝プロ=大映)
1971年1月13日公開/安田公義監督/キネ旬ベストテン選外
ビデオ化不可能! ジニー・ウォング対勝新の一騎打ち!

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DVD:KADOKAWA

 カルトのカは勝新のカ。日本映画史上、最も強烈なオーラを持った男、勝新太郎。その出演作すべてがカルトだから困る。『その男、凶暴につき』(1989年)や『グッドフェローズ』(1990年)にはるかに先行する突発的暴力刑事ドラマ『顔役』(1971年)もあるし、「座頭市」シリーズだと、勝新自身がドラッグをキメながら監督したという『新座頭市 折れた杖』(1972年)、悪役の内田裕也が「俺は自分を蝋燭だと思ってる。自分の体を溶かしながら、世の中明るーく照らしてんだ」と吼えた1989年版も悪くない。でも、映画秘宝が推すべきは片腕ドラゴンことジミー・ウォングと勝新が激突するコレでしょう。お話は、いつになく殺風景で造成地のような荒野を彷徨う市が、途中で出会った中国人剣士(ジミー)と一瞬「デキる男」同士の連帯感を持つが、些細なことから決闘することになる顛末。日本では市が、香港ではジミーがそれぞれ勝利するバージョン違いもあり、現在観るのは困難です。※後にDVD化され、現在はAmazonプライム・ビデオにて鑑賞可能。

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