歯止め効かぬ暴力的指導の連鎖 4度処分の指導者に他校から誘い

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塩谷耕吾
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 体罰や暴言を繰り返し、4度目の処分を受けた指導者がいる。本人は反省の弁を述べるが、被害者の不安はぬぐえない。スポーツ界や教育界は、暴力的指導の連鎖を止めるシステムを機能させているだろうか。

 今年4月、全日本柔道連盟全柔連)や長崎県教育委員会に、日記が送付された。

 日記を書いたのは、4月に女子柔道の強豪である長崎県立高校への入学を控えていた生徒。3月下旬に女子柔道部寮に入寮してからの約2週間、40代の男性指導者の言動で追い込まれていく様がつづられている。一部を掲載する。

3/26 「お前白バイ隊員になりたいんか? お前にはむりだろ。笑わせんな」って、部員の全員の前で言われた。ほんとうに辛(つら)かった。

 尊厳を傷つける言動や人前での叱責(しっせき)はパワーハラスメントと認定される可能性が高い。男性指導者は朝日新聞の取材に「発奮させるために言った」としている。

4/1 「お前が小さくて、可愛がられてきとるだろうけど、そんなんするのは、どこのエロオヤジやて、柔道やめてモデルクラブにでも行けよ 俺はお前のこと気持ち悪いと思う」って集合した時にいってきて、本当に最低で、とても傷ついた。

 露骨な性的表現で、セクシュアルハラスメントとされてもおかしくない発言だ。男性指導者は「エロオヤジ、モデルクラブとは言っていない」と否定した。

4/3 もう限界。練習中に、頼むからお前は消えてくれ。大声で、消えろって言われた。

 学校側には、生徒に能力を伸ばす教育を受けさせる義務があるが、指導者自らがそれを放棄した発言だ。男性指導者は「消えろ、とは言っていない」と否定する。

処分後も大会に同行

 生徒はこの日、家族に「もう…

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この記事を書いた人
塩谷耕吾
スポーツ部|五輪、柔道、ボクシング
専門・関心分野
五輪、スポーツビジネス、ベッティング、井上尚弥
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    中小路徹
    (朝日新聞編集委員=スポーツと社会)
    2024年12月8日10時45分 投稿
    【視点】

     正常な環境でスポーツをしたいと思う高校生の悲痛で真っ当な声をすくいとった、貴重な記事だと思います。  いくつかのことが読み取れます。  スポーツにおける暴力的指導の問題は、かなり改善されてきていますが、殴る蹴るのあからさまな暴力は減ってきている一方で、暴言やハラスメントが、今もはびこっている実情です。  この指導者の場合、処分4回目は確かに「体罰」はふるっていませんが、「発奮させる」という指導上の理由で生徒の尊厳を傷つけている。「手を出さなければいいんだろう」とばかりに、有形の暴力以外の手段で選手を威圧し、言うことを聞かせようとするコーチングが正しいという思いが奥底に潜んでいるとみられ、暴力性は根強いといえます。  記事にある通り、過ちをおかした指導者が、再び現場に戻ることが出来る仕組みは必要ですが、根本的な再教育をいかに構築するか、問われていると思います。  他校から、また誘いがあるとのこと。「結果を出せる」という理由が大きいなら、それこそ、スポーツから得られるほかのことより、勝利ばかりに大きな価値を置く勝利至上主義の表れだと思います。

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