岩崎渉氏(提供:本人)
岩崎渉氏(提供:本人)

 バイオインフォマティクス領域の著名な研究者で、東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻の教授を務めていた岩崎渉氏。岩崎氏の大学公式ウェブサイトや研究室ウェブサイトが2024年4月初めごろに突然閉鎖され、「何が起こったのか」といぶかしむ声がバイオ業界で上がっていた。同年12月11日、岩崎氏が本誌の取材にオンラインで応じ、現在の状況と心境を語った。

岩崎渉氏の略歴とサイト閉鎖の経緯

 1983年生まれ。2005年東京大学理学部生物化学科卒業。2009年同大大学院新領域創製科学研究科博士後期課程修了(博士・科学)。同大大気海洋研究所地球表層圏変動研究センター講師、同大大学院理学系研究科生物科学専攻准教授などを経て、2021年より同大大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻教授。

 岩崎氏はこれまでに、魚類や哺乳類の環境DNA解析技術の開発や、微生物などの進化をゲノム情報から分析する研究など、多数の研究を手掛けてきた。2019年には「生物学と情報学の複合的アプローチによるゲノム進化研究」の業績で、「文部科学大臣表彰 若手科学者賞」を受賞した。

 2024年4月初めごろ、東京大の岩崎氏の大学公式ウェブサイトや研究室のウェブサイトが突然閉鎖された他、科学技術振興機構(JST)が運営する研究者データベースの「researchmap」からも岩崎氏のページが無くなった。なお、岩崎氏のGoogle ScholarORCIDのページは現在も残存している。

 2024年4月、本誌が同大の本部広報課に問い合わせたところ、広報課の担当者は、(1)同時点で岩崎氏が同大に在籍していたこと、(2)研究不正といった事実はないこと──を明らかにした。

 その後の同年12月、同課の担当者は本誌取材に対し、「岩崎氏は現在、東京大に在籍していない。在籍しなくなった時期や理由など、詳細な経緯についてはプライバシーに関わるため開示できない」と回答した。また、同大が岩崎氏について大学内で何らかの調査を実施しているかどうかや、岩崎氏の研究室のその後の状況などについては、「非開示」(同課の担当者)としている。

これまで何があったのか。

 大学などが調査を行っている最中のため、自分からも詳細は開示できないが、個人間のトラブルがあった。私自身は、大学の規則に違反する行為を受けたと認識しており、その経緯や関連するデータなどを大学や公的機関に提出して、大学による調査を受けている。

 これまでに、大学からヒアリングを受けるなどしているものの、現在のところ調査が完了したとは聞いていない。また、現在までに退職あるいは解雇に関する通知は受けておらず、自分から退職したこともない。

研究室に在籍している学生やスタッフの現状はどうなっているのか。

 学生は30名ほどが在籍していたが、2024年4月時点では他の研究室に移籍して研究を続けていると間接的に聞いた。ただし、研究を続ける場所を全員が確保できたかどうか、自分は把握できる状況にない。

 これまで各人が進めてきた研究テーマは、研究分野の特性もありユニークなものが多い。そのため、他の研究室に移籍したからといって十分な環境を整えることが難しいものもかなり多いと思う。それぞれの研究に支障が出ているのではないかと心配している。学生のキャリアの先行きが不透明にならないよう、大学が責任をもって、形式的ではなく本質的な支援を行ってほしいと考えている。

共同研究者など、アカデミアの研究者からも、具体的な状況が伝わってこないことに関して心配の声が上がっている。

 サイト閉鎖当時、共同研究などの外部と連携したプロジェクトが多数進行していた。ただ、現在は、私としても動きようがない状況だ。共同研究者などたくさんの関係者が不安に思っていることと思う。

今後の研究活動などについて、現時点での考えを聞かせてほしい。

 繰り返しになるが、事実関係の調査が完了していないため、明確なことは言えない。いずれにしても、バイオインフォマティクス分野の学術研究では一定の研究成果を挙げてきたと自負している。例えば水中などにいる生物相を推定できる環境DNAのバイオインフォマティクス技術などは、アカデミアにも社会にも現に幅広く使われており、なくてはならない研究インフラになっていると思う。

 今回の件を経て、自分の知識や経験、能力を必要としてくれる場があれば、そこで何らかの活動を行うことは前向きに考えている。例えばこれまでに日本学術会議の若手アカデミーや日本科学技術振興協会(JAAS)などといった場で、学術研究のロビー活動にも注力してきたので、そういった取り組みに携わることも考えられるかもしれない。