自殺防ぐ「生きテク」2万7000人の命救う NPO代表オキタさん(徳島市出身)サイト開設16年
徳島市出身のオキタリュウイチさん(48)=東京都新宿区、NPO法人代表=が、自殺を思いとどまった人の体験談をまとめたインターネットサイト「生きテク」を運営し、自殺予防の一助となっている。開設から16年を迎え、サイトに設けられた、自殺をやめた人が押す「生きてみるボタン」は2万7千人を超えた。今後はSNS(交流サイト)を巡るトラブルなどの体験談も加え、より多くの悩みを抱える人に訴えかける。 自殺予防「生きテク」学ぶ オキタさん(徳島市出身)地元で講演 「生きるための技術(テクニック)を伝える」との意味合いがある生きテクには▽恋愛▽過労▽病気▽いじめ▽死別▽暴力▽借金▽その他―の8項目のページを設け、ジャンルごとに体験談を紹介する。 例えば、小学生時代に無視や悪口などのいじめを受けたものの、勉強に注力して他人から頼られるようになり自信を取り戻したというエピソードや、がんで妻を亡くした男性が娘からの一言で自殺を思いとどまった話など、100件を超える事例が掲載されている。 サイトを立ち上げたのは2008年。国内の自殺者が10年連続で3万人を超えたとのニュースを聞き、「自殺予防に貢献したい」との思いが高まったのがきっかけだった。知人らに協力を仰ぎ、自殺を考えたことがある約450人に聞き取り調査をするなどして体験談の記事を掲載した。 自腹で運営していたため、資金繰りなどの問題でしばらく更新が途絶えていたが、23年に友人の勧めで活動を再開。同年6月にサイト運営を担うNPO法人を設立し、今年8月にサイトのレイアウトなどを一新した。 サイトを立ち上げた08年当時と比べて現在は社会環境が変化しており、オキタさんは今後、SNSや介護疲れ、新型コロナウイルスなどの悩みに関する体験談も集める考えだ。 厚生労働省などの統計によると、23年の全国の自殺者は2万1881人。徳島県は100人だった。オキタさんは「若者の間では『なんとなく死にたい』という声も多くあると聞く。自殺を選ぶ前に、まずは生きテクの存在を知ってほしい。身の回りで苦しんでいる人がいたら、サイトを紹介してもらえたら」と話している。