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順調なのか?人工衛星ビジネス

現場の苦労は並じゃない
  • 2024年12月11日

福井の未来のスター恐竜を発掘してご紹介するDino★ラジ! 注目したのは県が取り組む人工衛星を作るプロジェクト。前回はどんな人工衛星を作ろうとしているのか紹介しました。このプロジェクトが始まったのは今から8年前。県が目指したのは繊維、メガネに続く次の産業に育てることです。70を超える県内企業が参加して始まったこのプロジェクト。これまでの道のりは、どんなものだったか。そして今どこまで進んでいるのか。エンジニアをお招きして詳しく話を聞きました。

番組収録の様子

前回は開発の中心的な役割を担っている福井大学特命准教授の青柳賢英(あおやなぎ・よしひで)さんにお話を伺いました。きょうも引き続きよろしくお願いします。

福井大学特任准教授 青柳賢英さん

よろしくお願いします。

そしてもう一人ゲストをお迎えしています。平成28年、プロジェクトの開始当初から参加をしている企業から、エンジニアの大久保清吾(おおくぼ・せいご)さんです。よろしくお願いします。

エンジニア 大久保清吾さん

よろしくお願いします。

大久保さんがいらっしゃる会社は鯖江にあります。工場で稼働する機械などを作るメーカーということなんですが、具体的にはどういった仕事が多いんですか。

創業したときは、眼鏡を作る、メガネのセルを削る会社だったんですけれども近年では電子部品を製造する自動化機械にシフトして業績を伸ばしています。

そもそもこのプロジェクトはどういうふうに始まったんでしょうか。

2015年ぐらいに、県民衛星プロジェクトというのが動き出したと聞いてまして。そこで衛星をつくろうというオファーが県からあったそうです。会社も、福井県のために貢献したいっていう思いでそのオファーを受けたと聞いてます。

大久保さんのところにはどういう話が来たんですか。

人工衛星を作ろうという話があるんだけど、大久保君興味ないかと、そういった感じで、オファーがありまして僕に。デスクワークしてる時だったんですけど、ちょっと、ちょっとちょっとってなって、そこでぼそっと。

その時、どう思いました。

宇宙って未知の世界だったんでもう不安だったんですけれども、まあ、せっかく新しい分野に、チャレンジできるって事で、ポジティブに考えようという思考に変えました。実際やってみないと分かんないと思ったんで、やってから考えようかな。それでも遅くないかなと。会社もそういった機会を与えてくれたので、社長とか会社全体含めてとっても今感謝してるところです。

最初にやった事は?

まさに今お隣にいる東京大学の、青柳先生のもとに行って、人工衛星を開発するにはどういったことをしなきゃいけないのかというのを1から学ばしてもらいました。

大久保さんと青柳さん

青柳さんが最初に講義をやったんですか。

簡単な講義と、そのとき大学で作っていた人工衛星の開発とか図面引いたりとかですね。そういったものを手伝ってもらう事から入ってもらいました。

簡単な講義っておっしゃってましたけど大久保さん、簡単でしたか。

えっと、やっぱり聞き慣れないことばが多かったんで、聞いたら調べるみたいな感じの、繰り返しだったので、簡単ではなかったですけど、まあ難しかったです。聞いたことないワードだらけです。

どんな単語がわからなかったか覚えてますか?

例えば、リアクションホイールとか。

リアクションホイール?青柳さん。何ですかリアクションホイールって。

リアクションホイールっていうのは、人工衛星の中に搭載して姿勢を制御するための装置と思ってもらえればいいです。いわゆるモーターで回すんですけれども、その反力で人工衛星の姿勢を制御をするというものです。

中にその回すものがあって、それを回すと人工衛星の姿勢を変えることができるんですか?

詳しく原理を説明すると、物理で難しいのでちょっと割愛しますけど。リアクションホイールというものを3つ搭載して人工衛星をコントロールします。

物理の講義も、大久保さんは受けたんですか?

物理の授業というか、実物(リアクションホイール)が目の前にあって、こういうもんだよっていう説明を受けながら、こういう事(人工衛星の姿勢を制御)をする機能を持った製品なんだなっていうのを勉強していった感じですね。

青柳さん。福井のエンジニアの頑張りは、どう見ていましたか。

最初は数十人いらっしゃったので、おのおのの方々がどういったものが得意かというのは分からなかったんです。けれども、結構長い間いてくれたんですね。数週間であったり、数カ月。本当に長い期間いて、その長い期間一緒に過ごすとおのおのの強みがわかってきます。図面を引くのがうまいというか、電子回路の設計技術であったり、試験の技術のレベルが高いとか。大学で作っている衛星にはない技術を各個人が持っていらっしゃったので、非常に強力な助っ人みたいな形になりましたね。

皆さんも努力もされていた?

そうだと思いますね。分からない単語とか分からない技術とかっていうのも自分で調べたりとかですね。福井県に講師を呼んで講義をしてもらったりとか。そういった取り組みもされておりますので、非常に、エンジニアの方々はもちろんそうですし、経営者の方々もそうですし、県の職員の方々も非常に努力してここまで来てるんだなと思います。

福井県が人工衛星に注目した理由の一つが、今後、市場規模の拡大が期待できることです。今年3月、経済産業省がまとめた資料では、2024年には宇宙産業の規模は世界で140兆円まで拡大するといいます。

経済産業省は宇宙産業の市場規模は世界で140兆円まで拡大するとしています。日本の国家予算と比べてみると、2024年度の予算案。一般会計の総額で112兆あまり。青柳さん。世界規模で見ると、日本の国家予算よりも大きなお金が動く可能性があるんですか。

そうですね。今、小さな人工衛星の開発というのどんどん進められています。それを打ち上げるロケットの開発も進んでいますし、打ち上げる数も増えています。これからは小さな人工衛星に部品を供給するメーカーも、どんどんどんどん増えていくでしょう。さらに人工衛星が数多く宇宙を回るようになると、人工衛星がゴミになった時にそれを回収するとか地球に落とすとかそういった技術も必要になってきます。要は、人工衛星の輸送手段であったりとかデブリ化防止の技術とか。そういったものも含めて成長していく産業だと思いますね。

きょうは大久保さんが関わって完成させたフレームを持ってきて頂きました。金属で出来た枠なんですが。高さが30cmぐらいありますか。

大久保さんが関わって完成したフレーム

はい。高さが340.5mmあります。

ということは、10cm10cm10cmの大きさの人工衛星が3つ分の大きさですね。これ試験をするのが大変なんだそうですね。

そうでしたね。振動試験とかすごい苦労したんですけれども。

打ち上げるときはロケットの振動に耐えなければいけないんですよね。最初の実験の時はこのフレームどうなったんですか?

普通にゆがみました。

ゆがむ?ゆするだけでゆがむんですか?

最初はゆがんだりネジが緩んだり。そういったトラブルが多かったですね。普通に揺らすやつもあれば、ドン!って衝撃をかけるような試験があったりするので、一概に揺らしているわけではないんですけれども、結構近くで見るとすごい感じで揺れているなっていうのが伝わります。

ゆがまないようにするためには、どこを直していくんですか?

1から部品の強度を考えて設計するのも大事ですし、部品の面をまっすぐするような加工っていうのも必要です。まっすぐ組み立てる技術も必要でして。

ネジもたくさん使われています。一つ一つが小さいですけど、大きさは?

直径が3mmのネジを使っています。長さは、いま見えてるやつで言うと6mmぐらいだと思います。

青柳さん。これ、強く締めればいいような気がするんですけど。単純に。

強くはもちろん締めますけれども、どうやって組み立てたか、どれくらいの力でねじを回したかっていうのもちゃんと管理して組み立てをします。

道具も持ってきていただいているんですが、道具自体は特殊ではないですね。

六角レンチがあって、ちょっと細めの精密なドライバーセットがあって。本当にホームセンターで買えるような道具ですが、これを使って人工衛星って作ることができるんですか?

はい。作れます。一般的な工具を使って組み立てしてます。

そんなものなんですか?青柳さん。

道具は普通のものを使いますけれども、組み立ての手順をきちんと管理することはポイントですね。人工衛星って1回宇宙に出てしまうと、何かあっても何が駄目だったかっていうのが分からないんですね。直接見に行くことができませんから。例えば、ネジが落ちたかなんてことは宇宙に行ったあとは分からないです。なのでどういったトルクで締めて、これならば絶対にロケットの振動が起こってもボルトが脱落しないとか、事前の実験で把握しておかなければならない。

いろんな苦労の繰り返しで、出来上がるものなんですね。

平成28年から始まった人工衛星プロジェクト。当初、70を超える県内企業が参加していました。しかし継続が難しいと判断する会社などが続出。現在は数社が残るだけになっています。

多くの企業が撤退していく中で、大久保さん自身がここまで頑張れた理由はどこにあると思っていますか。

やはり一番は、ものづくりをするのが好きだったこと。さらに、やった事がない作業ばかりで、全てがフレッシュだったので最後までやりきれたんじゃないかなと思っています。

厳しさもあったのでは?

地上で使うものを開発する仕事と一番違う点は、宇宙で使えると判断するまで評価する試験がいっぱいあるので、それをクリヤーしていくのが一番厳しさとしてはあったかなと思います。でも、乗り越えた時がやっぱりすごい何て言うんですかね・・・パッとなるような感じの思いがあるんで、そういったのを、逆に楽しみにとらえてやるようにしてます。

エンジニアの頑張りを青柳さんはどう見ていらっしゃいますか。

私は最初、人工衛星のことを知っている側の人間として皆さんにいろいろ教えていたわけですけれども、私が教えたことはほとんどの企業の方々はできるようになっておりますので、非常にうまくいった例かなと思います。エンジニアの皆さんの頑張りもすばらしいものがありますし、それを、続けようと思っていた経営者の方々であったりとか、支援してくれている県の方々とか。そういったチーム力というのは非常に重要なのかなと思ってます。

研究する側も責任が重くなりそうですね。

私は今まで人工衛星を作って自分の観測機器を乗せて実験をするって事を繰り返していたんですけれども、人工衛星は福井県の皆さんが作ってくれるので、私自身は別の研究として新しい地球観測をするためのカメラを作ったり、いろんなAI技術を取り入れた仕組みを作るとか。そういったところにシフトしていってそれをまた福井県の衛星にのせて開発サイクルを回していく。そういったことに取り組んでいきたいなと思いますね。

いいサイクルができあがっていく。それが、最終的には福井のためになりますね。

必ずなると思います。

ところで、大久保さんは、小学校4年生の息子さんがいらっしゃるということで。宇宙の仕事をしているお父さんに何か質問、飛んできたりしないんですか。

最近飛んできた質問だと、『何で宇宙に飛んでる人工衛星いっぱいあるのにぶつからないの?』というのがきました。

何て答えたんですか。

ちょっと、まあ合ってるかどうか。ちゃんとした軌道で、そして高度で回っているかを地球から監視をしているからだよっていうのを伝えています。

大久保さん。やりがいという点ではこの仕事はどうですか?

やりがいはあると思います。いろんな企業さんが参加して、もっと盛り上がるといいなと思っています。

日本時間の12月9日午後8時過ぎ、福井の技術が詰まった小型人工衛星が国際宇宙ステーションから放出されて無事軌道に乗りました。その様子はYouTubeで配信されていて、無料で見ることができます。人工衛星を作る技術が繊維、メガネに続く福井を代表する産業に成長するか。注目したいと思います。

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