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帰ってきた、ナイトキラーズ/Novel by ほっかピー

帰ってきた、ナイトキラーズ

1,939 character(s)3 mins

ナイトキラーズMV実装おめでとう、ありがとう
勢いに任せて書きました 感情多めです

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「そうか、もう【ジャッジメント】から一年経つのか」

 なずなの肩幅を測りながら、紅郎はぽつりと呟いた。
 彼の手にあるのはメジャーと、懐かしい黒い上衣。一年ほど前、突貫工事で仕上げたナイトキラーズの衣装だ。

「あっという間だな~。この一年、ほんとに色んなことがあった」
「俺達が夢ノ咲を卒業して、ESができて、アイドルを取り巻く環境ががらっと変わって……」
「より忙しくなって、おれたちも会う機会が減っちゃったよな」
「まぁ、同じ事務所な分、他の奴らと比べれば仁兎とは話すことが多いけどよ」

 全て測り終えたらしい紅郎は、鉛筆を片手に考え込んだ。一年前の型紙と、今測った数字を見比べて一言。

「……やっぱり、作り直さねぇとな」
「おれ、そんなに体型変わっちゃったのか!? 身長は伸びてないはずなんだけど……」
「筋肉の付き方がちょっと変わったんじゃねぇか。それに、去年は急いで仕上げたもんだから、今見ると直したい部分が山ほどある」
「今回は時間に余裕があるもんな。去年のあの時はほんと焦った、急に『二週間後ライブするぞ!』って言われてさ……」
「まだ一ヶ月はあるんだろ? 今回の『リバイバルライブ』ってやつは」


* * *


 それは少し前、紅郎たち宛にホールハンズに届いた企画書が発端だった。
『リバイバルライブ ナイトキラーズ編』
 近頃ESで話題となっている、かつて夢ノ咲時代に人気を博したユニットの一夜限りの復活イベント。最近ではデッドマンズ編が開催され、当時を知るファンからいわゆる新規層まで幅広く注目を集めた。
 とはいえ、一定期間活動していたデッドマンズと違い、ナイトキラーズはその当時ですら「一夜限り」のものだった。【ジャッジメント】、【ダイナーライブ】の他には全く活動していない、知る人ぞ知る臨時ユニット。そもそもの知名度が高いとは決して言えないが、果たして集客が見込めるのか……というささやかな心配は、英智の言葉で杞憂になった。

「ナイトキラーズのことは、当時もインターネット上で話題になっていたみたいだよ。そしてESが設立され、それぞれの知名度がさらに上がった今、改めてナイトキラーズを見たいという声が上がっているんだ」

 ――そういうわけで、紅郎は衣装を仕立て直し、英智はステージの演出に金をかけ、なずなは大学の知人たちに宣伝して回っている。レオはつい昨日帰国し、【ジャッジメント】の映像を見直して振り付けを確認している。
 衣装は、専門の者に任せることもできた。紅郎も振り付けを確認しなければならないし、高めのキーがなるべく綺麗に出るよう練習しておかなければいけない。それでも、自分でこさえた衣装だからと、紅郎は自分で仕立て直すことを決めた。おかげで今日も忙しいが、まるで去年の今頃のようで、心地よいと感じてもいた。
 やるべきことが多いほど、時間は早く過ぎていく。一ヶ月が二週間になり、二週間が三日になった。そして本番直前、衣装を袖に通しながら、ふと、顔を上げた。
それぞれのユニットでは滅多に着ることのない、黒い洋装。倒されるべき悪役という立ち位置を理解しながら、手加減は一切せず本気で倒しにかかった決闘。たまたまその場にいたからという理由で集められた、各々少なくない因縁のあるユニットメンバー。
 その時と違って、今は倒すべきと定められた相手はおらず、因縁はある程度飲み込んだ。しかし、当時ファンサービスなど微塵も考慮しなかった本気の勝負の様相が、きっと話題を呼んだのだろうと今では思う。

「……お前ら、本気でかかれよ」

 レオもちょうど、同じことを考えていたのかもしれない。

「今日は倒すためには歌わない、踊らない。でも、倒すために戦ったあの日のおれたちを、みんなはきっと見たいんだ」
「月永くん、あまり思い詰めすぎない方がいいよ。確かにあの時、僕たちは必死で戦っていたけれど」
「それ以上に、楽しんでた。違うか?」

 英智も、なずなも、笑っている。そうだ、あの場でレオは誰よりも大きな声で笑っていた。

「あの時、一番に飛び出して、客の反応も無視してひたすら喋り続けてただろ」
「……そうだった!」
「今すべきことは、全力を尽くして楽しむ、それだけだ」

 その時、客席から、登場を待ちわびる歓声が聞こえた。彼らのいる袖まで届く熱気で、待ち焦がれられている。

「さあ、行かないと」
「……そういえば、誰から先に出るか、決めてにゃかったな!?」
「心配いらねぇよ。ほら、月永が真っ先に出やがった」

 レオは一足先に熱い照明と視線を浴びて、両手をぶんぶんと振っている。
 紅郎も、光の海へ大きく一歩、足を踏み入れた。

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