2020.6.15
道路の照明をネットワーク化!東京・杉並区で「スマート街路灯」の実証実験中
街路灯の光量や消費電力をフレキシブルに変化させて省エネ化を目指す
ITとモノをつなぐ「IoT」(モノのインターネット)は、今や街全体のスケールへと拡大し「スマートシティ」として発展し始めた。そのスマートシティの社会実装を目指し、東京都杉並区で総合精密部品メーカーのミネべアミツミ株式会社と電機メーカーの岩崎電気株式会社が共同し、「IoT街路灯実証実験」を進めている。
スマートシティ実現に向けた実証実験、開始
近年、「スマートシティ」という言葉を耳にする機会が増えている。
例えば、電気、ガス、水道、道路といったさまざまなインフラとITをつなぐと、これまで把握できていなかった子細な公共データを取得することができるようになる。

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スマートシティはロボットやAI(人工知能)とも連携させれば、社会の超高齢化による労働力の減少、経済活動縮小の対策にもなる可能性がある
画像協力:ミネべアミツミ株式会社
現在、世界各国がスマートシティ化の取り組みを始めており、日本でも国を挙げて推進している。それは、都市部への人口集中、それに伴う交通渋滞・犯罪の増加、温室効果ガス・環境汚染物質の排出量増大など、多彩かつ膨大な社会課題が背景にある。スマートシティ化によって集められたデータを分析していけば、こうした社会課題が明確に可視化でき、解決のための手段を講じられると期待されているのだ。
そんなスマートシティ実現に向けて、かねてより意欲的だった東京都杉並区が場所を提供し、精密部品を製造・販売するミネべアミツミと照明機器を得意とする岩崎電気が、2019年秋から「IoT街路灯実証実験」を行っている。
街路灯をネットワークでつなぐメリット
実験場となっているのは、JR中央本線・西荻窪駅の北口。周辺約400mの範囲にネットワーク接続ができるスマート街路灯11灯、気象観測用の環境センサー1台が設置されている。

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実証実験中のスマート街路灯は、LEDの劣化を抑制する技術、強度の高いポリカーボネート製のカバー、腐食を防ぐ特殊な塗装などが施されており、経年劣化にも強いという
画像協力:ミネべアミツミ株式会社
このスマート街路灯は、独自の無線技術によって構築されたネットワークにより、環境センサーと共に一元管理することができる。
一見、「街路灯をネットにつないだだけ」と思うかもしれないが、管理できるようになることは想像以上に幅広い。例えば、夜間に消えてしまっている、または昼間に点灯したままになっている街路灯があればすぐに特定でき、メンテナンス対応が従来より早くなる。また、季節や時間に合わせてあらかじめ調光設定をしておけば、光量を自動でコントロールできる。
加えて、点灯状況や消費電力量をリアルタイムでモニタリングできるため、運用管理の効率化と電力費削減を同時に図ることが可能。つまり、行政コストの削減にもつながっていく。

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スマート街路灯のモニタリング画面。マップに設置点が示され、それぞれ調光レベルや消費電力量、点灯時間などが一目で分かる表示に
画像協力:ミネべアミツミ株式会社
また、併せて設置された環境センサーは、住民の住環境向上につながる可能性がある。
環境センサーは、主に温度、湿度、気圧、風速といったデータを観測し、収集する。街路灯が設置されるそう広くない範囲で局所的にデータを取得できれば、広域の天気予報よりも関係性の深い情報を地域住民に提供できるかもしれない。地元から自動送信されてくるのであれば、近所への買い物や洗濯などに使えるうれしいデータだろう。
「スマート街路灯の数は、1本でも1万本でもネットワーク内にあれば一括で管理できる」とミネべアミツミの担当者。実証実験は駅前の範囲だが、規模拡大は容易のようだ。
本格導入進む海外諸国。期待高まるスマート街路灯
海外に目を向けると、スマート街路灯は既に多くの国で稼働している。中でもカンボジアは、電気代削減と道路照明の安定管理を推進しようと、首都プノンペンに約2000本、アンコールワット周辺に約3500本が設置されている。他にも、米国、イタリア、スイス、スペインで導入済みだ。

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同社が手掛けたカンボジアのスマート街路灯と実際の管理画面。あらかじめ調光設定されており、夕方と夜の光量が変えられている
画像協力:ミネべアミツミ株式会社
杉並区での実証実験は、いったん2020年7月31日に終了する。街路灯から取得されたデータは随時杉並区に共有されているものの、区民へのデータ提供は現時点では行われていない。
ただ、ミネベアミツミの担当者は、「実証実験後の検討にはなるものの、取得した数値データから、杉並区民に何らかのソリューションが提供できないか協議していく」と言う。現状で複数の自治体が興味を示しているとも言い、今夏以降の展開も気になるところだ。
また同社は、スマート街路灯以外にも、防犯カメラやパーキングセンサーといった連携技術の開発も手掛けている。今後、スマートシティ化促進に向けて、徐々に国内での実証実験や導入を進めていくとしている。
仕事からの帰り道、刻々と深まる夜と共に街の明るさが変わる。通りを歩けば、地元の商店街だけの天気予報がスマートフォンに届く。たとえ小さな街でも、スマートシティを実感できる日はきっと訪れるだろう。
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text:伊佐治 龍
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早稲田大学が海水とCO2のみで作製できる世界初のコンクリートを新開発
実用性の高いカーボンリサイクル製品として商用化へ前進
早稲田大学理工学術院の中垣隆雄教授と秋山充良教授の研究グループは、CO2を海水中のマグネシウムを用いて炭酸塩として固定したカーボンリサイクル材料「Waseda Magnesium-based Carbon Sequestration materials」(以下、WMaCS)の応用製品として新たにコンクリートを開発。既存のコンクリートと同等の凝結時間、建設材料として十分な圧縮強度を実現しながら、1m3あたり約20~110kgのCO2を長期間固定化できる、画期的なコンクリートの詳細を解説する。
(<C>メーン画像:Jasmin Wang / PIXTA<ピクスタ>)
海水から材料を採取、開発したカーボンリサイクル材料
CO2を分離回収し、資源として有効活用するカーボンリサイクル技術は、2021年策定の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、カーボンニュートラル社会実現のためのキーテクノロジーとして位置付けられ、中でもCO2の炭酸塩などへの固定化は、先行して実現可能な技術として期待されている。
CO2固定化材料には、酸化カルシウム(CaO)または酸化マグネシウム(MgO)が適している。カルシウムもマグネシウムも海水中にイオンとして多く含まれ、研究グループはマグネシウムを塩化マグネシウム水和物(MgCl2・2H2O)として回収、熱分解して得られるMgOを原料としたカーボンリサイクル材料「WMaCS(R)」(ダブルマックス)を開発した。WMaCSを用いて作成されたコンクリートは、1m3あたり約20~110kgのCO2を固定化することができる。

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WMaCSの製造プロセスフロー
資料提供:早稲田大学
従来のコンクリートに用いられるポルトランドセメントの原料となるクリンカー(鉱物や無機物質が焼き固まったもの)は、CO2が固定化された石灰(CaCO3)を熱分解して得られたCaOが主成分となっている。このため加熱用の燃料をカーボンニュートラル化しても、石灰由来のCO2の発生は避けられない。
一方、ポルトランドセメントにWMaCSを混ぜただけのコンクリートはCO2を固定化できる反面、施工性が悪化しひび割れなどが生じ強度も不足するなど、実用化への課題を抱えていた。
配合比を調整し、施工性と耐久性の課題をクリア
今回の研究は、古くから使用されている非水硬性(環境中のCO2と反応して化学物質に対する最適な耐性を発揮する)のソレルセメントの技術から着想を得て、材料と配合比を変えたコンクリートを作製し、性能評価を実施した。

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WMaCSの配合比を調整した材齢7日のコンクリート円柱供試体の圧縮強度を計測
資料提供:早稲田大学
その結果、混ぜ込むWMaCSの結晶をMgOの生成条件と炭酸塩化の条件によって制御し、ソレルセメントによって作製した粗骨材・細骨材を独自の配合比で使用することで、コンクリートに求められる1~2時間程度の凝結時間の確保と圧縮強度の両立に成功した。
この結果を受けて研究グループは露天の耐候試験を実施し、特殊添加剤が材料劣化の抑制に及ぼす影響などの検証を進めている。現段階で、製造から半年を経過したコンクリートに目立った劣化は確認されていない。
また研究グループは、水処理装置や船舶用機器などの製造・販売を行う株式会社ササクラ(大阪市西淀川区)と広島県・大崎上島の実証研究エリアにおいて20トン/日の海水を用いたカーボンリサイクル技術のパイロットスケールの試験を開始。2024年度中に同エリアにて供給される石炭ガス化複合発電由来のCO2を用い同様のコンクリートを作製する予定だ。なお、WMaCSを用いたコンクリートは消波ブロックやインターロッキングブロックなど、プレキャストコンクリート製品への展開を目指している。

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WMaCSを使用し、多様なプレキャストコンクリート製品を作製
画像提供:早稲田大学
石灰を一切用いず、海水とCO2のみで作製できる世界初のコンクリートの実現は、コンクリートの作製過程で生じるCO2の削減を大きく前進させる成果と言える。
研究グループは、今後のさらなる実用化を通して、カーボンリサイクル技術の早期社会実装を目指す。
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text:サンクレイオ翼






