一昨年、千葉県八街市の住宅に押し入り、住人夫婦にけがを負わせたとして、強盗致傷などの罪に問われた千丸(ちまる)剛被告(21)ら4人に対する裁判員裁判の判決公判が4日、千葉地裁で開かれる。花咲徳栄高(埼玉県)野球部で主将を務め、夏の全国大会で優勝を果たしてから、1年8カ月後の犯行は、世間を驚かせた。先月28日に結審するまでの法廷では、犯行前日に友人に参加を持ちかけられ、話に乗ってしまう軽率さが浮き彫りになった一方で、打ち込んできた野球をやめざるを得なかった被告の絶望と、やめた後の孤独が語られた。
「野球をしていない自分に声をかけてくれる地元の人間との関係を悪くしたくなかった」。千丸被告は法廷で、犯行への誘いに応じた理由を振り返った。犯行に至る経緯も、被告にとっては野球抜きには語れないものだった。
小学2年で野球を始めた千丸被告は、強豪の花咲徳栄高校で1年の秋からレギュラーに。主将に任命され、3年夏の甲子園では埼玉県勢として初めての優勝を勝ち取った。卒業後は、プロ野球選手を多く輩出する強豪、駒沢大学に進学。しかし、順風満帆だった千丸被告の野球人生は駒大で暗転する。
被告の法廷での説明によると、先輩から深夜までコンクリートの上に正座をさせられての説教、大雨の中でも傘を禁止されての買い出し、たばこの火による根性焼きなど、理不尽なしごきを受けたという。母親に夜中に電話で「もう限界だから助けて」と泣きながら訴え、野球部を退部。そして、「部の先輩と顔を合わせることも苦痛だった」と退学して家に引きこもるようになった。
「野球をやっていない自分には価値がない」と絶望する日々。野球関係者と疎遠になり孤独感を募らせる中、小中学校時代の友人と連絡を取るようになった。友人から事件前日の夜、「人のいない家からお金を運ぶ仕事」があると電話で誘われたという。
事件当日、初対面だった共犯者3人と神奈川県内で合流し、犯行現場となる八街市へ向かった。千丸被告は、強盗をするとは犯行直前まで知らなかったと主張。だが検察側は、犯行現場までの車内での会話で、強盗だと認識しなかったのは不自然で、千丸被告の証言は信用できないと指摘し、懲役6年を求刑した。
恩師である花咲徳栄の岩井隆監督も証人として出廷。大学でのしごきについて電話などで相談をうけた際は「耐えろ。そういう世界もある」と話し、退部後に報告を受けた際にも叱責したという。岩井監督は、「もう少し寄り添っていたらこうはならなかったと思う。重いものを背負っていかなくてはならない千丸の支えになりたい」と述べた。被告は今後、岩井監督の大学時代の後輩が経営する会社に勤める予定だ。
全身全霊をささげた野球を意図せず失ったむなしさが犯行につながった経緯には酌量の余地もあるが、突然、自宅に押し入られた被害者の恐怖は想像を絶し、決して許されるものではない。裁判員の判断が注目される。(長橋和之)