依頼者の立場になって最善の解決策を模索する 悩みを抱える人の支えとなりたい
一度は断念した司法試験に再チャレンジ
ーー弁護士を目指したきっかけを教えてください。
私が通っていた大学には、法律家を目指す学生が多く在籍していました。私もその1人で、「困っている人を助けられる仕事に就きたい」という思いから、弁護士を目指して勉強していました。
ただ、当時の私には司法試験はとても難しく、何度かチャレンジしたのですが一度断念してしまったんです。
その後、司法制度改革によってロースクール制度ができ、「やはり法律の世界で生きていきたい」と思うようになりました。30歳を過ぎてからロースクールに入学し、もう一度法律を学び直す形で弁護士を目指しました。ロースクールでは法律について実務的な観点から学ぶことができ、とても有意義でしたね。
当時は家族も抱えていたので、「司法試験に落ちるわけにいかない」という覚悟のもと、朝8時から夜8時まで学校でひたすら勉強していました。合格したときは、喜びよりもほっとした気持ちの方が大きかったです。
依頼者の立場になって考える
ーー注力分野を教えてください。
いろいろな分野を担当していますが、現在特に多く手がけているのは、刑事事件の弁護です。
法律に携わる資格はいろいろありますが、刑事裁判に関わることができるのは、弁護士、検察官、裁判官に限られています。そして、刑事裁判は、被疑者・被告人、被害者、家族といった様々な人の人生を大きく左右します。間違っても無実の人が罰せられることがあってはいけませんし、手続きに誤りがあってもいけません。
刑事事件に弁護士として関わる意義はとても大きく、やりがいを感じます。積極的に取り組んでいる分野の1つです。
ーー依頼者のために心がけていることはどんなことでしょうか。
「依頼者の立場になって考える」ということです。
依頼者が抱えている悩みや不安は、究極的には自分の悩みではなく他人のことです。でも、できる限り自分のこととして理解しようと心がけています。依頼者の辛い気持ちに最大限配慮し、その人が求める結果を出すための最善の方法を考えるうえで、とても重要なことだと思います。
「自分だったらどう感じるだろう」「依頼者の立場に置かれたらどうするだろう」と、歩いているときやお風呂に入っているときなど、仕事をしている間以外もよく考えています。
事件を起こした少年のよりどころとなる存在に
ーー印象に残っている事件やエピソードを教えてください。
これまで少年事件を数多く担当し、子どもたちと向き合うなかで、彼らが劇的に変わっていく姿を何度も見てきました。
以前、学校に行かずに非行に走っていた少年がいました。少年鑑別所や少年院への入所を経て、最終的には学校に通えるようになり、「修学旅行のお土産です」と事務所にクッキーを届けに来てくれたんです。彼とは長年関わっていたこともあり、変化がとても嬉しくて、「この仕事をしていてよかった」と実感しました。
少年事件は、法律的な面でサポートすることはもちろんですが、1人の人間として少年と向き合うことも大切です。まずはしっかり信頼関係を結び、その子が悩んだときにいつでも相談できる存在でいようと意識しています。
何かあったときに相談できる先があることで、その子自身が少しずつ強くなれるんです。弁護士として、少しでも彼らの支えになれればいいなと思っています。
体力を維持しながら刑事弁護を続けていく
ーープライベートについても伺います。休日の過ごし方を教えてください。
土日は留置場に行くことが多いです。留置所での面会は、一般の方は平日のみですが、弁護士は土日も夜間もおこなえます。一般の方の面会を邪魔しないよう、なるべく土日に足を運ぶようにしています。
ーー趣味を教えてください。
走ることです。40代後半で初めてフルマラソンを経験して以来、ランニングを続けています。フルマラソンにはこれまで2回出場し、歩いたり止まったりしつつも完走できました。
フルマラソンは、やってみると本当に気持ちがよく、味わったことのない感覚が得られます。ここ数年はコロナ禍でなかなか大会が開催されませんでしたが、今年こそは地元の神戸マラソンに出て、完走したいと思っています。
刑事弁護を担当するには体力も必要なので、趣味と実益も兼ねてランニングを続けていきたいですね。
ーー今後の展望を教えてください。
引き続き刑事事件に力を入れるとともに、労働事件など一般民事の事件も幅広く手がけたいと考えています。
また、今後のキャリアを見据えて、若手の育成など新しいことにもチャレンジしたいです。
ーー最後に法律トラブルを抱えて悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
弁護士ドットコムをはじめ、法律に関するサービスが増えたおかげで、以前より弁護士へのアクセスはしやすくなっていると思います。
それでも、「弁護士に依頼することではない」「法律トラブルかどうかよくわからない」と考えて、私たちのところに相談に来ることをためらう方はまだまだ多いです。
弁護士に相談するべきか悩み、自分で行動して事態が悪化したり、無駄にお金を使ってしまったりする方もいます。トラブルを抱えたら、迷わず弁護士のもとへ相談に来てほしいですね。
また、できるだけ早めにご相談いただくことが大切です。
たとえば、職場や学校でのいじめやパワハラに悩んでいるという場合、解決のためには、いかに証拠を集められるかがカギとなってきます。
会社や学校を辞めてしまった後に相談に来る方もいますが、辞めてから証拠を集めることは至難の技です。どうか、まだ職場や学校に在籍している間に相談に来てください。そうすれば、「録音をしておいてください」「被害についてメモをとっておいてください」とアドバイスができます。
法律的なトラブルかどうか、よくわからない段階でも全くかまいません。なるべく早い段階で弁護士にアクセスし、専門家の意見を聞いてみてください。