不適切な分娩で男児に重い脳障害 浜松市医療公社に1億9800万円賠償命令 静岡地裁浜松支部
浜松医療センター(浜松市中央区)で2019年、不適切な分娩(ぶんべん)対応により男児が重度の新生児仮死状態で出生し、重度の脳障害が残ったとして、同区の両親と男児(5)がセンターを運営する浜松市医療公社に慰謝料など2億5100万円を求めた訴訟の判決で、静岡地裁浜松支部(佐藤卓裁判長)は9日、同公社に1億9800万円の支払いを命じた。 判決によると、同センターは母親の分娩対応をした19年6月14日、胎児の心拍数モニタリング図で異常な波形が続き、低酸素状態を疑うべきだったのにもかかわらず、経過観察を続けて緊急帝王切開をする措置を怠った。長時間にわたり低酸素状態にさらされたことが仮死状態での出生の原因となり、それに伴い脳性まひなどの障害が残った。5歳になった今も入院中で、寝たきりで人工呼吸器を付け、自発呼吸の回復が見込めない状態が続く。 心拍数モニタリング図の波形の評価や、緊急帝王切開をしなかったことの是非と後遺障害との因果関係などが争点になった。佐藤裁判長は、実際の出産時間の4時間以上前には低酸素状態を疑うべきだったと指摘。緊急帝王切開をしていれば後遺障害が残らなかった可能性が高いとした。 原告の代理人弁護士が判決後に記者会見し、「モニタリング図を医師が診ず、助産師任せ。対応は極めてずさんだった」と強調。両親は弁護士を通じて「どれほど取り返しのつかない被害を及ぼしたのか、主治医や助産師はいま一度直視すべき」とコメントした。 同公社は「判決文を受け取ってから、精査して対応したい」とした。
静岡新聞社