学際バリアフリー研究分野 福島研究室
障害当事者の視点で人と社会のバリアフリー化を研究する
当分野では、視覚と聴覚に障害を併せ持つ盲ろう者としては世界初の大学教授である福島智を中心に、障害のある当事者研究者等が主体となって、人と社会の広義のバリアフリー化を目指して研究しています。
福島特任教授は自らの盲ろう者としての体験に立脚しつつ、人間にとってのコミュニケーションの本質、障害体験の意味などについて探求すると共に、現実の障害者支援制度のあり方についても研究しています。
全盲の大河内直之特任研究員は、盲ろう者や視覚障害者の支援技術に関する研究をはじめ、バリアフリー映画や演劇など、当事者の視点から幅広い研究に携わっています。
また、肢体障害者の上野俊行特任研究員は地域文化研究、とりわけアジアにおけるバリアフリー研究に取り組んでいます。
一方、長年聴覚障害児やその家族に寄り添って臨床と教育の実践的研究に取り組んで来た児玉眞美連携研究員は、耳が聞こえない・聞こえにくい子どもたちの教育に関して縦断的(継続的)な実践的研究を展開すると共に、聴覚に加えて他の障害を併せ持つ重度重複聴覚障害児の臨床・療育・教育・保護者への支援等の一体的実践研究にも従事しています。
この他、熊谷晋一郎教授(肢体障害)の「当事者研究分野」と連携し、発達障害や聴覚障害の当事者研究者との協力も深めており、福島・熊谷両研究室は、世界的にも類例のない障害当事者研究の拠点を形成しています。
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『ぼくの命は言葉とともにある』
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『盲ろう者として生きて』
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指点字通訳を受ける福島特任教授(研究室にて)
あなたが「こんにちは」と言ってから私が「こんにちは」と答えるまでに、2、3 秒のタイムラグがある。それはまるで、私が月面に いて、あなたと無線で対話する時のような感じかもしれない。
地球と月の平均距離は、約38 万キロ。無線通信に使う電波は、光速と同じだから、単純計算で、往復2 秒半くらいはかかる。
実際の私はもちろん、月面にはいないけれど、地球の夜の側の宇宙空間のような世界、つまり、暗くて無音の認知世界に生きている。私が目が見えなくて、耳が聞こえない、完全な盲ろう者だからだ。
そんな状態にいる私とどうやって対話するのか? 私が主に使っているのは、「指点字」を用いて通訳してもらうという方法である。指点字は、点字の6 つの点の組み合わせと左右3 本ずつの手の指を対応させた触覚的な会話法だ。
人は見えなくて聞こえなくても、「ことば」があれば生きていける。生涯をかけて、そのことを私は実証実験している。
メンバー
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- 福島 智 特任教授
専門分野:学際的バリアフリー学、障害学
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