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特集

一夫多妻を守る教団 FLDS

FEBRUARY 2010

文=スコット・アンダーソン 写真=ステファニー・シンクレア

も米国で一夫多妻制を掲げる教団の信者たちの素顔に迫る。


 最初の参列者がやってきたのは、夕方の6時頃だった。ここは米国アリゾナ州コロラドシティーにある集会所だ。30分もしないうちに、参列者の行列は、入り口から建物の横を通って駐車場まで達した。7時頃には何千人もの人々が数百メートルにわたってずらりと並んだ。皆、古風な晴れ着姿だ。男性は大人も子供もスーツで決め、女性はくるぶしまで隠れる長いドレスを身にまとっている。

 彼らは、数日前に心臓発作で亡くなったフォネタ・ジェソップの葬儀に参列するために、各地から集まってきた。彼女の息子たちは棺の足元に並び、参列者に挨拶している。夫のメリルは棺の横に立ち、その後ろにおそろいの白いドレスを着たたくさんの女性が並んでいる。彼女たちは全員、メリルの妻だ。68歳のフォネタは第一夫人だった。

 ここコロラドシティーと、州境をはさんで隣り合ったユタ州ヒルデールは、教団FLDS(The Fundamentalist Church of Jesus Christ of Latter-Day Saints)の発祥の地だ。FLDSは、モルモン教(正式には末日聖徒イエス・キリスト教会)の分派で、原理主義を掲げて今も一夫多妻の慣習を守っている。

 この地域に、信徒が入植したのは1920年代から30年代。米国社会からの孤立を避けようとしたモルモン教会が、一夫多妻の伝統を捨てる方針を固めたため、一部の信徒が教会を離れ、この地に入植した。教会は1935年、一夫多妻制を廃止しなければ破門すると、彼らに最終通告を突きつけた。だが、ほぼ全員が意志を貫き、独自の教団を発足させた。

 フォネタの葬儀では夫と3人の息子たちが、信仰あつい妻、そして母として故人をたたえた。だが夫の言葉からは、彼女の結婚生活が必ずしも順風満帆でなかったことがうかがわれた。

 メリルの妻の一人がその場にいないことは誰もが知っていたが、あえてその事実に触れる人はいなかった。4番目の妻キャロライン・ジェソップは2003年、8人の子供を連れて家を出て、FLDSの内情をつづった本を出版した。ベストセラーになったこの本には、外界と隔絶された信徒たちの生活ぶりが描かれ、フォネタの不幸な結婚生活についても触れられていた。夫に疎まれたフォネタは、日中は部屋に引きこもり、夜になると出てきて食事と洗濯を済ませ、古い映画を見るのが唯一の楽しみだったという。

 葬儀にこれだけ大勢の参列者が集まったのは、夫のメリルが教会内で高い地位にあるからだろう。彼はFLDSの幹部で、テキサス州西部の大きな支部を束ねる聖職者だ。しかし、私のガイド役を務めてくれた37歳の会計士、サム・スティードによると、FLDSでは大規模な葬儀は珍しくないと言う。

 「年に15~20回はありますよ。子供の葬儀でも3、4000人は集まります。こういう場で、信徒同士の親睦も深まりますからね」

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