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百田尚樹氏の講演中止 ウラに何があったのか 一橋大の大学祭実行委の男子学生が圧力を語った

 さまざまな形で中止を求める声が寄せられても、「表現の自由は民主主義の根幹だという信念を持っていた。中止は考えていなかった」と男子学生。開催の道を探るべく反対派との折衝にあたり、警備体制強化の検討を重ねていたが、心は疲弊していった。

 5月下旬、ARICと2回にわたり話し合いを実施。外国籍の学生を伴って臨んだARICのメンバーは、席上で「講演開催の事実や内容にショックを受け、自殺する人が出たら賠償責任を取れるのか」「講演をきっかけにヘイトクライムが起きて負傷者が出たらどうする」などと詰め寄った。「責任を追及されると、もう何も言えなくなってしまった」

 実行委は今月2日に中止を発表した。圧力に屈したのかという問いには、男子学生は「中止は学生自治で決めたこと。何を圧力というのかとらえ方次第」とし、「言論の自由を軽視したわけではない。実行委として、安全にKODAIRA祭を実施する務めを果たすことを優先した。決断は正しかったと信じている」と話した。

一橋大学

 明治8(1875)年、森有礼(ありのり)が開いた商法講習所を前身とする日本で最も古い社会科学系の国立大学。商業学校から大学への昇格や、東京帝国大学への統合反対のため教職員と学生、同窓会が一丸となって闘った歴史を持つ。学生の自由を重んじる校風で、卒業生には石原慎太郎元都知事や竹中平蔵元金融担当相らがいる。

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