シリア反政府勢力、大統領が逃亡し国は「自由になった」と主張 首都ダマスカス掌握と

動画説明, 反政府勢力が首都の「解放」を宣言したのを受けて喜ぶ住民(8日、ダマスカス)

シリアの反政府勢力は8日朝、首都ダマスカスに入ったと表明した。ロイター通信は政府高官2人の話として、バッシャール・アル・アサド大統領がダマスカスを脱出したと伝えた。シリアの首相は、シリア国民が選んだ指導陣なら協力すると表明した。

ロンドン拠点のNGO「シリア人権監視団(SOHR)」によると、ダマスカスの空港から出発したプライベートジェットにアサド大統領が乗っていた様子。この飛行機が離陸した後、空港にいた政府軍は撤収したという。

シリアの反政府勢力「ハヤト・タハリール・アル=シャーム機構(HTS)」は通信アプリ「テレグラム」で、「独裁者」のアサド大統領がシリアから逃亡し、シリアは「自由だ」と宣言した。暗黒時代の終わりで新時代の始まりだとも書いている。

HTSは、アサド政権によって国を追われたり投獄されたりした人は、家に戻れるようになるとして、「誰もが平和に暮らし、正義が行われる」「新しいシリア」になると主張している。

HTSのアブ・モハメド・アル・ジャウラニ(別名アブ・モハメド・アル・ゴラニ)代表は、「テレグラム」で、首都ダマスカス市内の政府軍部隊が「公共施設」に近づくのを禁止したと表明。政府庁舎について、「正式に移譲されるまでは、前首相の監督下にとどまる」としている。

シリアのモハメド・ガジ・アル・ジャラリ首相は8日朝、ソーシャルメディアで演説動画を発表し、自分は首都ダマスカスにとどまっており、国民のために最善の対応をするよう協力する用意があると述べた。

アル・ジャラリ首相はさらに、「シリア国民が選ぶ指導陣となら、協力する」、「さまざまな政府資料を速やかに移転するべく、あらゆる支援を提供する」と話したほか、シリアは「近隣諸国や世界と良好な関係を築く、普通の国」になれると強調した。

国民のために最善の対応をするため協力すると述べるシリア首相

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画像説明, 国民のために最善の対応をするため協力すると述べるシリアのアル・ジャラリ首相

ダマスカス中心部で政府庁舎が並ぶウマイヤド広場では、住民が踊っているとも伝えられている。国防省の当局者が首都の庁舎を離れたとの情報もある。

シリアの野党指導者ハディ・アル・バフラ氏は中東の衛星テレビ局「アル・アラビーヤ」に対して、アサド政権は倒れ、「シリアの歴史の暗黒時代は過ぎ去った」と話した。

アサド政権に対抗する反体制派の統一組織「シリア国民連合」を率いるアル・バフラ氏は、ダマスカスは安全だと強調。「あらゆる派閥や宗教の皆さん、他の市民に武器を向けず、自宅にとどまる限り、皆さんは無事です」、「復讐も報復もなく、人権侵害も行われない。人の尊厳は尊重し、守られる」とソーシャルメディア「X」に書いた。

2011年の内戦ぼっ発でシリアを追われた国民の多くが、世界各地でこの日の事態に反応している。ソーシャルメディアには、「自分の国が解放されている時、寝ていられるはずがない」という投稿もあった。

反政府勢力がダマスカス近郊にあるサイドナヤ刑務所を掌握して、数万人の政治犯を解放したと情報が広まると、多くの人が喜びをソーシャルメディアに投稿。「みんながこの日を待っていた」と書く人や、「シリアは今、シリア人のものだ」と書く人もいた。

ダマスカス郊外ジャラマナで喜ぶ住民(8日朝)

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画像説明, ダマスカス郊外ジャラマナで喜ぶ住民(8日朝)
ダマスカス郊外ジャラマナで喜ぶ女性たち(8日朝)

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画像説明, ダマスカス郊外ジャラマナで喜ぶ女性たち(8日朝)

これに先立ちHTSは8日、「首都ダマスカスに入り始めた」と表明した。市内で戦闘が始まっているとの複数情報もある。

HTSは7日には、国内第3の都市ホムスを「完全に解放」したと主張。組織の代表は「歴史的な瞬間」だと強調したものの、シリア国防省は「テロリストがホムスに入ったという情報に根拠はない」と反論していた。

ダマスカスの郊外では、アサド政権に抗議する群衆がアサド大統領の亡父の像を倒した様子が撮影された。

アサド大統領の居場所についてはさまざまな憶測が流れたものの、政府は大統領は今も首都ダマスカスで執務にあたっていると主張していた。

反政府勢力は11月末に北西部のアレッポを掌握。これを機に、中部ハマや南部ダルアー県などシリアの広範囲で、反政府勢力が制圧範囲を広げている。

動画説明, ダマスカス郊外ではアサド大統領の父親の像が倒された

首都で戦闘音と

アメリカ政府関係者は、BBCがアメリカで提携するCBSニュースに、ダマスカスが「地区ごとに反政府勢力に陥落している」と匿名で話した。

他方でシリアのモハメド・アル・ラフムーン内相は国営テレビで「ダマスカスの外周には非常に強力な安全保障と軍事的包囲網があり、誰もこの防衛線を突破することはできない」と述べていた。

ダマスカスの住民は米CNNに対して、反政府勢力がバルゼ地区に入り、戦闘が発生していると話した。「停電して、インターネットはなかなか通じない。住民は家の中にこもっている」という。

ロイター通信は、住民2人の話として、激しい銃撃音が聞こえたと伝えた。具体的な場所は明らかになっていない。

アメリカ拠点のNPO「シリア緊急タスクフォース(SETF)」は、シリアの首都が「すぐに陥落する」と主張している。反政府勢力を支持するSETFのムアズ・ムスタファ代表はCBSに、ダマスカスが反政府勢力に包囲されており、近く陥落するだろうと話した。ムスタファ氏によると、イランのイスラム革命防衛隊はすでにダマスカスを離れ、ロシアの海軍関係者もシリアを離れているという。

AFP通信によると、レバノンのイスラム武装組織ヒズボラも、戦闘員をホムスやダマスカスから撤収させているという。ヒズボラは、アサド大統領に協力してきたイランが支援している。

ロイター通信によると、ヒズボラはレバノン国境に近いシリア西部クサイルからも撤収したという。

シリア地図

HTSはシリア国内の政府庁舎、国際機関や国連の事務所を守る義務が自分たちにあると主張している。

国連のアダム・アブデルムーラ人道調整官は声明で、「国連がシリアから全職員を避難されているといううわさは事実ではない」としつつ、「業務に不可欠ではない」スタッフは出国させていると認めた。

国連のゲイル・ペデルセン・シリア担当特使はカタールのドーハで記者団に対し、シリアの状況は「刻一刻と変化」していると述べ、「状況緩和、事態の鎮静化、流血の回避、民間人の保護」を呼びかけた。さらに、「シリア国民の正当な希望実現につながるプロセスの開始」を促した。

シリアの幹線道路を南へ進む反政府勢力

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反政府勢力、主要都市ホムス制圧

これに先立ちHTSは、ホムス市のいくつかの地区を制圧したと発表した。イギリス拠点のNGO「シリア人権監視団(SOHR)」によると、HTSの戦闘員はホムス市内に入り、シリア軍の撤退後にいくつかの地区を制圧したという。ホムス市内の中央刑務所の職員は、「囚人が政府軍によって人間の盾として使用されることを恐れて」扉を開けたと報告されている。

ホムスでは複数の住民がBBCに、反政府勢力がすでに市内に入り、散発的な発砲が聞こえると話している。

ホムスは、地中海沿岸にあるアラウィ派(アサド政権の支持基盤)の中心地域と首都ダマスカスを結ぶ戦略的な要衝。

反政府勢力にとってホムス制圧には、象徴的な意味合いも伴う。2011年にアサド政権が平和的な民主化要求運動を弾圧したことを機に始まった内戦の初期、ホムスは反政府勢力の一大拠点だった。その一部は政府軍に3年間包囲され、2015年に国連仲介の合意の一環で、アサド政権がホムス全体を掌握したという経緯がある。

反政府勢力は7日、ハマを掌握した

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