「生活保護の受給要件をみたしているのに…」相談者の7割近くが申請断念 行政の“水際作戦”「実態と背景」とは【行政書士解説】
行政の「裁量」がマイナスにはたらくケースも
ところが、裁量がマイナスにはたらくケースもあります。その背景に、自治体ごとに策定する裁量基準に不備がある場合や、裁量基準そのものがあいまいだったりする場合があることが挙げられます。 また、都道府県や市ごとの生活保護地域的な偏りも見られます。 裁量基準は、国の法律・命令や、地方公共団体の条例、規則などの形式により定められるものと、行政内部のルールである「通達」の形で定められることがあります。 これらのうち、通達による行政運営は、そもそも法治国家の要請に反するという批判もあります。時に法の解釈、法の枠を超え、法に反して広く利用され、国民の権利義務に重要な影響を及ぼす事例が生じていることに基づく批判です。 また、「福祉事務所における生活保護の相談と助言」については地方自治体が主体的に行うこととされている「自治事務」にあたるので、原則として国が自治体の事務処理に関与できるのは「是正の要求」までです。したがって、福祉事務所のケースワーカー等の不適切と思われる対応があった場合に厚生労働省に相談しても、「基本的に、命令や指導はできません」という返答がなされます。 これも、福祉事務所の裁量権と呼ばれるものゆえなのです。
納得できない説明には「法令の根拠」を聞く
では、行政の窓口で申請をあきらめるよう仕向けられたと感じたら、どうすればいいのか。 窓口の担当者が間違えることは、故意か否かにかかわらず、起こり得ます。 「保護の決定や実施」に関する事項のなかには、行政窓口の職員が単独で判断をするのが難しく、その判断が誤っていたというケースもあります。また、安易に独断で対応してしまった結果、公平性に欠け、違法な行政対応となってしまうことも起こり得ます。 したがって、私たちは、生活保護申請で、福祉事務所に行ったとき職員の説明に納得できない場合は、 「根拠となる法令の条文を教えてください」 「なんという法律、あるいはいつの通達、具体的な箇所、文言も教えてください」 などと、理解できるまで職員に聞くべきなのです。 昨今は、「悪質な違法受給」の問題がクローズアップされることがあります。もとより、資産や収入、他者からの経済援助があるのに、それを隠して、保護費を受給しようとしていないか、見極めるのは重要なことです。生活保護費の原資は私たちが支払う税金だからです。 しかし、憲法・生活保護法の趣旨に照らせば、真に困っている人を救済することこそ、公正な行政のあるべき姿です。 「あの福祉事務所は、受給者が多い地域の管轄だから、調査がゆるい」とか、「厳しい」とか、そのようなうわさは気にしないで、本当に生活に困っているならば堂々と申請してまった問題はないし、スムーズに申請できてしかるべきなのです。
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