雨の夕刻、傘差さず楽しそうな男の子 家は「こっち」走り出したが…

中川壮
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 雨の中、小さな男の子が傘も差さずに一人で歩いている。楽しそうだ。

 学校帰りに通りかかった愛媛県大洲市の県立長浜高校2年の石丸夏実さん(17)は声をかけた。

 「どうしたの?」

 返答してくれたが何を言っているかわからない。

 「おうちわかる?」

 男の子は「こっち」と言って走り出した。

 「万が一のことがあったら」と心配し、後をついて歩いた。細い路地をどんどん走っていく。石丸さんは右手で差していた自分の傘を男の子にあてがった。

 なかなか家に着かない。スマートフォンは背中のバッグに入っていて取り出せない。男の子は笑いながら走り、話しかけても返答してくれない。手を差し出してもつないでくれない。

 その時、同じ水族館部の同級生で買い物に行く途中だった朝木海地(かいち)さん(16)と出くわした。状況を説明し、警察か学校への連絡を頼んだ。朝木さんも男の子の後について石丸さんと一緒に歩きながら、スマホで110番通報した。

 その後、自転車に乗った男の子の母親にばったり出会った。家族で男の子を捜していたのだ。

 6月1日の午後7時過ぎから20~30分の出来事。松山市のこの日の日の入りは午後7時14分だった。

 大洲署によると、男の子は近くの未就学児。母親が洗濯物を取り込んでいる最中にいなくなったという。母親は男の子がいなくなった理由を「(雨の中で)長靴を履いてみたかったらしい」と話したという。

 署と大洲地区防犯協会は7月3日、2人に感謝状を贈った。石丸さんは「楽しそうに歩いているので、最初は散歩でもしているのかと思った。たまたま通ったのが私だった」。朝木さんは「僕は電話しただけ。自分にできることはそれぐらいだった」と話した。井上博人・大洲署生活安全課長は「2人とも勇気と行動力が素晴らしい」と褒めたたえた。

 水族館部では、石丸さんは「マダコの鏡像自己認知」、朝木さんは「カクレクマノミの臭覚」について、それぞれ研究しているという。

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この記事を書いた人
中川壮
松山総局
専門・関心分野
途上国開発、ラグビー