おむすび

平成元年生まれのヒロインが、栄養士として、人の心と未来を結んでいく“平成青春グラフィティ”

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【おむすび】緒形直人さんインタビュー

渡辺孝雄 / 緒形直人

さくら通り商店街で靴店を営む、腕利きの靴職人。
妻と娘を亡くし、商店街の中で孤立している。

 

🍙出演が決まったときの気持ちは?

『ファイト』以来、19年ぶりの朝ドラ出演になります。社会派ドラマや若者のドラマが多いなかで、こうした日常を丁寧に描く井戸端会議のような物語は、朝ドラならではと感じているので、お声をかけていただき嬉しく思っています。BKでの撮影は雰囲気が良いですね。心地が良いです。

🍙撮影ための準備や役作りについて

関西弁で演技するのがこれまであまりなかったんですよ。なので、何度も音源を聞いて練習していたら、先日、別のナレーションの仕事で、初めてイントネーションを指摘されるという、自分にとってショックな出来事がありました。関西弁に引っ張られてしまいました(笑)
あとは、なるべく孝雄に近づけるように、撮影中もそうでないときも独りでいるようにしています。台本もあえて孝雄に関係する部分以外は、流し読み程度にしているんです。余計な情報を入れて、孝雄の演技に影響を出したくないから。それだけ孝雄の世界は閉じているんだと思うし。食事のお誘いもいただくのですが、チームの中で異端児でありたいのであえてお断りして、オフの時間も独りでいるようにしていました。
 

🍙演じる役・渡辺孝雄について

不幸な役どころですね。神戸の靴店店主・渡辺孝雄は、母子家庭で育ち、弟のために学校を辞め、家庭を支えていた苦労人という設定です。苦労しましたが結婚し、子供が生まれようやく幸せというものを感じていたところ、母を亡くし、妻を亡くし、男手ひとつで懸命に一人娘を育ててきた。そうした状況で阪神・淡路大震災に被災し、すべてを失って12年間、まだ一歩も前に進めていない男です。でもこういう人は、地震大国である日本にはおそらくたくさんいるのでしょう。僕自身だったとしても塞ぎ込んでいたと思います。
物語が進むにつれて、自分の不幸にとらわれていた孝雄が少しずつ前を向く様子が描かれていきます。聖人が靴の修理を頼むのもきっかけのひとつ。修理したいと靴職人の本能が芽生えたのでしょう。それでもまた悲しみの殻に閉じこもる。何年も一歩も前に進めなかった男が一歩片足を出そうとしても出せない。そんな簡単なものではないですよね。その葛藤や苦しさを丁寧に演じていけたらと思っています。

 

🍙視聴者へのメッセージと見どころ

 今回、堀内正美さんともご一緒しますが、彼から「親を亡くすことは過去を失くすこと。恋人や妻を亡くすことは今を失くすこと。子を亡くすことは明日を失くすこと」と教えていただきました。心の復興は人それぞれ違います。阪神・淡路大震災だけでなく地震大国である日本で、こうした人が現実にいることを絶対に忘れないでほしい。そういった意味でもしっかりと悲しむ、しっかり辛い顔をした演技を朝から届けていきたいですね。