神戸大病院は6日、肺がんの疑いがあると指摘された70代女性のCT画像診断報告書を主治医が確認せず、約1年間にわたり放置する医療ミスがあったと発表した。同病院は「患者に重大な影響があった」と認めているが、「個人情報の特定につながる恐れがある」とし、生死を含む現在の状態を明らかにしていない。
同病院によると女性は2016年、心臓血管疾患の治療のために入院し、CT検査を受けた。右側の肺に小さな影が認められたが、当時は完治した炎症の痕と判断された。
女性は退院後も定期的にCT検査を受けており、22年10月に影の増大傾向を確認した放射線科医は「肺がんの疑い」との所見を報告書に記したが、主治医は見落とした。翌年10月にも放射線科医が同様の所見を記入したものの、別の主治医が再び記載を見過ごした。
同月、かかりつけ医の指摘で発覚。この時点で女性のがんは、一般的に「完全には切除できない」とされる段階まで進行していた。主治医を務めた医師2人は、病院の聞き取りに「女性の心臓血管疾患の経過に気を取られた」と説明したという。医師2人は厳重注意とし、同年11月に患者や家族に謝罪した。
真庭謙昌院長は「患者や家族の方々には心身ともに多大な苦痛をおかけしたことを深く反省し、謝罪する」と述べた。今後は報告書の見落としを防ぐシステムを活用し、再発防止に努めるとしている。(千葉翔大)