韓国大統領 弾劾議案の採決 与党対応に関心【6日の動き】

韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が一時宣言した「非常戒厳」をめぐり、与党のハン・ドンフン(韓東勲)代表は「大統領の早急な職務執行停止が必要だと判断する」と述べました。その後、ハン代表はユン大統領と会談して意見を交わしていて、大統領の弾劾を求める議案の採決が7日に予定される中、与党の対応に関心が集まっています。

ユン大統領の弾劾を求める議案の採決をめぐり韓国の最大野党「共に民主党」の幹部は、国会の本会議を7日午後5時に開く予定だと明らかにしました。

また、6日午後11時半すぎ、韓国の与党「国民の力」の関係者は、ユン・ソンニョル大統領の弾劾を求める議案の採決を控える中、記者団に対し、「いま党の方針を述べることは難しい」とした上で、7日午前9時から再び集まり党の議員総会を開催すると明らかにしました。

韓国の与党「国民の力」の関係者は、記者団に対し、6日党の意見をユン・ソンニョル大統領に伝えたところユン大統領は「議員たちの意見をよく傾聴して考える」と述べたと明らかにしました。また、「党の方針を変更することについて話は出なかった。つまり維持されるということだ」と述べ、ユン大統領の弾劾を求める議案に反対するという党の方針に変わりがないという立場を示しました。

6日の動きを詳しくお伝えしています。

放送同時提供

韓国与党代表“ユン大統領 早急な職務執行停止必要”

「非常戒厳」を一時宣言したユン・ソンニョル大統領の弾劾を求める議案をめぐり、最大野党「共に民主党」などの野党側は大統領の弾劾を求める議案を国会に提出し、7日の採決を目指しています。この議案の可決には与党側の少なくとも8人の賛成が必要なことから、与党議員の動きが焦点となっています。

与党「国民の力」のハン・ドンフン代表は6日午前「わたしはきのう、混乱によって生じる被害を防ぐために今回の弾劾については可決させないと述べたが、韓国と国民を守るためにユン大統領の早急な職務執行停止が必要だと判断する」と述べました。

そしてハン代表は6日午後、ユン大統領と会談しました。韓国の通信社、連合ニュースによりますと、会談後にハン代表は非公開の党の議員総会に出席し「わたしの判断が覆るほどの話はなかった」と述べて、大統領の職務をただちに停止すべきだという考えに変わりはないとする立場を明らかにしたということです。

大統領の弾劾を求める議案の採決が7日に予定される中、ユン大統領や与党の対応に関心が集まっています。

一方で6日午後には、ユン大統領が国会に移動している模様だという報道が一時あり、大勢の報道陣が国会に集まりましたが、その後、大統領府は訪問予定はないと明らかにして、情報が錯そうしました。

ウ・ウォンシク(禹元植)国会議長は、このあと国会で緊急の談話を発表し「大統領による非常戒厳は歴史を否定し、国民の自尊心に大きな傷を与えた」と述べてユン大統領が一時、「非常戒厳」を宣言したことをあらためて批判しました。

日本大使館・総領事館「集会場所などに近づくこと控えて」

韓国にある日本大使館と総領事館は在留邦人や短期滞在者に向けて注意喚起のメールを発信し、今週末、首都ソウルや各地で複数の大規模集会が予定されているとして「外出する際、集会が行われている場所などに近づくことを控え、万一遭遇した場合にはその場を離れるなどの措置を講じ、安全を図るようお願いします」と呼びかけています。

【解説動画】国際部 矢野デスクに聞く

国際部の矢野デスクの解説です。
(動画は3分22秒 データ放送ではご覧になれません)

Q.7日に予定されている採決、どうなりそう?

国際部 矢野デスク
「与党の代表の発言で弾劾の公算が高まったかのようにみえるが、実際はまだ不透明といわざるを得ない。与党ハン・ドンフン代表の6日朝の発言に従って、弾劾議案に賛成する考えを示した議員は実はごくわずか。むしろ大統領に近い議員からはハン代表の発言に反発もでていて『やすやすと野党側に政権を渡すわけにはいかない』と発言する議員も。そもそも与党は、弾劾議案には反対する方針を一度、議員総会で決定していて、代表の考えだけで議員総会の決定を覆すことはできない。ただ、採決は、無記名で行われると見られ、議案の可決に必要な8人以上のいわゆる造反者がでるのかどうかは、ぎりぎりまで駆け引きが続きそう」

Q.そもそもなぜ韓国は大統領をめぐる混乱が相次ぐのか?

「韓国の民主化の歴史と大統領の強い権限に関係があると思う。韓国の人たちには、過去の軍事政権に対して市民が民主化を求めて運動を行い、軍の弾圧を受けながらも時間をかけて民主化を勝ち取ったという記憶がある。大統領には、民主化後も北朝鮮と対峙しているため軍の最高司令官も兼ねるなど極めて強い権限が与えられていますが、そのぶん、その権限の使い方には、常に国民の厳しい目が向けられてきた。2016年、当時のパク・クネ大統領に対する弾劾議案が可決されたのも、知人による大統領府高官の人事への介入などさまざまな疑惑がきっかけだった。韓国では、大統領による権力の乱用とみられる行動が発覚するたびに、国民からは極めて強い反発が出てきた」

Q.ユン大統領はどう出るのか?辞職の可能性も?

「大統領自身は2日間以上、公の場に姿を見せておらず、今どのような考えなのかはわからない。6日午後、ユン大統領は、与党のハン・ドンフン代表と会談したが、具体的な発言内容も明らかになっていない。ただ、韓国メディアによりますと、大統領の早急な職務執行停止が必要だとする与党のハン代表は、大統領との会談について『わたしの判断が覆るほどの話はなかった』と述べたという。つまり、2人の間で何らかの意見の一致や合意には至らなかったとみられている。これまでのところ大統領が辞意を表明するというような情報はない。予定されている7日午後7時の採決まで24時間を切った。このまま弾劾議案の採決が行われるのか、それとも急転直下、大統領が何らかの立場を表明するのか、注目される」

【動画】今後の見通しは?専門家に聞く

(動画1分56秒:データ放送ではご覧になれません)

韓国の与党「国民の力」のハン・ドンフン代表が「ユン・ソンニョル大統領の早急な職務執行停止が必要だと判断する」と述べたことについて、韓国政治に詳しい神戸大学の木村幹教授は「与党から8人の賛成が出れば可決される状況のなか、与党代表が宣言した段階で抵抗には限界がある。こうなってしまうと、大統領としてほぼ死に体だ。もう大統領に忠告し、止めてくれる人がいない、孤立した状況だという見方もできるだろう」と指摘しました。

そのうえで「重要なのは今回の動きが内乱罪にあたるかどうかだが、それについてユン大統領が今後、何か発言をするのかそれともしないのか注目される。辞職については大統領自身にとってもあまりにも展開が早いため、7日の弾劾を求める議案の採決までに決断するのは極めて難しいだろう。ただ与野党の調整が手間取り、採決が来週半ば以降にもつれこめば、辞表を出すことが得策だとして決断する可能性はある」と分析しました。

そして今後の展開については「今の状況でユン大統領が短期的に大きな活動をすることは難しいだろう。ただ、弾劾の議案が通り憲法裁判所による審議が始まるまでは時間がある。その間にユン大統領は支持者を動員して立て直し、法廷外で運動することも1つのカードになるだろう。大統領の動きによって政界の動きが変わるので、彼にはまだ残されたカードはある。混乱が長く続くおそれがあり経済に波及すれば周辺国にも影響は及ぶ。まだまだ予断を許さない」と述べました。

韓国世調 ユン大統領の支持率16% 過去最低に

韓国の世論調査機関「韓国ギャラップ」が5日までの3日間、1001人を対象に行った世論調査の結果を6日、発表しました。
それによりますと、ユン・ソンニョル大統領の
▽「支持率」は就任以来、最も低い16%で、前の週に比べて3ポイント下がりました。
▽「不支持率」は就任以来、最も高い75%でした。

また「非常戒厳」が一時宣言されたあと、5日までの2日間に限った調査では「支持率」は13%、「不支持率」は80%でした。

◆【動画】「非常戒厳を宣言」これまでの経緯は

▽3日午後10時半ごろ:ユン大統領「非常戒厳を宣言」
▽4日未明:国会で解除要求する決議案 可決
▽4日午前4時半ごろ:ユン大統領「戒厳を解除」
▽4日午前5時ごろ:閣議開かれ非常戒厳を解除
▽4日午後:野党 弾劾求める議案を国会に提出

(動画は3分3秒。データ放送ではご覧になれません)
韓国での一連の混乱は、ユン・ソンニョル大統領が3日夜、緊急の談話を発表し、「非常戒厳」を宣言したことをきっかけに始まりました。宣言の理由として、ユン大統領は、来年の予算案に合意しない野党側の対応などをめぐり「国政はまひ状態にある。憲政の秩序を守るためだ」としました。
韓国で非常戒厳が出されたのは1987年の民主化後、初めてのことでした。これを受けて戒厳司令官が政治活動の禁止や、メディアに対する統制などを盛り込んだ「布告令」を発表し、軍の部隊が国会の建物に突入する事態となります。

また、非常戒厳が出されたあと、軍のおよそ300人が中央選挙管理委員会の庁舎などに展開していたこともわかりました。選挙管理委員会によりますと、軍が夜間の当直などの5人から携帯電話を押収したほか、庁舎の出入りを制限し、3時間半近く庁舎を占拠したということです。資料の持ち出しはこれまでのところ確認されていないとしています。

4日未明になって、韓国の国会は本会議を開き、与党議員を含む190人が非常戒厳の解除を要求する決議案を全会一致で可決しました。午前4時半ごろユン大統領は再び談話を発表し、閣議を通じて非常戒厳を解除すると明らかにしました。非常戒厳は、宣言から6時間で解除されました。

4日午前、最大野党「共に民主党」はユン大統領に直ちに辞任するように要求し、午後には野党6党がユン大統領の弾劾を求める議案を国会に提出しました。これに対し、与党「国民の力」のハン・ドンフン代表は5日、ユン大統領に離党を求める一方で、党としては弾劾の議案に反対する考えを示しました。

弾劾の議案は5日未明、国会の本会議で報告され、野党側は、7日夜の本会議で議案を採決する方向で調整を進める考えを明らかにしていました。採決では国会議員の3分の2以上が賛成すれば可決され、大統領の職務は停止されますが野党側だけでは3分の2以上に達しておらず、大統領と距離を置く与党議員もいるなか与党「国民の力」の動向が焦点となっています。

ハン代表は6日午前、党の会合で「ユン大統領の早急な職務執行停止が必要だと判断する」と述べ、韓国メディアは弾劾の議案に事実上、賛成する立場を示唆したものだと伝えています。また、ハン代表は6日午後、ユン大統領と会談したということで弾劾の議案をめぐる与党の対応に関心が高まっています。

==【6日の動き】==

与党関係者“ユン大統領の弾劾求める議案反対方針変更なし”

韓国の与党「国民の力」の関係者は、記者団に対し、6日党の意見をユン・ソンニョル大統領に伝えたところユン大統領は「議員たちの意見をよく傾聴して考える」と述べたと明らかにしました。また、「党の方針を変更することについて話は出なかった。つまり維持されるということだ」と述べ、ユン大統領の弾劾を求める議案に反対するという党の方針に変わりがないという立場を示しました。

7日午前9時から再び集まり党の議員総会を開催

6日午後11時半すぎ、韓国の与党「国民の力」の関係者は、ユン・ソンニョル大統領の弾劾を求める議案の採決を控える中、記者団に対し、「いま党の方針を述べることは難しい」とした上で、7日午前9時から再び集まり党の議員総会を開催すると明らかにしました。

ノーベル文学賞 作家 ハン・ガンさん「衝撃を受けた」

ことしのノーベル文学賞に選ばれた韓国の作家ハン・ガンさんが、授賞式を前に会見を開き、韓国で「非常戒厳」が一時宣言されたことについて「2024年に戒厳の状況が繰り広げられたことに大きな衝撃を受けた」と述べました。ハン・ガンさんは、韓国で「非常戒厳」が出ていた1980年に軍の弾圧で多くの市民が死亡した「光州事件」などを題材に作品を執筆し、暴力や痛み、人間の尊厳などをテーマにした作品を生み出してきました。ことしのノーベル文学賞に選ばれたハンさんは、授賞式を前にスウェーデンの首都ストックホルムで6日、会見を開き、韓国で「非常戒厳」が一時宣言されたことについて「2024年に戒厳の状況が繰り広げられたことに大きな衝撃を受けた」と述べました。また、今回の「非常戒厳」の際に市民の姿をうつした生中継の映像を見ていたとした上で「素手で武装した軍人たちを制止しようとする姿も見たし、最後に軍人たちが退くときに気をつけて帰るよう、まるで息子に話しかけるように声をかける人の姿もありました。考え、判断し、苦痛を感じながらも解決策を見いだそうとした積極的な行為だったと思う」と市民の行動をたたえました。そして「武力で言論を統制する過去のような状況に戻らないことをせつに願っている」と話していました。

最大野党 “弾劾議案の採決 国会の本会議 7日17時開催予定”

ユン・ソンニョル大統領の弾劾を求める議案の採決をめぐり韓国の最大野党「共に民主党」の幹部はいまの時点での状況として、国会の本会議を7日午後5時に開く予定だと明らかにしました。

午後7時すぎ

与党の緊急議員総会 “結論まだ出ず 午後9時より再び話し合う”

6日午後7時すぎ、韓国の与党「国民の力」の関係者は、記者団に対し、緊急の議員総会が午前11時から開かれたものの、まだ結論は出ていないと明らかにしました。その上で、このあと午後9時から再び集まって話し合いを行う予定だと述べました。

韓国国防省「陸軍の首都防衛司令官など3人を職務停止」

韓国国防省は6日、「非常戒厳」が宣言された際に「戒厳軍」の動員をめぐって関与が指摘されている陸軍の首都防衛司令官ら3人の司令官を職務停止にしたと発表しました。また、韓国の通信社、連合ニュースによりますと、職務が停止された3人は国会への部隊の投入を指示したとされ、辞任したキム・ヨンヒョン前国防相の陸軍士官学校の後輩にあたるということです。

韓国与党代表「判断覆るほどの話はなし」韓国メディア

韓国の与党「国民の力」のハン・ドンフン代表は6日午後、ユン・ソンニョル大統領と会談しました。韓国の通信社、連合ニュースによりますと会談後にハン代表は非公開の党の議員総会に出席し「わたしの判断が覆るほどの話はなかった」と述べて、大統領の職務をただちに停止すべきだという考えに変わりはないとする立場を明らかにしたということです。

15:30ごろ

韓国国会議長「大統領の誤った判断あれば阻止する」

韓国国会のウ・ウォンシク(禹元植)議長は6日午後3時半ごろ国会で緊急の談話を発表し「大統領による非常戒厳は歴史を否定し、国民の自尊心に大きな傷を与えた」と述べ、ユン・ソンニョル大統領が一時、「非常戒厳」を宣言したことを改めて批判しました。

その上で、再び「非常戒厳」が宣言されるのではないかという観測が一時、韓国メディアで伝えられたことを受けて「第2の非常戒厳はありえず、許されない。韓国の民主主義は銃と刀では破壊できないことが12月3日の夜に確認された。万が一、もう一度非常戒厳の宣言という大統領の誤った判断があれば、国会の議長と議員はすべてをかけて阻止する」と述べました。

一方、ユン大統領が国会に移動している模様だとする報道が一時、あったことについて、ウ議長は大統領が国会を訪問するとの連絡を受けたことはないとした上で「訪問するとしても大統領の安全を担保することが難しい。国会の訪問計画を留保することを要請する」と述べました。

韓国国会前では弾劾賛成と反対のデモ

6日午後、韓国の国会議事堂の前には、ユン・ソンニョル大統領の弾劾を求める市民たちが集まり、「ユン大統領を弾劾せよ」などと声を合わせて訴えていました。一方、道路の反対側にはユン大統領を支持する人たちが集まり、「弾劾反対」と書かれたプラカードを持ちながら「多数の力で押しつける弾劾には反対だ」などと訴えていました。
また、周辺には大勢の警察官が出動して警備にあたっていました。

ユン大統領の弾劾を求める60代の女性は「法律を習った人が法律を破りながら大統領をしているので逮捕されるべきだ」と話していました。
一方、ユン大統領を支持する60代の男性は「韓国を守るためにはユン大統領が必要だ」などと訴えていました。

林官房長官「特段かつ重大な関心を持って事態を注視」

林官房長官は6日午後の記者会見で「日本政府として今回の韓国国内の一連の動きについて特段かつ重大な関心を持って事態を注視している。日韓両国は国際社会のさまざまな課題にパートナーとして協力すべき重要な隣国で、日韓関係全体の取り組みは情勢を注視しつつ適切に判断していく」と述べました。

岩屋外相「事態は極めて流動的 重大な関心を持って注視」

岩屋外務大臣は記者会見で「事態は極めて流動的で、刻々と移り変わっており、特段かつ重大な関心を持って注視していきたい」と述べました。その上で「私どもの願いとしては、引き続き、日韓関係を未来志向でしっかり発展させ、インド太平洋全体の平和や繁栄に貢献したい。日韓や日米韓の連携は極めて重要で、維持・継続させていくことができるよう日本政府として努力していきたい」と述べました。

韓国大統領府 “ユン大統領 国会に行く予定なし”

韓国大統領府は、ユン・ソンニョル大統領が6日、国会に行く予定はないと明らかにしました。これを前に韓国の公共放送KBSなどの現地メディアは、ユン大統領が国会に移動している模様だと伝えていました。

“ユン大統領と与党代表の会談終了”韓国メディア

韓国の複数のメディアは、ユン・ソンニョル大統領と、与党「国民の力」のハン・ドンフン代表による会談が、大統領府で行われ、6日午後、終了したと伝えました。ただ、会談の詳しい内容については明らかになっていません。

「非常戒厳」を宣言時 選管にも軍展開が判明

韓国のユン・ソンニョル大統領が「非常戒厳」を宣言した際、戒厳軍のおよそ300人が中央選挙管理委員会の庁舎などに展開していたことが6日、わかりました。

選挙管理委員会の発表では、軍が夜間の当直などの5人から携帯電話を押収したほか、庁舎の出入りを制限し、3時間半近く庁舎を占拠したということです。資料の持ち出しはこれまでのところ確認されていないとしています。中央選挙管理委員会は「憲法と法律に根拠がない明白な違憲、違法行為で、強い遺憾の意を表明する」としています。

中央選挙管理委員会に軍が展開した理由について、韓国メディアは「非常戒厳」の宣言をユン大統領に進言したとされるキム・ヨンヒョン(金龍顕)前国防相がことし4月の総選挙について「不正選挙疑惑を捜査するかどうか判断するためだ」と述べたと伝えていました。野党の大勝に終わった4月の総選挙の結果について保守系のユーチューバーなどが「不正選挙」だったと一方的に主張していました。

韓国検察当局 特別捜査本部設置へ 大統領の「非常戒厳」で

韓国のユン・ソンニョル大統領による「非常戒厳」の宣言をめぐり、最高検察庁は6日、ソウル高等検察庁のトップを本部長とする、特別捜査本部を立ち上げると明らかにしました。野党側は「非常戒厳」をめぐり、ユン大統領などを内乱などの疑いで告発していました。
最高検察庁は「厳正に捜査する」としています。

韓国国防省「検察の捜査に積極的に協力」

韓国国防省は、ユン・ソンニョル大統領による「非常戒厳」の宣言をめぐって、6日午後1時半ごろに声明を発表しました。声明は、辞任した前国防相の職務を代行しているキム・ソノ(金善鎬)国防次官がよみあげ「国民に心配をかけた責任を痛感し、あらためておわびを申し上げる」と陳謝しました。

そのうえで韓国の検察が「非常戒厳」をめぐる特別捜査本部を立ち上げることを明らかにしたことに関連し「検察の捜査に積極的に協力し、軍検察の人員も派遣して合同捜査を実施できるように措置を講じる」としています。

一方で、再び「非常戒厳」の宣言が出されるのではないかという観測が現地のメディアで一時伝えられたことを受けて「全く事実ではない。もし戒厳を発令する要求があったとしても、国防省と軍の合同参謀本部は絶対に受け入れない」と強調しました。

“ユン大統領と与党代表が会談へ”韓国メディア

韓国の通信社、連合ニュースはユン・ソンニョル大統領と与党「国民の力」のハン・ドンフン代表が6日午後、単独で会談すると伝えました。連合ニュースは、ハン代表の関係者の話としてユン大統領側が要請したと報じた上で野党が提出したユン大統領の弾劾の議案の採決を控える中で政局について意見を交わすものとみられると伝えています。

日本 外務省 断続的に協議 今後の対応を検討

外務省では、担当部署の幹部らが断続的に協議し、最新の情報を共有するとともに今後の対応を検討しています。幹部の1人は記者団に対し「ソウルの日本大使館と随時連絡を取りあい、最新の情報を収集している。今後、弾劾の議案が可決された場合と否決された場合のいずれも想定し、対応を検討している」と述べました。

円相場 ウォンが一時下落し円が買われる

東京外国為替市場では、韓国の与党の代表が「大統領の早急な職務執行停止が必要だと判断する」と述べたと伝わると、韓国の政治情勢が混乱することへの懸念から円相場では一時、韓国の通貨ウォンが売られて円が買われ、ドルに対しても円高が進む展開となっています。

6日の東京外国為替市場では、午前10時半ごろ「韓国の与党の代表が大統領の早急な職務執行停止が必要だと判断する」と述べたと伝わると、円相場では一時韓国の通貨ウォンが売られ、急速に円が買われる展開となりました。また、円はドルに対して1ドル=150円台前半で取り引きされていましたが、これにつられる形で円が買われ、149円台後半まで円高ドル安が進みました。ただ、その後はウォンが買い戻されるなど、韓国の政治情勢をきっかけに円相場は荒い値動きとなっています。

市場関係者は「韓国の政治情勢への警戒感が高まっているようだ。外国為替市場では、リスクを避けようと比較的安全な資産とみられている円を買おうという投資家が増えている」と話しています。

与党広報担当者「議員総会は非公開」

韓国の与党「国民の力」の広報担当者は6日正午前、NHKの取材に対して「議員総会は非公開のため、開催したかどうかも含めて明らかにできない」と話しました。

平デジタル相「韓国は重要なパートナー 動向を注視」

平デジタル大臣は閣議のあと記者団に対し「外国政府の内政に関わることで大臣の立場としてコメントは控えたいが、韓国は安全保障でも経済でも重要なパートナーであり、動向を注視していきたい」と述べました。

石破政権幹部「状況は流動的 重大な関心持って注視」

石破政権の幹部の1人はNHKの取材に対し「ユン大統領の行動が国民の理解や納得を得られなかったということではないか。状況は流動的で、重大な関心を持って注視していくほかない。日韓関係への影響はまだ見極められない」と述べました。
また別の幹部は「韓国の内政に関わるため日本政府としては情勢を見守るしかない。ただ、韓国の政権の行方しだいでは日韓関係が厳しくなることも予想され、今後の動きを注視したい」と述べました。

日本政府関係者「見通せない状況 注視するしかない」

政府関係者はNHKの取材に対し「韓国国内の政治状況がまだ分からず、今後がまったく見通せない状況だ。日本政府としては注視するしかない」と述べました。

外務省の幹部の1人は「韓国の与党が弾劾にどのように対応するのか、強い関心を持って見ている」と述べました。また、別の外務省関係者は「仮に弾劾が可決され、大統領選挙が行われるようなことになれば、日韓関係に大きな影響がある」と述べました。

“最大野党「共に民主党」も緊急議員総会”韓国メディア

韓国の通信社連合ニュースは最大野党「共に民主党」も午前11時半から緊急の議員総会を行うと伝えました。

【動画】与党代表“大統領 早急な職務執行停止必要”

韓国の与党「国民の力」のハン・ドンフン代表は6日午前、党の会合で「韓国と国民を守るためにユン・ソンニョル大統領の早急な職務執行停止が必要だと判断する」と述べました。

その上で、ハン代表は、ユン・ソンニョル大統領が「非常戒厳」を一時宣言した際、主要な政治家を逮捕するよう指示していたことが確認されたと明らかにしました。与党「国民の力」は午前11時から緊急の議員総会を開くとしていて、7日国会で採決が行われる予定のユン大統領の弾劾を求める議案について、与党の対応を話し合うとみられます。

与党代表“「非常戒厳」宣言時 大統領が主要政治家逮捕を指示”

韓国の与党「国民の力」のハン・ドンフン代表は6日午前、党の会合でユン・ソンニョル大統領が「非常戒厳」を一時宣言した際、ユン大統領が主要な政治家を逮捕するよう指示していたことが確認されたと明らかにしました。その上で「わたしはきのう、混乱によって生じる被害を防ぐために今回の弾劾については可決させないと述べたが、韓国と国民を守るためにユン・ソンニョル大統領の早急な職務執行停止が必要だと判断する」と述べました。

◆韓国大統領 弾劾手続きは

韓国の大統領が憲法や法律に違反した疑いがある場合、韓国の国会は、議員の過半数の賛成で弾劾を求める議案を発議することができます。
弾劾の議案は、国会議長が本会議に報告した後、24時間から72時間の間に採決が行われ、国会議員の3分の2以上が賛成すれば、可決され、大統領は職務を一時的に停止されます。
その後、憲法裁判所が180日以内に弾劾が妥当かどうか、最終的な決定を言い渡すことになっていて、裁判官9人のうち6人以上が妥当と判断すれば、大統領は罷免され、60日以内に大統領選挙が行われることになります。

◆【動画】ユン大統領 これまでの歩み

ユン大統領のこれまでの歩みを映像で振り返ります。
(動画は2分52秒。データ放送ではご覧になれません)
検察官出身のユン・ソンニョル大統領は、検察トップの検事総長として、前のムン・ジェイン(文在寅)政権に真っ向から対じした姿勢が支持されると、大統領選挙で当時、保守系最大野党だった「国民の力」の公認候補となり、当時の与党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏にわずか0.73ポイントの差で勝利して5年ぶりの政権交代を果たし、おととし5月、大統領に就任しました。

政治経験が全くなかったユン大統領は、検察出身者などみずからに近い人物を政権幹部へ起用しました。また、ムン前政権時代に「戦後最悪」とも言われるまでに悪化した日本との関係については積極的に改善を進めました。

懸案である太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題では、去年3月、韓国の最高裁判所から賠償を命じられた日本企業に代わって韓国政府傘下の財団が原告などへの支払いを行うとする解決策を発表しました。その後、首脳間の「シャトル外交」を再開し、ユン大統領は去年1年間で7回にわたって岸田前総理大臣と会談し、経済や文化などの分野でも両国の交流が活発になりました。石破総理大臣とも10月と11月に首脳会談を行い、来年の両国の国交正常化60年を見据え、連携を強化することで一致していました。

核・ミサイル開発を加速する北朝鮮に対しては、アメリカとの同盟関係を土台に断固として臨む姿勢を強調し、合同軍事演習の規模を拡大するとともに日本を含む3か国の連携を強化していて、こうした姿勢が去年8月、単独では初めてとなる3か国の首脳会談につながりました。

一方、ことし4月の総選挙で与党が大敗し、最大野党・共に民主党が国会で第1党を維持する中、少数与党のもとで厳しい政権運営を迫られてきました。野党は政権運営の姿勢が強権的だと批判し、国会の審議で来年の予算案に同意せず、閣僚やソウル中央地方検察庁のトップなどの弾劾の手続きを進めるなどユン政権との対立をいっそう深めていました。

さらに、ユン大統領にとって懸念材料となっていたのが、キム・ゴニ(金建希)夫人をめぐる疑惑です。キム・ゴニ夫人が高級ブランドのバッグなどを受け取った疑惑をめぐっては検察から収賄などの疑いで、事情を聴かれていたことが明らかになり、ほかにも、輸入車販売業者の株価操作に関与した疑惑、それに、夫妻で過去の選挙で与党候補の公認に不当に介入した疑惑なども取り沙汰され、野党は夫人を厳しく批判するとともに特別検察官による捜査を主張していました。

ユン大統領は5年間の任期の折り返しを前に開いた先月の記者会見で、夫人をめぐる疑惑について陳謝しました。支持率も落ち込み、世論調査機関の韓国ギャラップが6日発表した支持率は就任以来、最も低い16%となりました。

韓国 ユン大統領の弾劾議案 与党議員の動向が焦点に

韓国ではユン大統領が「非常戒厳」を一時宣言したことを受けて、最大野党「共に民主党」などの野党6党が大統領の弾劾を求める議案を国会に提出しました。

国会議員300人のうち、3分の2以上が賛成すると可決されますが、野党側だけでは達していないため、可決には与党「国民の力」の少なくとも8人が賛成に回ることが必要です。

一方で与党のハン・ドンフン(韓東勲)代表は5日「混乱によって生じる被害を防ぐため」として、党として弾劾に反対する考えを改めて強調しました。

ただ、与党内でも突然の「非常戒厳」の宣言に反発の声が出ていて、ハン代表は「違憲の戒厳を正当化できない」と述べて、ユン大統領に離党を求めています。

また、5日はユン大統領と距離を置く与党議員5人が会見を開き「弾劾による国政のまひを防ぐためにも必ず必要な措置だ」として、ユン大統領に謝罪を求め、大統領の任期を短縮する憲法改正が必要だと訴えました。

5人のうち1人は、弾劾の議案への対応について「具体的な立場を決めた状況ではない」と明言を避けました。

野党は弾劾の議案について7日の採決を目指していて、与党内が一枚岩とは言い切れないなかで、与党議員の動向が焦点となります。

韓国軍高官ら「非常戒厳」宣言など事前に知らされずと証言

韓国軍の高官らは、ユン・ソンニョル大統領による「非常戒厳」の宣言や、国会への部隊の投入について、事前に知らされていなかったと相次いで証言しました。

宣言を受けて戒厳司令官を務めたパク・アンス(朴安洙)陸軍参謀総長は、国会への部隊の投入について5日、国会で開かれた国防委員会の質疑で問われ「投入を知らなかった。私は命令していない」と述べました。また、キム・ソノ(金善鎬)国防次官は「非常戒厳」の宣言について「報道で知った」と述べて、事前に知らされていなかったと説明しました。

そして、誰が国会への部隊投入を指示したのかを問われると「国防次官は指示する立場にはなく、兵力投入の指示は国防相が行った」と述べて、5日、辞任が認められたキム・ヨンヒョン(金龍顕)前国防相の指示だったと明らかにしました。

韓国メディアによりますと、キム前国防相はユン大統領と同じ高校の1学年上の先輩にあたり、大統領の最側近だということです。5日の朝に辞任が認められたため、委員会の審議に出席しませんでしたが、ユン大統領に対して「非常戒厳の宣言を建議した」と報じられています。

韓国メディアは、検察がキム前国防相の出国を禁止して、捜査に着手したと一斉に伝えています。

あわせて読みたい

スペシャルコンテンツ