搾りたてのオレンジジュースのような色をした夕日が鮮烈だった。北海道苫小牧市の苫小牧港。作詞家岡本おさみとシンガー・ソングライター吉田拓郎が生んだ傑作「落陽」の舞台だ。夕日は接岸したフェリーの白い船体を染め上げ、程なく雲に包まれた。

 苫小牧港の歴史はそれほど古くなく、開港は1963年。その約10年後に岡本は苫小牧へ来た。列車の旅に少し飽きてきたところで、就航したばかりの仙台行きフェリーの存在を知り、乗り込むことにした。

 岡本のエッセー『旅に唄あり 復刻新版』(山陰中央新報社刊)によると「落陽」の詞に登場する「フーテン暮らしのあのじいさん」は、苫小牧の書店で岡本が出会った実在の人物だ。政治評論の雑誌を黒ずんだ指でめくりながら、立ち読みをしていたのだ。2人は公園のベンチで言葉を交わし、じいさん行きつけの賭博場で夜を過ごした。

 男たちが興じていたのはサイコロ3個を使うチンチロリン。じいさんは借金がかさみ、参加させてはもらえなかった。昔は評論家を志した知識人だが、戦時中は「アカ」と呼ばれ、息子は戦死。妻には逃げられ、失うものは何もなかった。

 苫小牧は製紙業...