「容姿の良し悪し」は人生のすべてを左右するのか 美貌格差の経済学者に聞く
イケメンや美女は性的魅力の面で有利なだけでなく、経済的にも成功しやすいと聞いて驚く人はさほど多くないだろう。だが容姿のせいで住む場所まで変わってくるとすれば? こうした「美貌格差」は是正されるべきなのか。美貌の経済学「パルクロノミクス」を研究してきた経済学者に、英紙「タイムズ」の科学記者が聞く。 【画像】容姿は「並以上」と自負している記者とジョージ・クルーニーの美貌格差 英国ロンドンには「不細工フィルター」があることを証明するつもりなど、ダニエル・ハマーメッシュにはなかった。 ましてや、この大都市が英国中のセクシーな人たちを飲み込みつつ、さほど美しくもなく、成功もしていない住民を吐き出していると結論づけることになろうとは思ってもみなかった。ハマーメッシュによると、後者は「ウェールズのようなところに移り住む」。 だが、ハマーメッシュはその発見に驚いたのだろうか。彼が生涯をかけて研究してきたのは、「パルクロノミクス」──しばしば隠れた、そしてしばしば議論の的になる、美貌の経済学だ。 美貌という、世界最後の許容された偏見であり、稼ぎから健康、寿命まですべてに影響する偏見について調べてきたハマーメッシュは、その発見に大して驚かなかった。 米国テキサス大学オースティン校の教授だったハマーメッシュは、ウェールズで何が起きているのかを見いだすべく、非常に独特で、非常に有益なデータセットを分析した。 もしかすると、このデータセットに含まれている読者もいるかもしれない。英国で1958年3月3日~9日に生まれた人は、育ちと老化の影響を調べた、ハマーメッシュの長期研究に登録されていた可能性が高い。そしてこの人たちが7歳のときに、担任の教師が奇妙な依頼を受けた可能性も高い。 1965年のある日、教師たちのもとには、英国の「全国子供発達調査」から公式文書が一通送られてきたはずだ。それは依頼書だった。生徒たちの容姿を評価してくれないかというものだ。 教室の前から生徒たちをこっそり凝視していた教師には、生徒の容姿を評定する選択肢があった。魅力的、魅力に欠ける、並、そして「異常な容貌」──最後の選択肢は、評定尺度のどこに位置するのか何も指針が与えられていなかった。 研究者らは美貌の客観的な基準を何も提供しなかった。それが必要だとは誰も考えなかったのだ。左右対称性、骨格のよさ、色艶のよい顔、スリムさ。「一目瞭然」であることは、研究に次ぐ研究が示してきた。 そんなわけで、先生たちはその調査にチェックマークを付けたあとは、いつもどおりの生活を続けた。こうして集められた回答は、ファイルキャビネットのどこかでほこりをかぶっていた。 だが、評定された本人たちは、異常な容貌だろうとなかろうと成長し、学校を卒業して、大学に行った、もしくは行かなかった。結婚した、もしくはしなかった。仕事をして、引っ越しして、地方に移り、引退した。