飲酒後じゃれ合いで親友の命奪う 悔恨の元近大生に遺族が送った「懸命に生きろ」の叱咤

親友の命を奪い、後悔の言葉を繰り返した被告(イラスト・山川昴)
親友の命を奪い、後悔の言葉を繰り返した被告(イラスト・山川昴)

飲酒して親友に暴力を振るい、死亡させたとして傷害致死罪に問われた元大学生の男(22)に大阪地裁は11月、有罪の判決を言い渡した。男と被害者の男性=当時(21)=はともに強豪で知られる近畿大剣道部に所属。周囲も認めるほど仲が良かった。いつも通りのじゃれ合いのはずが、不幸にも重なり合った複数の偶然が最悪の結果を招いた。遺族は法廷で悲しみを吐露しつつ、被告に呼びかけた。「一生懸命に生きろ」

重なった偶然、狂った歯車

事件が起きたのは昨年10月5日未明。居酒屋で2時間半ほど飲酒した被告らは大阪府東大阪市の路上を歩いていた。

被告からひじで体を押された被害男性は「うざいわ」と笑みを浮かべて応じつつ、被告の頰を平手打ちし、そのまま前方に走り去った。軽い小突きあいは2人にとって日常茶飯事。だが飲酒の影響か、この日ばかりは「カッとなった」(被告)。これが歯車が狂う一つ目のきっかけだった。

被告は男性を追いかけ、顔を殴った。一緒に飲んでいた後輩が被告を抱えるように制止したが「気持ちが収まらなかった」という。後輩を振り切って、怒りのまま男性の胸を押した。

倒れ込んだ場所が悪かった。男性はあおむけの状態で、止めてあった自転車の列に乗り上げるように転倒した。体の下に入った自転車が支点のようになり、大きくのけぞる姿勢に。首が強く伸ばされた結果、椎骨動脈損傷という、まれなけがが生じ、外傷性のくも膜下出血を発症した。

意識を失い、いびきのような呼吸をする男性に対し、被告は近くのコンビニで水を買い、男性の顔にかけたが、意識は戻らなかった。男性は救急搬送されたが、11日後に死亡した。

謝罪、反省繰り返し

今年11月18日に大阪地裁で開かれた裁判員裁判の初公判。被告は起訴内容を認め、「申し訳ございませんでした」と謝罪した。

被告人質問などでも「少しの怒りでこのような事態を生んだことに後悔と反省をしている」と謝罪の言葉を繰り返した。事件後に大学を自主退学。保釈後に2回、男性の実家を訪れ、遺族に土下座してわびたという。

幼いころから剣道に励んできた被告と男性は入学後、すぐに仲良くなった。剣道の腕前はいずれも3段。部の中心選手として活躍し、授業や私生活でも一緒に過ごした。被告は読み上げた謝罪文で「大学生活が人生で一番楽しかった」と振り返った。

「息子のため、天寿を全うせよ」

被害者参加制度を利用し、意見陳述した男性の父親は、被告のことを「息子の剣友」として認知していた。

「その友人に命や未来、可能性を奪われたことが悔しくて仕方ありません」

最愛の息子を失い、悔しさや悲しさに打ちひしがれる一方、「恨みや憎しみの感情は持ち合わせていない」と述べた。そして法廷で、被告にこう呼びかけたのだ。

「おとがめなしにはできない。まずは(罪に)服せ。その上で一生懸命に生きろ。あなたの生き方には息子の命と心が宿った。息子の声と感じて、わが身を大切にして天寿を全うしてほしい」

被告は父親の方を見て、硬い表情でその叱咤を聞いていた。

11月29日の判決公判。伊藤寛樹裁判長は被告に懲役3年、執行猶予4年(求刑懲役5年)を言い渡した。「突如として人生を絶たれた被害者の無念さは察するに余りある」と指弾する一方、「複数の偶然の重なり合いが要因。傷害致死罪の重い事案とはいえない」と態様を考慮し、猶予判決を選択した。

最終意見陳述で「反省と償いのために生きていこうと思います」と遺族へ向かい、頭を下げた被告。量刑理由では「被害者の父親の言葉を踏まえ、重荷を背負う覚悟を表して反省と謝罪の意思を強くしており、その様子を率直に受け止めることができる」と言及された。(倉持亮)

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