被差別部落の地名公表、出版禁止など求めた原告側の勝訴確定 最高裁
全国の被差別部落の地名をまとめた本の出版などはプライバシー侵害だとして、部落解放同盟と被差別部落の出身者約230人が、出版の差し止めなどを求めた訴訟の上告審で、最高裁第三小法廷(平木正洋裁判長)は原告側と出版社側の双方の上告を退けた。4日付の決定。31都府県分の内容の出版禁止や計550万円の賠償などを出版社に命じた二審・東京高裁判決が確定した。 【画像】弁護士らが語る東京高裁判決の意義 川崎市の出版社は2016年、被差別部落の地名や世帯数を記した戦前の報告書「全国部落調査」を復刻販売すると告知。報告書には41都府県の情報があり、同社はウェブサイトにも地名リストなどを載せた。 昨年6月の高裁判決は「人は誰しも不当な差別を受けず、尊厳を保って平穏な生活を送る人格的利益があり、法的に保護される」と言及。被差別部落出身と推測できる情報の公表はこの利益を侵害するとした。 その上で掲載地域に「本人や親族の住所か本籍があるか、もしくは過去にあった原告」が救済対象だとして、31都府県分について出版を禁じ、サイト上の情報を削除するよう命じた。 出版社側は上告し、原告側も出版禁止が認められなかった部分があったことなどから上告した。第三小法廷は4日の決定で、双方とも上告理由にあたる憲法違反などがないとだけ判断した。(遠藤隆史)
朝日新聞社