教師から経営者へ 聖心で学んだ成長見守るリーダー像
手塚加津子・昭和電気鋳鋼社長(下)
2007年に社長についた後、08年ごろから全社で「5S活動」に取り組みました。「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の頭文字をとった5Sですね。前はどこにあるか分からなかった工具類が、今は一定の場所に必ずある。基本的なことですが、こうした活動をきちんと実行してもらうようお願いして、見守っていく。そうすれば、会社というのは本当に、素直に業績が伸びていくのですから、実に面白いと思いますね。
社長になってから数年後、大御所の職人の方が定年を迎えて退職された時に、「本当に会社が変わるとは思っていなかった。誰かに見守ってもらえるということは、こんなにも励みになるものなのですね」と言っていただけたのは、とてもうれしかったですね。「会社が良くなれば、みんなが幸せになれる」と信じることをやり抜く、そしてみんなに仕えていこう、という気持ちでしたから。
だれかのために努力することは、聖心女子学院で出会ったシスターや先生たちとの影響が大きかった。
「成長を見守ってくれた聖心の先生方に憧れて教師になった。その姿勢は会社経営でも同じ」と話す
聖心女子学院に入学して最初の1年は寄宿舎で過ごし、厳格で自己規律がしっかりしていたシスターの皆さんから薫陶を受け、自分自身もボランティア活動にのめり込んだと話しました。中等科1年生の頃は、シスターの方々、特に「校長さま」とお呼びしていた学長先生は、本当に畏怖すべきというか尊敬すべき対象でした。ヘンな話ですが、みんなで遠足に行ってトイレにシスターがいらしたときには「シスターもトイレに行くんだ……!」と驚いたくらい、自分も子供だったので神格化して見ていましたね(笑)。
聖心女子学院に入ってからも、私はのんびりとしていて、自分を強く主張するタイプではありませんでした。高校生までは、どちらかというと受動的な感じが強い子どもだったと思います。そのせいもあるのか、聖心女子大学に入ってからも、また卒業した後も、シスターの方々には特に相談に乗ってもらい、多くの教えを受けてきました。
一番思い出深いのは、高等科の時に担任でもいらしたシスターの青木義子さんです。ハキハキとしていつも元気で、現代的な考えをお持ちのシスターでした。シスター青木には結婚する時にも相談したことがありました。私が「(結婚相手に)選んでもらってよかった」などと話していたら、「選ばれた? それは違います、あなたも彼を"選んだ"ということですよ」と諭されたのです。自分が選んだ結婚であり人生なのだから、決して受け身では考えないようにしなさい、ということでしょう。「自分が選んだ人生だと考えて、一人の人間としてしっかりと地に足をつけてがんばりなさい」と励ましてくれたのです。シスター青木には結婚式にもご参列いただきました。