表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
158/201

クリステラ・ヴァーラ・デトラ1

 いつも皆、鬱陶しいことを言うのよ。


 あたしのお父様は、魔王様って皆に呼ばれてる。とっても偉いんだって。

 王様と言われてるからには、よく分かんないけどきっと凄いんだろう。そんなお父様のお仕事は尊敬しているけど、あたしやエルとあんまり遊んでくれないし、ちょっとつまんない。

 お父様が「しっかりあたしを教育しろ」ってエヴァ様やセルフィに言ってたのを聞いたことがあるけれど、そんなにあたしって無責任に見えるのかな。


 次代の魔王はあなたなのですからね、って、そんなことばっかり。

 今の内からなんでもかんでも覚えろっていったって、分からないものは分からないもん。


 頑張ったもん。あたし、頑張ってるじゃない。


 倒れるくらい一生懸命やってるのに、実際倒れるまでお勉強も頑張ったのに、心配してくれたのはエルやセルフィだけ。


 エルにみっともない姿は見せられないから、平気な顔をして見せたけど。あの子には、こんな苦労を掛けさせたくないから、必死で色々学ぼうとしているけれど、誰も褒めてなんかくれない。


 ヤだよ、もう。疲れちゃった。楽しいことなんか、なんもないしさ。


 ……それに、本当にこんなに頑張る必要ってあるのかしら。

 人間との仲だって、あたしが大人になる頃には、もうちょっと良くなってるかもしれないのに。


 人間と我々は戦争してるんだ、奴らには気を付けなければいけないんだって大人はみんな言うけれど、実際に会ったこともない相手をそんなに嫌うことなんて出来ないし。

 よく分からない。


 なんで戦争なんか起きるんだろ。そんなの、さっさと終わらせちゃえばいいのに。

 大人はなんであんなに人間を嫌っているんだろう。


 どっちか悪い方が謝ったら、それで終わりにならないのかしら。

 もうちょっと仲良くすれば、大人になってお父様のお仕事を引き継ぐときになっても、あたしはあんなに忙しそうにしなくて済むかもしれないしね。


 ……あーあ。なんで皆認めてくれないんだろう。あたしはマーちんみたいに頭良くないもん。向き不向きがあるのにさ。なんならマーちんが魔王様になればいいんだ。

 ……そう、前にセルフィに漏らしたら、そんなことは絶対に他の人に言っちゃいけないって怒られたけど。


 ……だって、あたし、頑張ってるじゃない。


 なんでみんな、褒めてくれないんだろう。それだけじゃない。寂しい。結局みんな、お父様が偉いからって、お父様を通してあたしを見ている。

 ほとんどの大人は、あたしがいたずらしても叱ってもくれない。ただ、セルフィとかエヴァ様にこっそり告げ口するばっかり。



 ……そうだ。

 偶には、みんなを困らせてしまえ。そうすればもしかしたら、周りももうちょっと我儘を許してくれるかも。

 そうだわ。子供は遊ぶのが仕事だもん。

 お父様は遊んでくれないし、お母様はお空に行っちゃったっていうし。エルが大きくなった時にあたしみたいな寂しい思いをさせたら可哀想だ。


 もうちょっとあたし達は、子供らしく気楽に過ごしてもいいんじゃないかと思う。


 よし、そうと決まればあそこに行っちゃおう。

 皆が怖がってる、禁断の森。

 大人だってあそこに行くのは嫌がるんだ、よっぽど危ないところなんだろう。


 ……んむ。

 もしかしたら、もしかしたら禁断の森には、怖い怖い怪物がいるのかもしれない。


 そうだ、あそこにはきっと化け物がいて、みんなそれに怯えているんだ。


 でもあたしなら大丈夫。魔力だけならお父様だってあたしに敵わないんだから。


 だからもし怪物なんかがいたら、あたしがやっつけてやろう。そうすればきっと皆褒めてくれる。

 あたしってばすごいんだぞって、皆に教えてやろう。


 あたしは強いんだから、人間とだってそんなに怯えながら争う必要もないんだよって、あたしがいれば全部大丈夫だよって、皆に教えてあげよっと。


 そうと決まれば、早速行ってみよう!


 実は前から気になってたんだよね。

 一体あそこ、何があるんだろうなあ。


 えへへ、楽しみだなあ。


ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いいねで応援
受付停止中
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
感想を書く場合はログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
作品の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。