少年にマチルダからグリーンストーンと不恰好な人形を渡す。共に喜んでくれたみたいだ。
少年が気を利かせてくれて宿を取ってくれたらしい。
俺達も気苦労か緊張からか訓練よりもドッと疲れが出ていたらしくぐっすりと眠った。
翌日になり少年とその父のお宅を尋ねると父親は回復していたらしい。グリーンストーン様々だ。
「あぁ! 先日は私の為にありがとうございます!」
「いえいえ、お互い様です。旅の途中に寄ったらこの始末だったので手助け出来ればと思うのですが……」
「っ!? それはありがたい!! 実は……」
少年の父ハンクの説明によれば突如村に魔王の配下を名乗る者が現れて村から女達を東の塔へ連れ去って行ったらしい。
直ぐにハンクも武器を揃えて向かうが魔王の手先はめっぽう強くて1人では歯が立たなかったそうだ。
「でも、お父さん! 傷だらけのお父さんを連れてきたのはマチルダ姉ちゃんなんだよ!」
「あぁ、そうだな……。それについてなんですが……」
ハンクは少年を外へ出して話した。ウッドパルナと言う村の過去の話を聞かせた。
ウッドパルナと言う村はある青年を讃える為にその名前が付けられた村だった。
過去にその青年が同じ危機的状況で村人達に応援を頼んで危機に立ち向かったのに村人は彼を見捨てる形で動かなかったらしい。
そうして、罪悪感に耐えられなかった村人達がその勇敢な死を遂げた青年の名前を讃える様にウッドパルナと名付けたそうだと語った。
「なんだよ、それっ……!!」
「酷い……」
「あんまりだよ……」
「そのウッドパルナには幼き妹が居たのです……」
「その妹がマチルダって感じですか?」
俺の解答にハンク以外が息を飲み込む。
「……御名答。これは兄を見捨てたマチルダの復讐、なんだと思います……。でも、それなら何故私を助けたのか……」
「……それは、重なったのでは?」
「重なった、とは……?」
ハンクは俺の質問の意図が分からない様子だったのでより噛み砕いて質問した。
「幼き日の自分……つまり、兄を失う前のマチルダがあの少年と重なったから、殺せなくなったんじゃ無いんですかな……?」
「っ!? そうか、それで……」
ハンクはハッとすると苦しそうにそれでいて悲しそうに納得した。
「ハンクさん、俺達も協力してマチルダさんを止めたい。でも、それだけじゃきっとダメなんだと思います」
「ダメ、とは……?」
「本当は貴方も分かっているでしょう?」
ぐっと胸を抑えるハンクは観念した様に手を下ろした。
「そう、ですね……。村人一同でモンスター達へ立ち向かう必要がある。
少なくともその精神が無ければ、また同じ事があった時にどうする事も出来ないままの繰り返しになる……」
「アレン、ハンクさん! 俺達も協力出来ませんか!?」
「僕も焚き付け役にくらいはなれます!」
「マチルダさんに見せてやりましょう! 私達は今度こそモンスターに立ち向かうだって!」
「みなさんっ……!! 分かりました! やりましょう!!」
そう言って覚悟を決めたハンクは立ち上がり村の中央で暗く俯く人々を集めた。そして、呼び掛けたモンスターへ立ち向かおうと。
「で、でも……」
「モンスターに立ち向かうなんて……」
「ハンクさんは強いからそう言えるんだ……」
俯く村人の心は弱さに蝕まれていた。
「確かに、皆さんが言う様に私はそれなりの強さを持っています。しかし、過去に起きた英雄ウッドパルナを忘れたのですか!?」
俯く村人達が初めて顔を上げた。
そうだ、と思い出した。
ウッドパルナは1人で立ち向かったのは、自分達の様に祖先が立ち向かわなかったから起きてしまった悲劇なんだ。
それを知っていて、あまつさえ罪悪感から逃げる様に彼を勇者と讃えて村の名前を変えた事も周知の上でまた同じ過ちを繰り返すのか?
今度は村の名前をハンクにして、ハンクの子を1人にするのかと思ったら男達は目に覚悟を決めた。
もうそんな過ちは繰り返さないと大声でハンクの掛け声に続く様に東の塔へ囚われている妻や娘、若い女達を連れ戻しに一緒に向かった。
道中のモンスター達は俺達が倒して力のない老人達は幼い子供をその命で守る様にして駆けた。
そして、門番役のゴーレムとカニみたいなモンスターを討伐すると女達が解放される。
村人達は女達の生存を何よりも喜び泣いた。それは子供の様に泣き叫んで喜んだ。
「……今度は、来てくれたんですね」
村人達から離れる様に玉座の間で待ち構える様にマチルダが嬉しそうで悲しい表情で呟いた。
まるで、兄の時も来てくれたら……って後に続く様に後悔や無念を混じり合わせた様に息を吐いた。
「マチルダさん……」
「……いえ、私は魔王オルゴ・デミーラ様の従僕ナイトリッチ。勇敢なる者達よ、私を倒して見るが良い!!」
そして、マチルダもといナイトリッチと戦うが本人に俺達を殺す気とやる気がないのかほとんどサンドバッグ状態で戦闘が終わった。
彼女からは殺されたかった思いが彼女を斬りつける度に魂にズンズンと重く伝わって来た。
魔王と契約して魔物へ変貌してしまったがあの光景を見れて満足したと言う気持ちが攻撃をする俺達に伝わってきてとても辛くなった。
「……私の介錯を、ありがとう、ございます。貴方達には、辛い思いを、させました」
「……マチルダよ、英雄ウッドパルナの妹よ! 私達はそなた達をずっと忘れない! だから、安らかに眠ってくれ!!」
「はい。貴方達なら、きっと、同じ事が起こっても、大丈夫でしょう……」
そう言ってマチルダは成仏した。彼女が安らかに眠れる様に僧侶の端くれである俺とマリベル、アルスは深く祈りを捧げた。
そして、東の塔を出ると久しぶりに見る日差し。
恐らくは彼女の死が異常を解く鍵だったのだろう。ハンク達村人を村へ連れて行き俺達は別れを告げる。
勇気を振り絞った彼等ならきっとマチルダが言ったようにもう大丈夫だろうと思い森の中へ向かう。
「あっ……」
マリベルがマチルダと出会った場所を見つめる。そして、俺達はその場所に彼女とその兄の墓を建てる事にした。
言葉を交わしていない。それでも何も無い2人の犠牲者の墓が無いのはモヤモヤした。
"英雄ウッドパルナとその妹マチルダが眠る"
簡易的に作った墓へ1番僧侶歴が長い俺が祈りを捧げて、マリベルが持っていた花の種を撒いてまた全員で祈った。
そして、森の中を歩むとそこには渦があった。旅の扉と言う微かな記憶がその名前を覚えていた。
そして、その中へ入ると俺達は復活の間へ戻っていた。