剣戟と剣戟が、闘志と闘志がぶつかり合う。
「真空斬り!! ハァッ!!」
「っ!? 火炎斬り! どうだ!!」
距離の離れた筈の場所から突風のごとく斬撃をキーファは闘気を火に変えて燃やし斬る。
「っ!? やるなっ!?」
「っ!? そっちこそ!! 今度はこっちだ! 灼熱斬り!!」
キーファは個人攻撃の火の剣術であるメラを彷彿させる火炎斬りから同じ性質で全体攻撃系のギラを彷彿させる灼熱斬りを行う。
「んなっ!? ぐぅっ……!? 氷結斬り!!」
突然の剣術に避けられないと思い苦渋の決断でヒャドを彷彿される氷結斬りで防御を兼ねて応対する。
ここはグランエスタード主催の武闘大会決勝戦。決戦のカードは剣の天才キーファ王子と万能戦士アレンの戦い。
2人の若き天才達の魅せる戦いは観客も兵士達も王族を魅入ってしまい言葉を無くす。
兵士長と副長達は2人の戦いを見て、脳裏に焼き付かせるくらいにガン見する。
どちらもキーファ同様に魔法の才能がないタイプだった。
だからせめて剣の腕前だけでもと鍛えた2人だったが闘気力にそう言う運用方法があるとは思わず忘れない様に黙って見つめた。
バーンズ王も脱走癖があるが剣も教養もこなす我が子からこの世界がおかしい事を告げられた。
当然、バーンズもそんな事は分かっている。自分も彼と同い年に亡き父にそう言った事があるからだ。
そして、何処にあったのか崖の偏屈爺さんへ古文書を渡して解読して貰い念の為に亡き王妃の形見を使わせて欲しいとアレン達と共に願い出た。
まさかアレンやアルス、マリベル達も加担しているとは思ってなかった。
だから、指輪を貸す条件として開催した剣術大会で優勝と準優勝の2つを取る事を条件にして今に至る。
明らかに2人の実力は他と一線を画す。アルスも兵士長と渡り合うほど強くなったが2人は次元が違う。
キーファから放たれた灼熱の炎をアレンが放つ氷結とぶつかり会場に水蒸気が発生する。
「くらえ! 新技! 隼斬り!!」
水蒸気の中でも荒削りされた華麗なダンスを織り交ぜたキーファの剣戟は太刀筋が読めない。
それはキーファと長くいるアレンですらあの時の助言からここまで進化させた異次元の太刀筋に苦労している。
その新技隼斬りは一呼吸の間に素早い2連撃を与える技でほとんど運良く躱せた感じに近い。
「ぐぅっ……!? それならっ……!! ミラクルソード!!」
「ぐぅっ……!? これはっ……!?」
斬られた時に体力を吸い取られた感じがした事にキーファは驚愕する。回復手段を持たないキーファには欲しい技だった。
「闘気力をホイミみたいにして作った技だ!」
「良いのか!? そんな事を教えて……!?」
「お前には出来るまい! 少なくとも今はっ……!!」
「言ったなっ……!! これも新技! 爆裂剣!!」
剣と剣がぶつかる瞬間にキーファの剣から爆発する様な衝撃でアレンが吹き飛ばされる。
「ぐぅ……!? まさか、これはイオのっ……!?」
「本当は灼熱斬りみたく飛ばしたかったけど、それはオイオイ詰めて行くつもりだっ……!!」
「流石は剣の天才っ……!! でも、これで最後だっ……!! 微睡斬り!!」
「へんっ! そんなヘナチョコ、効く、訳がっ……!?」
突如、キーファの視界が揺れる。それに伴い体の平衡感覚がおかしくなり眠気を誘った。
「それはラリホーの性質を闘気力に変化させた技だ。どうだ、眠いだろ? そのまま寝ていろよ、王子様!!」
「こなクソォッ……!! ドウリャーッ!!」
やけっぱちの一撃。全てを込めたキーファが出せる最速の突き。
「なっ!? 速っ……!? ガァッ……!?」
ヤケクソにも似たキーファの最速の突進から放たれた突きに剣の防御をした。
しかし、爆裂剣で俺の剣が弱っていたのかキーファの突きに耐えられず折れてしまいそのまま腹部に突き刺さり吹き飛ばされる。
「へへっ……! 油断大敵って、ヤツだなっ……!!」
「そこまで!! アレンの剣が折れたので勝負あり! よって勝者キーファ王子!!」
ウォォォーー!! と言う歓声と共に地面に伏せる2人の若者へ拍手と歓声が贈られる。
「クッソ……! 負けたっ……!!」
キーファ達と行う訓練では基本的なんでもありなのでほとんどが俺の圧勝だが、剣術だけの戦いで負けた事があまりにも悔しかった。
「へへっ……。俺も油断したが、お前も油断したな……!」
「あぁ……。クソッ……完敗だった。優勝おめでとう」
グッと握手を交わす様に起こされるアレンは微睡の効果で眠そうなキーファを抱えて表彰台まで歩いた。
「あぁ……。ったく!? 微睡斬りに、ミラクルソードな……。覚えておくぜっ……!!」
「さっきのお前の突きも技として昇華しろよ……。疾風突き、なんて名前はどうだ?」
もう掠れている転生者の記憶にあった名前がピッタリだと思い彼に提案する。
「それ、採用。にしても眠ぃ……。微睡斬り、なんて技だよっ……。ミラクルソードもだけどさ……」
「でも、良い技だろ?」
「そりゃな……。回復と状態異常の剣技とかやっぱりお前頭おかしいだろ? 発想がって意味でさ!」
「そうじゃないとお前に勝てないと思っていたのに、それでも勝てないお前の剣の腕前の方がおかしいから……」
キーファからの相談から2年が経過した。俺は16歳でキーファは18歳。物語が始まる年齢になった。
「キーファよ、それにアレンめ……してやられたぞ」
「父上、約束通り俺とアレンで優勝と準優勝を取りました」
「はぁ……。分かった。我が王妃の形見、そなた達に預けよう。持っていくが良い」
「ありがとうございます」
バーンズ王は呆れていたけど同時に息子の成長を感じて嬉しく思った。だから、亡き妃の指輪を彼に渡した。
「そして、キーファよ」
「はい」
「その指輪がどう働くかは分からぬが世界を見て来い。お前達ならこの世界の真相を正す事が可能かもしれぬ。陰ながら応戦しておるぞ」
「っ!? はい! ありがとうございます!!」
「アレン、それにアルスやマリベル……こやつを頼んだぞ」
「勿論です。友人として、そして仲間として王子をお守りする事を誓います」
その言葉に安心したのかバーンズ王や大臣は頷き、俺達は古文書通りに神殿の閉ざされた封印を解いたのだった。