訓練を開始してから2年が経過して今は9歳だと思われる。
あの頃に始めたうる覚えのなんちゃって空手も今はしっかりと堂に入る動きに成長した。
2年も経つと色々と変化している。まずは俺の訓練の姿を見てアルスとマリベルが真似をして訓練に参加した事だ。
アルスは幼い顔立ちだけど同い年の男の子だ。つい最近年齢を聞くまで1〜2歳下だと思ってびっくりした印象がある船乗りの子供だ。
微かな転生者としての記憶だと何処ぞの王族の子で主人公だった気がするがそんな素振りもなく優しい子だ。
そんな子が船乗りの兄ちゃんと話していると興味を持つのも仕方ないと言う事で船乗りと剣術を学んでいる。
今は簡単な素振りだけをやらせているが100回は難しいらしく休みながらやらせている。
マリベルはそんな俺達を見て興味を持つ同い年の女の子だ。実家が商家でとても裕福なご令嬢だ。
ずっと暇そうにしている彼女だったが充実している俺達を見て嫉妬したのかご両親に訴えて僧侶見習いをしている。
ご令嬢とあって流石に剣術は危険と判断されて却下されたそうだ。しかし、花嫁修行と言う名目で僧侶はやらせてもらえたそうだ。
マリベルは商家のご令嬢と言うには大人のみんなに可愛がって貰える女の子ってイメージだ。だから、令嬢感がしない。
俺はと言うと本職の僧侶は見習いから格段と成長してフィル神父からは既に半人前として認められていた。
足りないのは戦闘経験。ホイミ意外にもバキなども覚えて戦闘技能はあるがそれは次の説明でなんとかなりそうだった。
「おぉ、小僧がアレンか?」
「は、はい! ご指導よろしくお願いします!!」
「うむ。奴が子供を推薦した時は働き過ぎて正気を失ったと思っていたがなんとも言えぬ存在感……。
剣の天才と呼ばれるキーファ王子と切磋琢磨させるのも良いかもな……。一度王へ進言してみよう。では、訓練を開始する」
俺とアルスに剣を教えてくれる兵士から兵士長へ推薦を受けて王国の兵達の訓練に参加させて貰える事になった。
その関係で兵士だけはズルいと言う事で魔法使い達を束ねる魔導師長に魔法使い見習いもさせて貰える日々を送っている。
剣術、武闘家、魔法、僧侶の4つを満遍なく身につけて行く日々を行っていると兵士長に呼び出しを受ける。
そこにはバーンズ王様とキーファ王子、そして妹君のリーサ王女がいた。
俺は直ぐにその場で兵士の様に跪く様にすると王が楽にする様に命じた。
「楽にして良い、アレンよ」
「はっ! それで私に何か御用でしょうか?」
一般的な異世界転生者擬きを捕まえても何も出ませんよ?
だって記憶があやふやなんだからと内心で悪ふざけするが呼び出しを受ける事をした覚えがなかった。
「アレンには我が息子キーファと剣術を競ってもらう」
「キーファ王子と?」
疑問に満ちた視線を向けると当の本人も全く聞かされてなかったのかバーンズ王を見ていた。
キーファ王子とは剣の天才と呼ばれている。
これは皮肉としてでもあるが剣を握った事がないキーファが新米の兵士と剣を競った時に勝ってしまった事から由来される。
それ以降、キーファは何かとつけて剣術の訓練をサボりフィッシュベルまだ来てアルスやマリベルと共に島巡りと称して遊んでいた。
そう言うこともあってか貴族達からは、キーファ王子は並外れる剣の才を持っているから剣術訓練をサボり遊んでいらっしゃると言うか皮肉が広まった。
「オイオイ、そんな事聞いてないぜ!?」
「無論、そなたに言えば何かと理由を付けて逃げると思ってあったからな。良い加減訓練を受けよ、キーファ」
「だとしてもっ……!? 俺より2歳年下で2桁にもみたないコイツが俺の相手になんかなる訳ないだろ!!」
キーファの侮辱とも取れる発言に流石の俺もムッと来た。俺はこの2年間遊んできた訳ではない。
「お言葉ですがキーファ王子、私は貴方様と違い遊んできた訳ではありません。撤回を申し立てます」
ギロッと睨み付ける俺の視線に王や兵士長、魔法師長は笑い、キーファは顔を赤くして怒鳴った。
「どうなっても知らないからな!!」
そして、訓練場にて俺とキーファを囲む様に兵士や王侯貴族達が見守っていた。
キーファの一撃は確かに鋭く重い一撃だった。剣の天才と言う異名は皮肉通りではなく本物だったと言える。
ただ、全力の一撃を軽々と受けられた事にキーファはショックと同時に燃えた。
やっと本気になれるライバルを得られたと思った様にキーファの怒涛のラッシュとそれを悠々と受け流す俺で周囲は歓声を上げた。
ただ、攻撃をする事に必死だったのか大振りで隙が目立つので木剣で手を叩き、その隙を狙い木剣を払うとキーファの手から剣が吹き飛ばされる。
「これで俺の勝ちです。良いですね?」
大歓声と共に大きな拍手が鳴り響く。少なくとも観衆は子供同士の競い合いとは思えない戦いに魅了されていた。
だけど、涙ぐんだキーファはホイミの治療を受ける前に走り出して何処かへ行方をくらませた。
それを見て少しやり過ぎたと反省しているとバーンズ王と兵士長が俺の側に寄ってくる。
「気にする事はない。きっと、キーファも全力を尽くしてなお届かなかったどころか手加減されていた事がショックだったのだろう」
その言葉を聞いて俺は直ぐにバーンズ王へ頭を下げる。あの試合で全力だったかと言えば嘘になる。
確かにキーファは強かった。少し訓練をした新米兵士に比べて力やセンスはずば抜けて高いがそれだけだ。
ベテランの兵士や兵士長達に扱かれてきた俺にとってはキーファはそれほど強いとは思わなかった。
「良い。アレも少しは反省しただろう。センスだけでは勝てない事もあると言う事を教えられただけで今日の試合は良かった。ありがとう」
「有り難き幸せにございます」
「今日の晩餐会はそなたの勝利を祝ってのモノだ。ゆっくりすると良い」
そう言われて高そうな食事を食べた翌日。なんと剣術の訓練にキーファ王子が参加する事になった。それ以来何かと交流を深めるのであった。