順天堂大学、さいたま市の新病院計画を断念 県など誘致
さいたま市の美園地区に順天堂大学が設置を目指していた新病院をめぐり、同大学は29日、建設計画を断念したと発表した。資材価格の高騰などで建設費が当初の想定を大幅に上回った。新病院は医師確保が困難な地域への派遣などを目的に埼玉県などが誘致に取り組んできた。県などは今後、予定地の活用策を改めて模索する方針だ。
同大学が29日付で「病院整備計画中止届」を県に提出した。同日、代田浩之学長らが埼玉県の大野元裕知事、さいたま市の清水勇人市長を訪問して経緯を説明。大野氏は「県民の期待が大きかったことから、大変残念な中止報告」と応じ、「県内の医師不足地域への派遣については、引き続き変わらぬ協力をいただきたい」とした。
順天堂大学によると、計画中止は資材高騰や人手不足などが重なり、総事業費が2015年の当初予想から2.6倍の2186億円に膨らんだことが主な要因。ほかにも、新型コロナウイルス禍への対応や医薬品の価格高騰などで病院経営の収支が悪化したことを理由に挙げた。
埼玉県は、県内の医師不足に対応して県北部や西部への医師派遣を拡充するため病院誘致に取り組んできた。14年に新病院の整備計画を公募し、15年に順天堂大の計画を選定。計画では800床の病床を設置し、300人の医師や800人の看護師らが勤務する計画で、県内初の陽子線治療施設、小児・周産期医療の機能、救命救急センターの設置なども予定していた。
当初の計画では21年の開院を予定していたが、コロナ禍などを背景に開院予定は27年に延期。24年夏には、大学側がさらに20カ月遅れると県に説明していた。説明を受け、県は大学側に新たな計画を正式に申請するよう求めていた。大学側は一時は病院の規模を500床ほどに縮小するなど見直しを検討したが、最終的に断念を決めたという。
報告を受けた清水市長は同日、「美園地区のまちづくり、医療機能の充実にもプラスになると協力してきたため残念な思いだ」と話した。市は順天堂大による病院開設を前提として医療整備の計画を立てていたが「計画中止が地域の医療体制に直ちに影響を与えることはない」と説明している。
新病院の候補地となった美園地区では経済界の期待も高かった。地元経営者らでつくる「浦和美園地域経済人の会」は1月末、病院関係者らを招いた会合を催すなどして機運醸成を進めてきた。
予定地となっていた約7.7ヘクタールの敷地は県が約3ヘクタール、さいたま市が約4.7ヘクタールを保有している。順天堂大の撤退を踏まえ、県や市は新たな病院の誘致も選択肢の1つに活用策を検討する方針だ。