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【大塚和成弁護士】会社経営権争奪戦における「IRアドバイザー」という死角《前編》

「経営者vs.アクティビスト」なぜ争いは先鋭化するのか

――争いが先鋭化するのはどのようなケースでしょうか。

大塚 最近は争いが泥沼化する前に、双方がウィン・ウィンの状況になるケースもよく見受けられます。それは、アクティビスト側の「非効率な経営を是正せよ」という要求に対し、経営者側が新たな事業展開の方針や余剰現預金を内部留保し続けることなく、株主還元の増額を打ち出すことによって、資本効率を向上させる施策を打ち出すなど的確に対応する場合です。

アクティビストがいきなり経営権の交代を求めるケースはあまりなく、当初は現状の経営では企業価値・株主価値の実現が不十分であるという問題提起をしているわけですから、これに対して経営者は本来、十分な企業価値・株主価値の実現によって応えるべきであるといえます。そうではなく、経営者が「あいつらを追い払え」と言って総務・IR担当者に対応を丸投げすると、担当者はIRアドバイザーなどに頼ることになり、アクティビストとの対立が泥沼化するわけです。

大塚和成弁護士

――弁護士はアクティビスト側と経営者側の両方から受任するのでしょうか。

大塚 かつて労使対立が華やかだった頃、会社側に立つ弁護士と労働者側に立つ弁護士は思想(イデオロギー)的な傾向によって明確に分かれていました。しかし、最近の弁護士にはそのような傾向がありませんので、労働訴訟においても、同じ弁護士が労使どちら側にも立つようになっています。

会社経営権をめぐる係争においても同じことが言え、アクティビストと経営者のどちらからも受任するのが通常です。ただし、同一事案であればアクティビスト側からの依頼の方が先になることが多いので、アクティビスト側から受任した後での経営者側からの依頼はお断りせざるを得ないということは、よくあります。

弁護士の仕事としても、アクティビストと経営者双方の状況を経験していた方がクライアントに対して有益なアドバイスを提供できると思います。もっとも、大きな法律事務所は上場企業から日常的に仕事をもらっているので、潜在的な利益相反を避けるために、会社の経営者と対立するような仕事は受任しにくいかもしれません。ただ、大きな法律事務所でも、ファイナンスを専門とするようなところは事業会社との間で利益相反が生じることは少ないので、アクティビスト側から受任することに差し支えはないようです。

後編に続く

取材・構成=経済ジャーナリスト 花岡博

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