2021~2023年にかけて、新たな排ガス規制の影響により生産終了となるバイクが多数発生した一方、小変更でこの規制に対応した車種もたくさんあります。そこでちょっと気になったのが、規制強化によって最高出力にどのような変化があったのかということ。今回は、根強い支持を集める国内メーカー製2気筒250ccスーパースポーツの馬力を比べてみました!

2気筒250ccスーパースポーツはスズキを除いて新型移行済み

平成32年(令和2年)国内排出ガス規制の施行により、この規制値に対応していないバイクは継続生産車でも2022年10月31日までに新車製造後の完成検査をクリアしている必要があり、この影響で多くのバイクが生産終了扱いとなりました。

ただし、「製造」はできなくても、完成検査後の車両を「販売」することはできます。250ccスーパースポーツでは2023年2月現在、2気筒エンジンのスズキ・GSX250Rと4気筒エンジンのカワサキ・ニンジャZX-25Rシリーズが、カタログラインアップに残るものの新排ガス規制に適合していないモデルとなっています。

一方でスズキを除く2気筒勢のうちホンダのCBR250RRは2023年2月、ヤマハのYZF-R25はひと足早く2022年5月、カワサキのニンジャ250シリーズは2023年2月に、最新排ガス規制に適合化。これにより、少なくとも数年後にユーロ6相当の規制が導入されるまでの間、この3機種は日本仕様を生産することができます。

また、GSX250Rは平成32年(令和2年)国内排出ガス規制に対応するというウワサもあり、ニンジャZX-25Rはアジア圏でマフラーなどの仕様が異なる改良版が2023年モデルとして先行発表されているため、こちらは間もなく日本市場導入と予想されています。

ホンダ・CBR250RRはまさかの1馬力アップ!

  排ガス規制後 排ガス規制前
CBR250RR 42ps/13500rpm 41ps/13000rpm
Ninja250 35ps/12500rpm 37ps/12500rpm
YZF-R25 35ps/12000rpm 35ps/12000rpm
GSX250R ※未発表 24ps/8000rpm
※グラフは2023年2月現在のメーカー情報をもとに編集部で作成

 

基本的に、環境規制強化というのはエンジン性能を下げるほうの要素になりやすく、以前は規制によりパワーダウンする車種も多くありましたが、近年はメーカー開発者のさまざまな努力や技術の進化などにより、最新排ガス規制適合化と同時にむしろ馬力アップを果たすモデルも増えてきました。

とはいえ、これは新たな排ガス規制への対応を前提に設計されているエンジンや、高度な電子制御あるいは高価な部品を導入しやすい大型二輪クラスの話。ミドルクラス以下だと、せいぜい馬力を維持するか、数%ダウンすることが普通です。

そんな状況にあって、250ccクラスで“エンジン屋”としての意地をみせたのがホンダ。排ガス規制対応の2023年型では、ピストンリング、シリンダーヘッド、カムシャフト、吸気ポートなどエンジンの細部を見直すことにより、1馬力の向上も果たしました。これにより、最高出力は42馬力に。

最新型のニンジャZX-25Rがどのような数値になるかはまだわかりませんが、現状で4気筒マシンに対して2気筒マシンがわずか3馬力差まで迫っています。ちなみに車重は、CBR250RRが168kg、ニンジャZX-25Rが184kg。最大トルクもCBRが0.4kgm上回っており、加速競争ではCBRがこのクラスを制しそうな勢いです。

ちなみに、ニンジャ250は規制対応により2馬力ダウンして、YZF-R25と最高出力が同数値に。車重はR25が169kgでニンジャが166kgと、わずかにニンジャが軽量ですが、実際に走らせたらどちらが速いのか、とても気になるところです。

なおGSX250Rは、フラットで扱いやすい出力特性を特徴としており、最高出力は従来型でも24馬力。ルックスはスーパースポーツですが、スピード勝負とは別の立ち位置を貫いており、これは新型が発表されてもキープされると思われます。

では以下に、今回取り上げた2気筒250ccスーパースポーツたちの特徴を簡単に紹介します。

国産各社の2気筒250ccスーパースポーツ

ホンダ・CBR250RR

実質的な速さは2023年もクラストップ!?

スロットルバイワイヤシステムの採用と、これを活かしたライディングモード(3タイプ)の搭載、本格的なスーパースポーツに近い車体ディメンションなどで、2017年5月にデビューしてこのクラスのレベルを引き上げる立役者となったのが、249cc水冷並列2気筒エンジンを搭載するCBR250RR。

2020年9月には、ニンジャZX-25Rの登場に対応すべく最高出力が3馬力アップの41馬力に引き上げられ、アシストスリッパークラッチが装備され、オプションパーツにはアップ&ダウンの双方向に対応するクイックシフターも追加されました。

そして2023年2月の熟成でもさらに大幅刷新。まず、レイヤー構造のカウルを用いながらスタイリングが刷新されました。倒立フロントフォークは、ショーワ製のSFF-BP仕様に変更。加えて、3段階+オフに切り替えられるトラクションコントロールシステム、ハザードランプとエマージェンシーストップシグナル機構を新採用しています。極めつけは、エンジン各部の見直しによる1馬力アップ。最新排ガス規制に対応しながらも、最大のライバルであるニンジャZX-25Rにまた一歩迫りました。

カワサキ・ニンジャ250

排ガス規制に抗えず2023年型は2馬力ダウン

かつての2ストVツインや4スト4気筒の“レーサーレプリカ”が、環境規制強化の影響で全滅した後に、新時代のフルカウル250ccカテゴリーを切り開いたのがニンジャ250R。その進化版となるのがニンジャ250です。

2018年型でのフルモデルチェンジにより、大幅なパワーアップを達成。同じ水冷並列2気筒レイアウトのエンジンを積むCBR250RRには届きませんでしたが、ヤマハのYZF-R25を超える37馬力の最高出力を達成しました。このモデルチェンジでは車体も完全刷新され、先代比8kgの軽量化も達成。現行の国内メーカー製250ccスーパースポーツでは、2023年も最軽量です。

しかしこの2023年型では、最新排ガス規制に対応したことで248cc水冷並列2気筒エンジンの最高出力が2馬力、最大トルクが0.1kgmダウン。結果、最高出力はYZF-R25と並ぶことになりました。

ヤマハ・YZF-R25

時間に余裕のある規制対応で馬力はキープ

日本では2014年12月に発売が開始されたのが、249cc水冷並列2気筒エンジンをスチール製フレームに搭載したYZF-R25。そのデビュー当時は、クラス最大の最高出力(36馬力)を誇っていました。

2018年型で平成28年排ガス規制に対応し、最高出力が35馬力に。そして2019年3月にマイナーチェンジが施され、倒立フロントフォークやMotoGPマシンのYZR-M1を思わせる外装デザインなどを採用しました。

継続生産車に対する平成32年(令和2年)国内排出ガス規制の適用に半年ほど先駆け、2022年5月には35馬力を維持したままこれに対応。同時に、前後ウインカーがLED化され、純正アクセサリーにはクイックシフターが初設定されました。これまで、ニンジャ250にやや離されていましたが、2022年型以降は最高出力が同数値。どちらが速いかは……。

スズキ・GSX250R

排ガス規制対応に期待したいフレンドリーモデル

初代は2017年4月に日本での発売を開始。以前のGSR250から継承したロングストロークの248cc水冷並列2気筒エンジンを、同じくGSR用をベースとしながらも軽量化を果たした車体と組み合わせ、本格的なスーパースポーツのルックスと扱いやすい走行性能の融合を狙ったモデルです。

2021年からABS仕様がラインアップされ、これにより車重は3kg増の181kgに。最高出力と車重を見れば、同じクラスとはいえ他メーカーの250ccスーパースポーツとライバル関係にならないことは明らかです。

ただしGSX250Rには、マイルドな乗り味と低く抑えられた価格(2023年2月のカタログ価格で58万1900円)により、エントリーライダーにもフレンドリーに対応するというミッションもあります。現在は生産終了状態ですが、復活する価値の大きなバイクです。

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コメント一覧
  1. XXX より:

    250ccクラスだと、80年代から加熱したレーサーレプリカ時代の日本生産バイクの方が尖ってたよね。規制が厳しくなってるとは言え、やっぱ所詮は東南アジアのバイクって感じ

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  2. 匿名 より:

    カタログ表記見てニンジャ250が最軽量だと私も思っていましたが、実際の市販車両に油脂類満タンにして計測した場合、CBRの方が1kg程度軽いんですね。バイカーズステーションの250特集記事で実際に計測してました。

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