【詳報】大相撲九州場所 琴櫻が初優勝 豊昇龍との相星決戦制す

大相撲九州場所は千秋楽の24日 結びの一番で大関・琴櫻が、大関・豊昇龍との相星決戦を制し、14勝1敗の成績で、初優勝を果たしました。

記事後半では21年ぶりの大関どうしによる相星決戦を制して、初優勝を果たした琴櫻の悲願達成の要因などについてお伝えしています。

【NHKプラスで配信】ニュース7 スポーツコーナー 琴櫻と豊昇龍の取組 配信期限 :12/1(日) 午後7:30 まで↓↓↓こちらで見られます↓↓↓

琴櫻が初優勝 豊昇龍との相星決戦を制す

大相撲九州場所は14日目を終えて、優勝争いはともに13勝1敗の大関の2人、琴櫻と豊昇龍に絞られ、千秋楽の24日、大関どうしでは平成15年の名古屋場所以来となる相星決戦が組まれました。

琴櫻は「はたき込み」で豊昇龍に勝ち、14勝1敗の成績で、初優勝を果たしました。

「琴櫻」のしこ名の力士が優勝するのは、祖父の元横綱・琴櫻が、昭和48年名古屋場所で優勝して以来51年ぶり。また千葉県出身力士の優勝は平成3年名古屋場所の琴富士以来33年ぶりです。

今場所3人の大関の中で唯一優勝経験がなかった琴櫻は3日目に平幕の王鵬に敗れて大関陣の中で最初に黒星を喫しましたが、その後は得意の四つ相撲に加えて磨いてきた突き押しなど落ち着いた取り口で白星を重ねました。

12日目にはここまで3連敗中だった関脇・大栄翔、14日目には新大関・大の里を破るなど、今場所は最後まで崩れず大関在位5場所目にして初めての賜杯を手にしました。

琴櫻「辛抱してやれば賜杯を抱けるんだと実感できた」

初優勝を果たした、大関・琴櫻は「これまで決定戦を経験したり、優勝に近づいても優勝できない場所が続いて、苦しい思いもあったが、しっかり辛抱してやれば賜杯を抱けるんだと実感できた」と話しました。

そして、賜杯を持った感触については「重かったです」と、てれ笑いを浮かべました。さらに、24日の一番について「土俵にあがるまでは意外と落ち着いていたが、少し高ぶりもあって、それを落ち着かせながら目の前の一番に集中して臨めた。この一番で決まるので、余計なことは考えずに自分らしくいこうと臨んだ」とふりかえりました。

その上で「がむしゃらだったので全然、何も覚えていないが、集中して相撲を取りきった結果だと思う。気がついたら相手が土俵に落ちていたので、勝ったのだと思った。そろそろ優勝しないと先代にも怒られると思った」と話しました。

そして「先代は横綱だし、ここで満足するなと言われると思うので、しっかりと、ここからまた次の場所に向けて準備して、先代に追いつけるようにできればいい」と次の目標を話しました。

琴櫻は3代続けての幕内力士 祖父は元横綱・琴櫻

琴櫻は千葉県松戸市出身の27歳。祖父は元横綱・琴櫻、父は師匠である元関脇・琴ノ若の佐渡ヶ嶽親方と、3代続けての幕内力士です。埼玉栄高校を卒業後、佐渡ヶ嶽部屋に入門し、平成27年の九州場所で初土俵を踏みました。

恵まれた体格を生かした四つ相撲を持ち味に令和元年の名古屋場所で新十両に昇進して師匠の父からしこ名の「琴ノ若」を譲り受け、次の年には新入幕を果たしました。そして去年の初場所で新三役となる小結に昇進し、名古屋場所では11勝4敗の成績を残して続く秋場所では関脇に番付を上げて、父の最高位に並びました。

「猛牛」と呼ばれた祖父を参考に押し相撲も磨いて三役昇進後は一度も負け越すことない安定感を見せ、ことしの初場所では優勝争いに加わり、13勝2敗の好成績を挙げて場所後に大関に昇進しました。

子どものころに元横綱の祖父から「大関に昇進したらしこ名を継いでいい」と約束していたことを受けて、ことしの夏場所から「琴櫻」を襲名していました。

佐渡ヶ嶽親方「親として師匠としてうれしいかぎりだ」

初優勝を果たした大関・琴櫻の師匠で父でもある佐渡ヶ嶽親方は「巡業や場所前の稽古ができたこと、連合稽古でも大の里相手に下がることなく相撲を取っていたことが自信につながったのではないか」と優勝の要因を振り返りました。取組については「下半身がぶれることがなかったので、いけると思っていた」と話していました。そして「私の手が届かなかった賜杯をつかんでくれたので、親として師匠としてうれしいかぎりだ」と率直な思いを語りました。
今後に向けては「初代琴櫻と並ぶのが夢なので、そこに向いているだろう」と綱とりへの期待を寄せていました。

八角理事長「いい相撲だったし立派だった」

日本相撲協会の八角理事長は大関・琴櫻について「これまでは受け身という感じだったが、今場所は攻めるようになった。豊昇龍から投げをうたれたがどっしり構えていたからこそ冷静にのこった。いい相撲だったし立派だった」と評価していました。

そして「この一番の気持ちを大切に忘れないでほしい。優勝をしてまた楽に相撲を取れるようになるのではないか。前のめりにならずいいタイミングで優勝できてよかった」と話していました。

高田川審判部長「これだけいい相撲を取れば楽しみ」

日本相撲協会の高田川審判部長は優勝した琴櫻について「最後の相撲は前に出た圧力でねじ伏せて攻撃的な相撲を取った。今場所は強い気持ちで前に出るいい相撲だった」と評価しました。
その上で、来場所が「綱とり」になるかという問いかけには「そうですね。これだけいい相撲を取れば楽しみ」と話しました。一方、敗れて13勝2敗だった豊昇龍の「綱とり」については「来場所いい相撲を取れば夢に向かっていける」と可能性があることは示したうえで「今場所は強い相撲が多かったので続けて欲しい」と話しました。

【解説】琴櫻「目の前の一番に集中」

21年ぶりの大関どうしによる相星決戦を制して、初優勝を果たした琴櫻。今場所中に27歳になった大関は「目の前の一番に集中する」と繰り返し、先を見ず、1日1日白星を積み重ねて悲願を達成しました。

琴櫻は先場所、腰を痛めた影響で必ずしも万全とは言えない状態で臨み、8勝7敗。優勝争いに絡むことができず、場所後には新大関・大の里が誕生し、九州場所の最大の注目は新大関に注がれました。3人となった大関の中で、琴櫻は唯一優勝経験がありませんでした。

それでも「比較されていることはわかっているけど、わざわざそれを感じる必要はない。周りの目を気にしていたら強くなれない」と話し、みずからの相撲に集中して今場所に臨みました。

初日から2連勝として、3日目は平幕の王鵬との一番。埼玉栄高校の後輩で、場所前には何度も胸を出して稽古を付けてきた相手でした。琴櫻は立ち合いから右を差して攻め込み、さらにもろざしに入りましたが、王鵬に振りほどかれ「押し出し」で敗れ、大関陣の中では最初に土が付きました。

琴櫻は「切り替える」とことば少なに話し、支度部屋を後にしました。しかし、4日目は過去4勝5敗と負け越している優勝経験者の若隆景に、続く、5日目は先場所敗れている宇良を圧倒するなど立て直しました。琴櫻は「いつもどおり。目の前の一番に集中してやっただけ。気持ちを切らさずに、1日1日しっかり集中する」と強調し、その日その日の取組に集中する姿勢を崩しませんでした。

中盤戦以降は、持ち味の四つ相撲に加えて、磨いてきた突き押しなど、落ち着いた取り口を見せ、白星を積み重ねて、大関・豊昇龍などともにトップで場所を引っ張りました。12日目はここまで、3連敗中だった関脇・大栄翔との一番。琴櫻はここでも「自分を貫いていくしかない。相手が誰とか関係ない」と意に介さず、突っ張り合う展開を休まずに前に攻め続け「押し出し」で勝って1敗を守りました。

琴櫻は佳境に入る優勝争いに向けて「結果が求められる番付。しっかりどの場所も狙っていくつもり。考えすぎて固くなってもダメだが、自分らしくやっていく」と思いを口にしました。

父で師匠の佐渡ヶ嶽親方は「今場所は腰がぶれていない。稽古してきたという自信があるんだろう。稽古場から見ていると緊張よりも楽しんでいるように見える」と初優勝に期待を寄せました。

豊昇龍との大一番を控えた千秋楽の朝もいつもと同じように稽古場でしこを踏み、立ち合いの確認をして、若い衆へのアドバイスも欠かさない。その姿からは気負いは感じられませんでした。

報道陣からの『きょう大事にすることは』という問いかけには「移動中にけがをしないこと」と冗談を話す余裕さえ感じられました。表情を引き締めたあとは「土俵に上がれば一緒だから変わらずに“目の前の一番にしっかり集中して”それを最後結果につなげられればいい」といつもと変わらずに臨むことを強調しました。

最後までぶれることなく、“目の前の一番に集中して”白星を積み重ねた琴櫻。大関になって5場所目で、ついに悲願の賜杯を手にし、来場所は、目標に掲げる祖父と同じ番付に挑む場所となります。

中入り後の勝敗

▽竜電に武将山は武将山が「押し出し」。

▽新入幕の朝紅龍に明生は朝紅龍が「はたき込み」。

▽玉鷲に尊富士は尊富士が「突き落とし」で10勝目です。

▽新入幕の獅司に宝富士は獅司が「寄り切り」。

▽一山本に佐田の海は一山本が「突き倒し」で勝ち越しました。

▽北勝富士に高安は北勝富士が「突き落とし」。

▽翠富士に阿武剋は翠富士が「寄り切り」。

▽狼雅に時疾風は狼雅が「寄り切り」で勝ちました。

▽遠藤に錦富士は遠藤が「寄り切り」。

▽翔猿に湘南乃海は翔猿が「押し出し」。

▽御嶽海に熱海富士は熱海富士が「寄り切り」で勝ち越しました。

御嶽海は負け越しました。

▽阿炎に豪ノ山は豪ノ山が「押し出し」で11勝目。

阿炎は2回目の殊勲賞受賞です。

▽千代翔馬に宇良は千代翔馬が「肩透かし」で11勝目を挙げました。

宇良は5勝10敗です。

▽若隆景に隆の勝は隆の勝が「はたき込み」。

隆の勝は4回目の敢闘賞受賞です。

若隆景は5回目の技能賞です。

▽美ノ海に平戸海は平戸海が「寄り切り」。

▽王鵬に錦木は王鵬が「押し出し」で勝ちました。

▽欧勝馬に正代は欧勝馬が「押し出し」。

▽若元春に大栄翔は若元春が「突き落とし」で10勝目です。

▽霧島に大関 大の里は大の里が「押し出し」で勝って9勝6敗としました。

霧島は6勝9敗です。

▽大関 琴櫻に大関 豊昇龍は琴櫻が千秋楽、大関どうしの相星決戦に「はたき込み」で勝って初優勝を果たしました。

【NHKプラスで配信】大相撲九州場所千秋楽 幕内取組 配信期限:12/1(日) 午後6:00 まで↓↓↓こちらで見られます↓↓↓

阿炎が殊勲賞 技能賞は若隆景 隆の勝が敢闘賞

大相撲九州場所の三賞選考委員会が開かれ、ここまで11勝をあげている前頭3枚目の阿炎が殊勲賞に選ばれました。九州場所の三賞選考委員会は千秋楽の24日、福岡市の福岡国際センターで開かれ、23日、14日目までに11勝をあげている前頭3枚目の阿炎が殊勲賞に選ばれました。

【殊勲賞】
阿炎は今場所、7日目に大関・豊昇龍を破るなど、殊勲の星をあげていることが評価されました。阿炎は2回目の殊勲賞受賞で「しっかり自分の相撲を出せたからこそ勝てたと思う。上に勝てたということも自信につなげていきたい。自分の目標である『一番集中』というのができ始めていると思うので、最後までできるようにつくっていきたい」と話していました。

【技能賞】
技能賞は前頭2枚目の若隆景が5回目の受賞で今場所、ここまで10勝をあげ左の「おっつけ」の技術の高さが評価されました。若隆景は「けがから復帰し、土俵に上がることができるありがたみを感じた1年だった。久しぶりの技能賞に評価してもらってうれしい。今度も下からの攻めに磨きをかけていきたい」と淡々と話しました。

【敢闘賞】
また前頭6枚目の隆の勝は今場所11勝をあげて終盤まで優勝争いに絡んだ活躍が評価され、4回目の敢闘賞を受賞しました。隆の勝は「体の状態も悪くなかったしきょうも動きはよかった。大関にも勝てたので自信になったし、いい状態と気持ちで来場所を迎えられる。これを続けられるように頑張っていきたい」と笑顔で話していました。
一方で、優勝争いに加わりながら終盤、失速したことについては「スタミナをつけないと途中でだらけた相撲を取ってしまう。感情を一定に保つことも大事だし厳しい稽古をしないといけない」と話していました。

幕内の懸賞合計本数 九州場所で最多の1667本

28年ぶりに15日間の全日程で入場券が完売となった大相撲九州場所で、幕内の取組にかけられた懸賞の合計本数も九州場所では最多の1667本となりました。

大相撲九州場所は場所前に入場券が平成8年以来、28年ぶりに15日間の全日程で完売するなど盛況となっています。日本相撲協会によりますと九州場所の幕内の取組にかけられた懸賞の15日間の合計本数は1667本で、平成27年の1579本を上回り、九州場所としては過去最多となりました。

今場所は横綱・照ノ富士が不在のなか、琴櫻と豊昇龍の二大関が千秋楽まで優勝争いをしているほか、新大関・大の里にも注目が集まり、盛況な場所になったことが数字の上でも示されました。

十両優勝は金峰山

大相撲九州場所の十両はカザフスタン出身で幕内経験者の金峰山が初めての優勝を決めました。

九州場所の十両は14日目を終えて、木瀬部屋の金峰山が3敗でトップ、4敗で今場所十両に昇進した安治川部屋でウクライナ出身の安青錦など3人が追う展開となっていました。千秋楽の24日、金峰山は勝てば優勝が決まる一番で安青錦を相手に立ち合いから突っ張って「突き出し」で勝ち、12勝3敗で初めての十両優勝を決めました。

金峰山はカザフスタン出身の27歳。令和3年の九州場所で三段目、100枚目格付け出しで初土俵を踏み、順調に番付を上げていき、去年の春場所で新入幕を果たしました。この場所で11勝4敗の成績を残して敢闘賞を受賞しましたが、西前頭12枚目で臨んだ先場所は4勝11敗で負け越して十両に陥落しました。

西の十両筆頭の今場所は身長1メートル95センチ、体重178キロの体格を生かした持ち味の力強い突き押しで初日から4連勝したほか連敗はせず、安定した相撲で白星を重ねました。

金峰山は「落ち着いて自分の相撲を取ることができた。木瀬親方から『金峰山の強いところは突っ張りだよ』と言われて稽古をしていたので、意識して使っていた。来場所もたくさん勝てるように続けていきたい」と話していました。

序二段は錦国が優勝

大相撲九州場所の序二段は山口県出身の錦国が7戦全勝どうしの優勝決定戦を制して優勝しました。

九州場所の序二段は芝田山部屋の錦国と武蔵川部屋の中島が7戦全勝で並び、千秋楽の24日、優勝決定戦が行われました。決定戦では、錦国が左を差してから右の上手を引いて「寄り切り」で勝って優勝しました。

錦国は山口県岩国市出身の24歳。高校時代は野球部と柔道部に所属し、卒業後に芝田山部屋に入門しました。平成31年春場所の前相撲で初土俵を踏み、ことしは左ひざのけがの影響で、初場所から2場所続けて休場するなどしましたが、今場所は西の序二段9枚目で、持ち味の前に出る相撲で白星を重ねました。

錦国は「最後の一番なので楽しむ気持ちで土俵に上がった。師匠には『落ち着いて、慌てずにやれ』と言われたので落ち着いて取れてよかった」と振り返りました。その上で「これを自信に変えてけがをしない体を作って上を目指していきたい」と今後の意気込みを示しました。

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