6年目の1980年、10月15日の広島戦でプロ初完封。一塁手の王貞治(右)、三塁手の中畑清(左)から祝福を受ける
甘いマスクで甲子園のヒーローとなり、長嶋巨人の1期生として1975年にドラフト1位で入団した定岡正二氏(58)。80年代前半は江川卓、西本聖との3本柱として巨人投手陣を支えた。6年目でようやく手にした初勝利の裏には、腰を痛めて「伝説の伊東キャンプ」に参加できなかった悔しさがあった。
「秋の伊東キャンプの参加メンバーを見て、驚いたよ。自分の名前がないんだもの。実はシーズン中に腰を痛めたんだ。でも入院するほどひどくなかったし、伊東へ行く気満々だった。首脳陣は無理をさせないように配慮してくれたんだろうけど、期待されていないのかと悔しかった。5年目を終えて未勝利というのは、もうぎりぎりでしょ。来年こそは、と思っていたからね」
1979年の秋、2年連続で優勝を逃した巨人・長嶋茂雄監督(現終身名誉監督)は静岡県伊東市に若手を集めた。「地獄」といわれた伝説のキャンプだ。長嶋監督は翌80年のシーズン後に退団したが、キャンプに参加した18人(投手6、野手12)は81年に日本一を奪回する主力になった。