回想⑦(転落)

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酔いで思考回路がグルグル回る頭で

言葉が飲み込めない。




帰らなきゃ。

もう11時40分だよ。




室内に大きな時計もないのに

彼はなんで時間が分かるんだろう

終わると急に冷めるの止めて欲しい…




呑気に思って返事をしない私に

彼がまた捲し立てる。

緩慢な私に

イライラしてるようだ。




今思うと、その時すぐに動けば終電には間に合ったんだ。


なのにあの時私は、もう終電はないと思い込んでしまった。

よく分からない。

相当酔っぱらっていたんだろう。




大丈夫。

泊まっていく。。。




そう答えて蒲団をかぶった。




すると彼は急にギアをあげて喚き出した。




何を考えてるの!

そんな事をして旦那さんが調べたりしたら

すぐに、バレるだろう‼️


バレたら学校も俺の教え子も

全部終わりだ‼️


俺の子供達はどうなるんだ。

嫁が好きとかどうとかいう事じゃないんだ。


あなただってお子さんにこんな事を知られたら

困るだろう?


お願いだから帰って!




と、私をベッドから押し退けようとした。

一気に捲し立てるその顔をジーッと見ていたら

なんだか可笑しくなって笑ってしまった。




教え子さんは関係ないでしょ?

私も大丈夫。

まずいのはあなた自身でしょ?

恐いんでしょう?





と呟いたらなんだかスーっとした。






するといっそう恐い顔になった彼は

聞いたこともない早さで一気に喚いた。




なんだよ!

だったら来なきゃ良かった。

無理を押して来たのにさ。


だったら今日はゆっくりして

明日の朝練に参加して来れば良かった。


わざわざ場所まで変更してこのホテル取って

俺の予定を返上してまで来たのに

この仕打ちか。


だいたい最近おかしいよ。

2年くらい前からおかしかった。


言いたくないけど更年期なんじゃないの?

俺の事理解したいって言ったじゃないか





ギャーギャー喚く彼はもう怪獣にしか見えなくて、内容が頭に入ってこない。

彼の口調が早過ぎて一つも言い返せない。





だけど今も思い出せるということは

私の耳は冷静に彼の言葉を聞いていたんだ。





12時を過ぎ

もう電車は無理だと匙を投げた私は

重い頭でバスルームに入り

主人に言い訳の連絡を入れようとスマホを開いた。





すると





迎えに行くよ





一時間も前の時間で

メッセージが入っていた。





急に酔いも醒め


涙が溢れた。


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