850億円巨額負債の投資会社「エクシア」 代表かけるんの黒い錬金術とマネーリテラシー
■自転車操業か
異変が生じたのは令和4年5月。エクシアから「出金手続きに時間がかかっているが安心してほしい」とメールが入った。ところが10月に出資金を引き出そうとしても出金できず、エクシアに対する訴訟が相次いで起こされていることに気づき、ようやく事態を把握した。
なぜ「超好成績」を誇るファンドが突如、出金停止に陥ったのか。民間調査会社によると、資産運用の実動部隊となるシンガポールの関連会社の平成30年時点の現預金は1万円未満だったという。こうした財務状況から、エクシアの経営実態は、出資者から集めた金を投資で稼いだように装って配当に回す「自転車操業」だった疑いが、投資家の間ではささやかれている。
出資者が落胆と不信を募らせる中、代表の菊地氏は交流サイト(SNS)などで「かけるん」と呼ばれ、その〝無邪気〟な振る舞いが話題になった。吸い上げた莫大な収益は、菊地氏が入れ込んでいたキャバクラの女性への貢ぎ物や英ロールスロイスなどの高級外車へと消えていったとみられる。
その間、出資者らは約250人規模の弁護団を結成。当初は金融機関の口座に一定の資金が眠っていたが、税金などが差し引かれると財産と呼べるものはほとんど残っていなかったという。
こうした経緯から弁護団は7月に破産を申し立て、先月に東京地裁が破産手続き開始を決定した。弁護団事務局長である小幡歩弁護士は「現物資産はそこまで残っていないだろう。現金も簡単に分かるところには残していない」とみる。さらなる追及には菊地氏個人の破産申し立てが必要となるが、出資金が戻ってくる保証はなく、慎重な姿勢を見せる。
出資者の女性も出資金の返金については半ばあきらめているといい、「知識がないのに金を増やしたいという思いが芽生え、傲慢な状態だった」と自戒を込めて振り返った。
資産形成の重要性が説かれる一方で、お金の知識を磨く機会は少ない。悪徳ファンドにだまされないマネーリテラシー向上が必須となっている。