洋上風力発電を巡る汚職事件で、風力発電会社「日本風力開発」(東京都)側の依頼で国会質問をした見返りに約7290万円の賄賂を受け取ったとして、受託収賄罪に問われた元衆院議員の秋本真利被告(49)は25日、東京地裁(矢野直邦裁判長)で開かれた初公判で無罪を主張した。「(資金提供は)国会での質問と関係ない。賄賂に当たらない」と述べた。
公訴時効(3年)にかからない約4180万円分の贈賄罪に問われた日本風力開発元社長の塚脇正幸被告(65)も「利益供与はしていない」と無罪を訴えた。
一方、秋本元議員は、新型コロナウイルス対策の持続化給付金200万円をだまし取ったとされる詐欺罪については起訴内容を認めた。捜査段階では否認していたとされる。
検察側は冒頭陳述で、2人は、秋本元議員が事務局長を務めていた自民党の再生可能エネルギー普及拡大議員連盟で顔を合わせ、秋本元議員は遅くとも2018年ごろから飲食接待を受けるようになったと明らかにした。
秋本元議員は長年の夢だった日本中央競馬会の馬主になるため、19年3月に塚脇元社長から登録に必要な3000万円を無利息無担保で借り入れたという。
秋本元議員は競走馬や繁殖牝馬の購入、育成といった馬主生活にのめり込み、塚脇元社長が23年6月までに経費計約4290万円を負担。秋本元議員は塚脇元社長の求めに応じて、19年2月と22年2月、日本風力開発が洋上風力発電の参入を目指していた青森県の陸奥湾での規制緩和や、公募基準の見直しを国会で求めたとした。
秋本元議員は、12年衆院選で千葉9区から初当選。4期目の23年9月に逮捕・起訴され、24年10月の衆院選には出馬しなかった。【飯田憲】
秋本被告「馬の血を残す夢に協力した」
元衆院議員の秋本真利被告は初公判で、「検察官は競馬事業の実態を全く理解していない」と述べ、検察側と全面対決する姿勢を鮮明にした。
「認否を行う前提として、競馬事業について説明させてください」
紺のスーツ姿で法廷に立った秋本元議員は、裁判長に起訴内容の認否を問われ、こう切り出した。
日本風力開発の塚脇正幸元社長とは共通の趣味である競走馬を通じた関係に過ぎなかったと強調。「塚脇さんは思い入れのある馬の血を残したいという強い夢があった。私は塚脇さんの夢の実現に協力していた」とし、馬は塚脇元社長のもので、元社長による経費負担が自身への利益供与には当たらないと訴えた。
一方の検察側は、秋本元議員自身が馬の育成を楽しんでいたと反論した上で、利害関係にある塚脇元社長と「癒着」するに至った過程を詳述した。
冒頭陳述では、秋本元議員が競りで馬を購入した後に、「楽しませて頂きまして、本当にありがとうございます」と塚脇元社長にメッセージを送っていたと指摘。自身の考えた配合の組み合わせで牝馬が生まれた後にも、「トライさせて下さり、ありがとうございます」と伝えていたという。
秋本元議員は、塚脇元社長から馬の購入代や預託料として巨額の資金を受け取りつつ、塚脇元社長に「何か質問しましょうか」と国会で質問してほしいことを問い合わせていたとした。
秋本元議員が4選を果たした2021年の衆院選では、日本風力開発の社員が秋本元議員陣営の選挙運動を手伝うほど深い関係にあったことも主張した。【飯田憲、安元久美子】