pixivは2024年5月28日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴
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エディブロックは疲れていた。
何故なら延ばしに延ばした原稿の締め切りが今日までだったからだ。
そして今、朝から支度も食事もそこそこに取り掛かっていた原稿がやっと完成し、提出まで持っていけたのだ。
長時間パソコンに向き合ってガチガチに固まった体を伸ばしながらエディは時計を見る。
「げっ、もうこんな時間かよ」
壁にかけられている時計の針は太陽がもうそろそろ暮れるだろうという時間を指していた。
そしてエディは今この瞬間まで静かに大人しく待っている者が居ることを思い出した。
「おい、ヴェノム」
エディは伸ばした腕を下げながらそう空中に向かって言葉を投げかける。
するとどうだろう。
エディの背中辺りが黒く滲んだかと思えばその滲みは立体となり、今エディが向いている方へと伸びていく。
しゅるしゅると動く流動体のような黒色は先端が小さな丸を形作ったかと思えばあっという間に小さな頭、今エディがヴェノムと呼んだ者の頭となった。
そう、この黒い流動体こそがエディに寄生、もとい共生している地球外知的生命体のヴェノムである。
『やっと終わったかエディ』
エディの前に頭を形作ったヴェノムはそう返す。
「ああ、待たせてすまなかったな。腹減っただろ?」
『減った』
「だろうな。俺も腹減ったなー。チェンさんトコ行ってなんか買うか」
『チョコレート!』
「お前ほんとチョコ好きだよな」
『ああ!チョコレートは甘くて美味いしフェネチルアミンがある』
「フェネ…なんだって?」
『フェネチルアミンだエディ』
ヴェノムは律儀に訂正を入れながらもさあ早く買いに行こうとその黒い体を細く伸ばしてエディのジャケットとヘルメットをエディに渡す。
『新しいこのチョコもなかなか美味いぞエディ』
「それは良かった」
チェンの店でインスタントラーメンとヴェノム用のチョコレートを買い、ソファに座ってテレビを見ながら遅めの夕食を食べる。
エディはテレビを見ながらチョコレートを次々と口に放り込んではパキパキと頬張るヴェノムの後頭部をぼーっとしながら眺めていた。
『なあエディ』
「ん?」
『キスってのは甘いのか』
「は?」
最後のチョコレートを口に放り込みながらヴェノムはそう問いかけた。
そう問われたエディは理解が追いつかずにポカンとした顔で首を傾げている。
『キスは甘いのか?』
「………」
『エディ?』
問いに対し何も返ってこないことに気付いたヴェノムは首を傾げて下からエディの顔を覗き込む。そして今ではもう見慣れた大きく吊り上がった目と鋭い牙が並ぶ頬まで裂けた口が付いた自身の相棒の顔がエディの視界に入る。
『…いや、なんだって?』
エディはようやくそう返す。
『キスってのが甘いんならオレも欲しいぞエディ』
「………」
つい先程までチョコレートが盛ってあったはずの皿をテーブルの向こうへ追いやった。
そしてエディの前に顔をやりエディの顔を正面から捉える。
ヴェノムの表情は真剣だ。いや、少し好奇心が垣間見える。エディと言いながらずいっと顔を近付ける。2人の目が合う。近い。近過ぎる。距離が10㎝程度しかないぞ。
「…ヴェノム」
『なんだエディ』
「どこでそんなのを…」
『さっきすれ違った女たちが言ってた』
「はぁ…」
エディは盛大にため息をつく。どうやらヴェノムはさっきすれ違ったまだ若い女の子たちの話を耳にしたらしい。しかし何故。勿論エディはヴェノムが甘いものが好きなのは知っているが、まさかそこに反応するとは。
「あのな、」
『オレも食いたい』
「キスは食べれない」
『なら味見させろ』
「おい、人の話を聞け」
そもそもの話、キスが甘いというのは比喩表現であって実際に味がするわけではない。無味だということでもないがチョコレートなどのお菓子のように考えられても困る。
『狡いぞ』
「はあ?」
『前にアンとしてただろ。オレは知らないのにエディだけ知ってるのは狡い』
「……」
確かに彼女とはそれはもう熱いキスをした。だが別れた恋人との熱いキスを思い出させられ今それを言うかと思いエディの眉間に皺が寄る。
『なあエディ、キス…』
「…わかった」
「!ホントか!?」
パッとヴェノムの表情が明るくなる。元々大きな目をさらに大きくしてキラキラと輝かせながら更に少しエディに近付く。大きく裂けた口から長い舌が覗く。
期待が膨らむといった感じのヴェノムに対しエディは最早やけくそだった。熱くて甘いキスなんてもう随分していない。アンが居た頃はよくしてたな、と思い出し苦笑する。未練たらしいエディをアンは笑うだろう。
「目を閉じろ」
『?』
きょとんとするな、可愛いな。
「…キスをする時は目を閉じるもんだ」
「そうか!」
ん!と素直に目を閉じて顔を少し上に向けたヴェノムの無防備さに少しは警戒とかしろよなと思いつつエディは目と口を閉じたヴェノムの頭をキスがしやすい様に少し調整する。頬を撫で、唇にあたる部分を優しくなぞる。んん、と少しくすぐったそうに小さな声が漏れるのを聞いて自然と笑みが浮かぶ。
(…なんか小さい子供みたいだな)
実際は自分よりも遥かに大きい体格を持つムキムキだが。
そんなことを思いながらまずは触れるだけの軽いキスを送る。それから啄む様に何度か。ちゅ、ちゅっと静かにリップ音だけが響く部屋でエディは不思議な気分になりながらもヴェノムにキスを送る。口を開けて舌を出し、ヴェノムの唇を舐めるとピク、とヴェノムの黒い体が波を打ったのが見えた。エディは気を良くして、ヴェノムの口角あたりに指をかけて口を開かせる。鋭利な歯に気を付けながら彼の長い舌を絡めとる。
人間同士のように唇を合わせたままキスをするにはヴェノムの舌は長過ぎる為、口腔内はひとまず置いておき、舌を集中的に愛撫した。舌先から根元まで、舐めて、甘噛みして、軽く吸い上げてみる。
『…ん、ん…っ、ふ…っ、は』
零れ出る小さな喘ぎを耳にして、エディは片目を開けてチラとヴェノムを見てみる。その大きな目をぎゅっと閉じて与えられる刺激に震えるヴェノムの顔が見え、思わず腰がぞくりとする。
いつの間に小さく形作られたヴェノムの手がエディのパーカーをきゅっと掴んでいる。
(……なんか変な気分になるな…)
舌への愛撫を止めずにそう思う。共生しているエイリアンとのキス、と言うこと自体おかしな話だが、まさかこんなに反応が返ってくるとは思いもしなかった。ヴェノムが舌だけで震える程感じている事実に知らず下半身に熱が集まる。
『は、っ…ふ、えでぃ…』
「ん…もっと口開けろ、ヴェノム…」
『ぅ、ん、…』
舌足らずな声がエディの名を呼ぶ。素直に開かれた口腔内に己の舌を侵入させ、歯の裏側をゆっくりとなぞる。また黒い体がさざ波のように小さく揺れる。その反応が堪らなくなる程愛おしい。頬の裏、上顎、それからまた唾液に濡れる赤く長い舌、と繰り返し愛撫する。
いつの間にかお互いに熱い息を吐いてキスに夢中になっていた。
『…え、でぃ…』
「…っ、ヴェノム…」
揺れる後頭部を抱えてもっと、と深く繋がろうとする。ヴェノムから苦しげに吐かれる息は熱く濡れていて小さいが、エディの耳にはしっかりと届いている。
随分長い時間口を合わせていたと思う。ようやっと満足して唇を離す。ヴェノムは半分蕩けたように形を保てていなかった。彼の口からはは、はあ、と荒い息が洩れている。真珠のように白い瞳は濡れたように潤んで、口の端からはどちらのものかわからない唾液が溢れている。ぼんやりとエディを見上げる姿にぞくぞくっとエディの背中を甘い痺れが走る。
「…どうだった?」
ヴェノムの呼吸が落ち着くのを待ってからエディはそう聞いた。聞かなくともわかっていたが、彼の口から直接聞きたかった。我ながら意地が悪いと思う。まあ許せ、言い出したのはお前だろ?
『…すごかった』
「どんな風に?」
『…あつくて、しびれる、まだ舌がしびれててうまくはなせない』
「うん」
『…すごく、あまかった』
チョコよりも、そう返し、ふにゃりと笑う。その顔がなんとも愛らしくて、エディはますます堪らなくなる。
『あたまがぼうっとする…』
ふふ、と笑いながらエディは腕を広げる。ヴェノムは素直にエディの胸に寄り、すりすりと頭を擦り付ける。エディは猫みたいだな、と思いながら指先で頬を撫でる。ヴェノムはくるる…と喉まで鳴らしてみせる。ああもう、堪らない。
「満足したようで」
『また、したい』
「…たまにならな」
『毎日』
「………」
どちらも譲らない。正直なところ、エディはキスだけじゃ足りなくなりそうだった。欲を言えばもっとしたい。実のところ息子が反応していた。たかがキス、と思っていたが甘かった。実際、ヴェノムとのキスは今までのどのキスよりも熱く、甘かった。この場合甘いというのは比喩だ。恐らく。
『エディ、』
「…はあ、わかったよ」
『!!』
ヴェノムは少し不機嫌そうな顔をしていたがエディの言葉を聞いてすぐに目をいっぱいに開いてとても嬉しそうな顔をする。その顔にエディは思わず股間に手をやる。
「やっぱ今のナシ…」
『じゃあ明日な!起きたらキスをしよう!』
「………」
きゃっきゃと嬉しそうにはしゃぐヴェノムを見たらエディはもう何も言えない。
(くそ、不貞腐れたような顔をするからって折れるんじゃなかった…!)
そう考えながらエディは深呼吸をする。
キスは甘いのか、その答えをわからせるためにした筈だった。戯れのつもりだった。その筈だったのに。
「…本気になりそうだ」
エディは1人そう呟いた
おわり
圧倒的エディヴェノ派の人間ですどうも
何回見てもエディヴェノが少なすぎて「もう自分でやるしか…」の結果がこれになります
時間軸的にはヴェノム1作目後のエディがヴェノムとの共生生活にも慣れてきた頃ら辺のつもりで書いてます
いちゃいちゃはさせてますがキスしかしてないので取り敢えずは全年齢で…
エディやヴェノムの話し方は一応映画を基にしていますが解釈違いがあるかもしれません
何番煎じだよと思うかもしれませんが宜しければどうぞ…
文章力0の人間が初めて書いたものになりますのでおかしいところしかないと思いますが少しでも気に入って頂ければ幸いです
もしかしたら自己満の為に続くかもしれません
消えてたので一応投稿し直しました
中身自体は変えてないのでご安心を…