飛距離10mダウンで本塁打激減 「飛ばないボール」の真相に迫ったアナリストの衝撃分析

鬼筆のスポ魂

今季、セ・リーグ最優秀防御率のタイトルを獲得した中日の高橋宏斗。被本塁打はシーズン通してわずか1本だった=8月6日、長良川球場(松永渉平撮影)
今季、セ・リーグ最優秀防御率のタイトルを獲得した中日の高橋宏斗。被本塁打はシーズン通してわずか1本だった=8月6日、長良川球場(松永渉平撮影)

2024年のプロ野球の全日程が終了後、12球団は当然ながら、それぞれの143試合のデータを細かく分析し、来季に向けた戦力編成や戦略戦術の〝たたき台〟として活用する。そうした状況下、ある球団のアナリストから衝撃的なデータ分析が示された。

「今季のセ・パの打球の飛距離は以前に比べて10メートル近く落ちている。飛ばない原因は投手のレベルが上がったこともあるが、公式球の材質にあると見て間違いはない」というものだ。

防御率1点台ずらり

打球が10メートル近く飛ばなくなれば本塁打の数も減り、投手に有利に働き、打者は不利となる。そう聞かされて今季のセ・パの打者部門と投手部門の成績をそれぞれ5年前と10年前とで比較してみると…。

今季、パ・リーグで唯一の3割打者となったソフトバンクの近藤健介=3日、横浜スタジアム(佐藤徳昭撮影)
今季、パ・リーグで唯一の3割打者となったソフトバンクの近藤健介=3日、横浜スタジアム(佐藤徳昭撮影)

まずチーム本塁打数だが、今季100本以上打ったチームはセがヤクルトの103本、DeNAの101本の2球団。パはソフトバンクが114本、日本ハムが111本の2球団。10年前の14年はセが広島の153本を筆頭に4球団、パも西武の125本など3球団あった。5年前の19年はセは巨人が183本、ヤクルトは167本を放つなど4球団が3桁に乗せ、パもソフトバンクの183本、西武の174本など5球団が100本を超えた。

逆に投手成績は今季のセ・リーグ防御率1点台は5人、2点台が7人。パはモイネロ(ソフトバンク)の1・88をトップに2点台以下が9人いる。これが10年前だと、セは防御率1点台はゼロで2点台が4人。パは金子(オリックス)の1・98がトップで2点台以下は3人。5年前もセは大野(中日)の2・58がトップで2点台が5人。パは山本(オリックス)の1・95など2点台以下が3人だった。

縫い目の高さが影響か

やはり過去の数字と比較すると、投高打低の傾向は顕著だ。〝飛ばないボール疑惑〟はシーズンが始まって1カ月を過ぎたあたりで各球団の関係者が口々に指摘していた。日本プロ野球選手会も調査に乗り出したが、公式球の反発係数はセ・パ両リーグのアグリーメント(申し合わせ事項)通り、目標の平均値「0・4134」であることが確認されていた。公式球が統一された11年からの2シーズンは〝飛ばないボール〟が問題となったが、13年以降は打撃成績が向上し、「飛ばない」という声は消えていた。

巨人の主砲、岡本和真は今季、27本塁打にとどまり、7年連続30本塁打を逃した=9月19日、東京ドーム(中井誠撮影)
巨人の主砲、岡本和真は今季、27本塁打にとどまり、7年連続30本塁打を逃した=9月19日、東京ドーム(中井誠撮影)

反発係数が以前と同じなのに、どうしてボールが飛ばないのか? 球団のアナリストは原因についても調査結果を伝えていた。

「説明によると、ボールの縫い目が以前よりも高く、大ざっぱだという。それが原因で飛ばないと結論付けていた」と球団関係者は話した。ボールの縫い目が0・1ミリ高くなると、飛距離は2~3メートル短くなるという。つまり「ボールの作りが雑」だから、本塁打が激減したという結論だ。

ファンのニーズは

今季の3割打者はセが2人、パは1人だけ。本塁打が出ず、飛距離が伸びないのでヒットの確率も減る。必然的に投手戦が増えて、今季のセ・パの平均試合時間(九回終了の試合のみ)は3時間2分と、過去20年で最も短かった。

今季、チーム最多の12本塁打を放った広島の坂倉将吾。チーム本塁打数は昨季の96本から52本に激減した=7月24日、神宮球場(佐藤徳昭撮影)
今季、チーム最多の12本塁打を放った広島の坂倉将吾。チーム本塁打数は昨季の96本から52本に激減した=7月24日、神宮球場(佐藤徳昭撮影)

日本野球機構(NPB)は試合進行のスピードアップを目指しているが、10年前の平均試合時間は3時間17分で、5年前は3時間16分。今季との比較では14~15分の短縮に過ぎず、その見返りとして投手戦ばかりの試合が続く。これが本当に野球ファンのニーズに沿っているのかどうか…。ボールの製造方法の問題も含めて検証してもらいたい。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て特別客員記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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