「賃貸or持ち家」という議論が巷では、よくなされる。
それぞれに言い分があり、結局のところ結論がでないことが多い。
そんななか、大手IT企業で働くエリート男子の湊さんは「“都心の一等地”に“賃貸”で住み続けたい」という強いこだわりを持っている。
今回、彼が住む六本木のタワーマンションに押しかけ、お家拝見も兼ねてその理由を聞いてみた。
▶前回:富裕層が本当に好む家とは?都心マンションライフにいま異変が起きていた!
〈DATA〉
名前:湊 伸一(みなと・しんいち)さん(仮名、41歳)
職業:大手IT企業勤務
住居:六本木のタワーマンション(1LDK・37平米・家賃はヒミツ)
1. 湊さんが『賃貸マンション』に住み続ける理由
湊さんは、できれば一生賃貸で住み続けたいと思っている“賃貸派”の男子だ。
高い家賃を払い続けるのであれば、購入したほうがお得なんて考え方もあるが…。
なぜ、彼は賃貸にこだわるのか?
「よく聞かれるんですけどね。今のところ買うことは考えていません。
経済的合理性だけを考えたら、買ったほうが得なのでしょう。
でも、都心が好きで、あちこち住んでみたい僕にとっては、購入することは、デメリットになります。
そのときは気に入って購入したとしても、同じ気持ちが長く続くとは限らない。
好きなところに好きな時に引っ越せる。それが賃貸の何よりのメリットです。可動力が高いことが僕にとっては重要なポイントです。
東京って、いつもどこかで再開発が進んでいるじゃないですか。数年いるだけで良くも悪くも街の雰囲気がガラッと変わります。
例えば、眺望が気に入ってタワマンを購入しても、窓から見えている景色もすぐに変わります。
実際、僕が今住んでいる部屋も、入居当時は窓から東京タワーが一望できたんですよ。今は虎ノ門の開発が進んでいるので、残念ながら見えなくなってしまいましたけど。
眺望が気に入ってこのマンションを買った人は、少しガッカリしたかもしれません。でも、賃貸だとそういうのも気にならないんですよね」
そしてもう1つ、湊さんにとって譲れないポイントがある。
「新築物件が好きなんですよ。単純に綺麗だし。
新しい家って、設備が最新のもので整えられているし、サービスも充実している。
できれば築3年以内の物件に住みたいと思っていて、物件を購入してしまうとそのサイクルが崩れてしまう。
古い家に住み続けなければいけないなんて……考えただけで震えてきます」
湊さんは、車も購入しないようにしているそうだ。その理由は、家にお金をかけたいから。
「車の維持費や駐車場代で月に10万かかるなら、その10万を家賃につぎこみ、より便利でハイクラスな部屋に住みたいと思っています。
免許はあるんですけどね。運転はあきらめました(笑)。今後も、車に乗る予定はありません。都心ならいつでもどこでもタクシーが拾えるし、バスも電車も便利ですから」
「好きな場所で快適に住まうこと」にこだわるからこそ、賃貸に住み続けるという湊さん。
賃貸の身軽さを活かして、地方に住むなど考えたことはないのだろうか。
湊さんの会社は、リモートワーク主体となり、地方に移住した同僚もちらほらいるとのことだが。
都心に住み続ける必要性がなくなっても、湊さんが、都心にこだわる理由とは?
2. 湊さんが『都心』にこだわる理由
「都心が好きで、都心に住み続けたい。ただ、それだけです。
僕は地方出身で、実家に帰れば、大きな家も広い土地も自然あふれる環境も、すべてが手に入ります。
逆に、そうした環境で育ってきたため、都会らしい生活に憧れて上京してきたんですよ。
ですから、わざわざ地方に移住する気持ちは湧かないし、都心に住み続けたいと思っています」
そもそも、人が集まるにはそれなりの理由があるという。利便性はもちろんだが、人を集めるだけの魅力がその街にはあるということ。
「東京のなかでも、歴史があって、文化があり、発展し続けている街が好きです。
土地の歴史や地形、名称の由来などを知ると、さらに都心に住むということが、面白くなります。
六本木の前は大手町に住んでいました。とにかくどこに行くにも便利でしたし、皇居などもあり風情がある雰囲気も好きでした。
次は、赤坂や南青山、宇田川町やNHKがあるあたりの渋谷にも住んでみたいですね。
便利なだけじゃなくて、人、グルメ、そして文化に芸術――必要なときに、必要なものが手に入るのに、この生活を手放して田舎で暮らすなんて考えられません」
湊さんは、六本木に住んで8年になる。当初は、1年位と思っていたのに、住み始めたら面白いくらいに街に愛着が湧き、気づけば8年にもなっていたそうだ。
「想像力を働かせて、自宅拡張という観点から捉えると、徒歩圏内に自然も繁華街もあるエリアの都心生活はかなりメリットがあると思います。
例えば、六本木の檜町公園や毛利庭園など、近くの大きな公園を“自宅の庭”と考えると、癒される広大な自然にすぐにアクセスできます。
ミッドタウンや六本木ヒルズ、国立新美術館などは、「大きな居間や別宅や工房」と考えて、刺激をもらえたり寛げる場所です。
近所の品ぞろえの良いスーパーマーケットやコンビニ、有名なレストランやカフェは、“豊かな冷蔵庫であり食卓”と考えることで、家の広さを補って余りあるものだとも考えられるかもしれません。
会社がリモートワーク主体になったので、同僚なんかは、郊外に引っ越していきましたけど、僕は都心に居続けるつもりです。こうなると、もはや六本木を守っている気分にすらなりますね(笑)」
次のページで、いよいよ湊さんのお部屋探訪。湊さんならではの部屋づくりのこだわりは――?
ミニマリスト・湊さんのお部屋をご紹介!
3. 港区男子のお宅拝見!
六本木駅から徒歩数分のところに、湊さんのタワーマンションはある。
ホテルのような、エントランスでコンシェルジュに出迎えてもらい、エレベーターで上がる。BGMが流れる内廊下を歩くと湊さんの部屋がある。
コンシェルジュがいて、セキュリティ対策もしっかりしている。ゴミ捨てがラクでホテルライクな暮らしができることも、このマンションを選んだ理由の1つだという。
部屋は、37平米の1LDK。
「窓からの景色と、部屋の間取りを見て、『ここだ!』」と直感しました。もっと広い部屋でも、と思うかもしれませんが、もともと物が少ないミニマリストタイプなので、このくらいでも十分なんです」
※ベランダから撮影した湊さんの部屋
玄関を入ってすぐ左手にミニキッチンがあり、そこからつながるリビングがある。
右手には可動式の扉に囲まれた寝室と、景色を見ながら入浴できるバスルームが用意されている。
※浴室乾燥機付きのバスルームからは、都会の景色を一望できる。
ビルトインタイプの洗濯機は、1人暮らしにちょうどいいサイズ感なのだとか。
また、部屋が広く見えるように工夫をしているという。
「家具をできるだけ置かないようにしています。置くとしてもロータイプのものだけを選んでいるということです。
とくにリビングは、テレビ(65型)より低いものだけを置き、視覚効果で広く見せています」
最近、宅配トランクルームというものを利用し始めたそうだ。
「季節外の洋服などをまとめて預けられるし、スマホ1つで写真で管理できますし、本当に便利です」
※機能的な家具を選ぶのも、湊さんのこだわり。家具を買うときは、3つ以上機能が付いているものを選ぶそうだ。
家具選びも、自分なりのこだわりを発揮。
「テレビ台やローテーブルはクリアタイプのものにし、圧迫感を無くしています。下にタイヤがついているのも、ポイントです。透明なせいで電源ケーブルなんかは見えちゃうんですけどね。まぁ、そこは仕方がないことでしょう。
テレワークが常態化しそうなので、そろそろ本格的なデスクとチェアの導入を検討しています」
料理は一切しないという湊さん。
「六本木に住むメリットの1つが、おいしいレストランがたくさんあるということ。それを楽しまないなんてありえません。
料理は、全然しないので、棚のなかには料理とは関係ないものを収納しています」
4. 六本木のタワマンに住む港区男子の日常
最後に、港区男子である湊さんの日常を見てみよう。
平日は、部屋で仕事に没頭。
趣味はスポーツジムでのトレーニングに英会話、エンタメ鑑賞、そして散歩。
お気に入りの店はオムライスの名店『麻布食堂』、シャルキュトリーが美味なモダンビストロ『ヘイメル ミヤマス』、伊豆の海山の幸が味わえる『伊豆の旬 やんも 南青山店』など。
六本木はもとより、赤坂、青山、渋谷、麻布十番、池袋、銀座など幅広いエリアで食を楽しんできた湊さん。しかし、コロナによりその頻度は減り、今はお気に入りの店に1人でぶらりと行くのが楽しみだという。
理想のデートは、映画鑑賞からの美術館巡り。都心のカフェのはしご。自然エリアを散策してから、落ち着いた店で食事……と、好奇心旺盛な湊さんらしいプランだ。
ところで、ハイスペックな港区男子である湊さん。ズバリ、六本木タワマン暮らしをしてからモテるようになったのか、聞いてみた。
「モテるようになったか?と聞かれるとわかりませんが、家がきっかけで、色々と話題も増えて人とつながることができましたね。
こうして、取材の話がくるのもそうですし、コロナ前はパーティールームで開催された交流会に参加したこともあります。
あとは、自分に自信が持てたと思います。街全体から得るエネルギーもそうですし、こういう部屋に住んでいると気持ちもいいですから」
そう答える湊さんの爽やかな笑顔が印象的だった。
◆
今回は、可動性を大切にする“賃貸派”の湊さんのお話をうかがった。
経済的合理性だけでは語りきれない、“東京の街が好き”という都心愛に溢れる湊さんの選択。
都心の賃貸暮らし。そのメリットを最大限に謳歌する生き方を選び取ることも、一興なのだ。
我々が生きる上で大切なのは、家を「買う」か「買わない」かではなく、あくまでも「自分らしいライフスタイルの選択」なのだと、湊さんへのインタビューにより気づかされた。
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Text/和栗恵