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先住民族の定義として参照できる『アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会報告書』によると、アイヌも北米先住民族やアボリジナルと同様に先住民族。「北海道縄文人の直接の子孫」「13世紀ころに大陸から渡来の異民族」この2つの珍説を並べて恥じないのがネット右翼。 3/n x.com/chizuko_n20/st
(1)
・アイヌ施策推進法における「先住民族」という用語について日本政府は、「一般的に使用している意味で用いて」いるとしており、先住民族の権利に関する国際連合宣言においても、「先住民族」の定義が置かれていないということも「承知している」と答弁しています。「先住民族」の意味について参考になるのは、2009年の『アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会報告書』です。それによれば、「先住民族は、一地域に、歴史的に国家の統治が及ぶ前から、国家を構成する多数民族と異なる文化とアイデンティティを持つ民族として居住し、その後、その意に関わらずこの多数民族の支配を受けながらも、なお独自の文化とアイデンティティを喪失することなく同地域に居住している民族である」とされています。アイヌの場合、近代国家(明治政府)が形成される過程で、多数民族の支配を受け、それでもなお独自の文化とアイデンティティを保持していることから、「先住民族」と考えることができるとされています(国立アイヌ民族博物館「よくある質問 アイヌ民族はなぜ先住民族と認められているのですか?」を参照)。
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(2)
・単数形の「アボリジニ」という語は差別的であるという理由から、現在では「アボリジナル」「オーストラリア先住民」などと表記します(藤川 2011)。
・「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会報告書」の定義によると海外の先住民族と「日本に於けるアイヌ民族は全く事情が違」うわけではありません。豪州先住民族も北米先住民族も「一地域に、歴史的に国家の統治が及ぶ前から、国家を構成する多数民族と異なる文化とアイデンティティを持つ民族として居住し、その後、その意に関わらずこの多数民族の支配を受けながらも、なお独自の文化とアイデンティティを喪失することなく同地域に居住している民族」であり、アイヌも同様です。
・「アイヌ以前に日本人共通の祖先・縄文人」は、歴史的誤った表現です。「縄文人」は民族集団ではありません。「縄文人」はまた単一の民族集団から構成されているわけでもありません。「縄文人」は、一般的には、新石器時代に相当するとされる日本史の歴史区分である「縄文時代」(前14000年頃〜前10世紀頃)に、日本列島に生活し、「縄文文化」と名付けられているものの担い手だった人々を指します。非常に長い歴史のスパンであり、きわめて多様だったはずの「縄文人」を「先住民族」とは呼べません(上記の定義を参照)。研究では、関東以南と東北以北の新石器文化人は大きく異なることが指摘されています(藤田2012)。
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(3)
・①②という形に提示されている「二つの意見」は、学術研究に存在するものではなく、学術研究によって認められているものでもありません。「5〜10世紀の道北・道東に展開したオホーツク文化は、サハリン経由で南下してきた人々が担い手だったと考えられているが、こうした集団流入は長い北海道の人類史の中でもまれな出来事だった。北海道の大部分では大きな集団流入や入れ替わりがないまま、縄文文化を担った人々の子孫が続縄文文化・擦文文化の中心的な担い手となり、今日のアイヌ民族につながっていると考えられている」のです(大坂2014)。
・「①であれば、全国の日本人と同じ縄文人の子孫となり、先住民とは言えない」は間違っています。上記の通り、縄文時代を生きた人間は多様であり、一つの民族集団とは言えません。先住民族は近代国家が形成される過程で支配を受けることによって形成されるものであるということも、上記の通りです。
・国連「先住民族問題に関する常設フォーラム」(UNPFII)は、単一の定義では必然的に過不足が生じ、先住民族の権利保障のためには「先住民族」の普遍的定義は必要ないという見解を示しています(UN 2018:3)。定義がないから、先住民族ではない、先住民族に当てはまらないなどは、矛盾した詭弁です。
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