テクノロジー

2024.09.24 16:45

建物全体が蓄電池になるコンクリートの可能性

プレスリリースより

コンクリートに炭素の微粒子を混ぜることで電気を蓄えられるようになる「蓄電コンクリート」というものがある。アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)で発明され、日本の會澤高圧コンクリートと共同で研究開発が進められているものだが、両社は蓄電コンクリートの社会実装のためのコンソーシアム「ec3 Hub」を設立。このほどプロジェクト開始の式典がMITミュージアムにて開かれた。

蓄電コンクリートは、電子伝導性炭素セメント材料(ec3)の通称。はMIT土木環境工学部のフランツ・ヨーゼフ・ウルム教授、アドミール・マシック准教授らが開発したもので、炭素の微粒子(カーボンブラック)を添加したコンクリートを巨大なスーパーキャパシター(電気二重層コンデンサー)にするという技術だ。化学反応によって充放電を行うリチウムイオン電池などと違い、スーパーキャパシターは電気を静電気としてそのまま蓄えるので、充放電サイクルは10万回以上と、桁違いの長寿命という特徴がある。
ec3が電気を蓄える仕組み(會澤高圧コンクリート公式ホームページより)。

ec3が電気を蓄える仕組み(會澤高圧コンクリート公式ホームページより)。

蓄電コンクリートを住宅の基礎に使えば、丸1日分の電気を蓄えることができるという。ビル全体に使えばさらに多くの電気を蓄えられる。道路に使用すれば、EVの無線給電にも応用できるということだ。

また、カーボンブラックを添加したコンクリートに電気を流すと発熱する性質を利用して、融雪舗装や床暖房に使える「自己加熱コンクリート」の研究も同時に進められている。まさに革命的なコンクリートと言える。
自己加熱コンクリートが氷を溶かす様子(會澤高圧コンクリート公式ホームページより)。

自己加熱コンクリートが氷を溶かす様子(會澤高圧コンクリート公式ホームページより)。

會澤高圧コンクリートは、ec3コンソーシアムでこうしたコンクリートの社会実装を進める一方で、同社が主催するaNET ZERO Initiativeに建設、自動車、電力などの業界から企業の参加を募り、この技術のサプライチェーンを全国に構築するということだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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ヒビを自力で直すコンクリート、CO2の大幅削減に貢献

プレスリリースより

水路などに使われるコンクリートは乾燥収縮によるヒビ割れが避けられず、60年ほどで作り直す必要があるが、自分でヒビ割れを直すコンクリートなら補修工事の必要がなく、実質的に100年はもつ。そんな夢のようなコンクリートが実用化されている。

不二高圧コンクリートは、自己治癒コンクリート「バジリスクHA(ヒーリングエージェント)」を使ったコンクリート建築資材の製造と施工を行っている。このたび、熊本県の公共工事に初めて採用され、FTフリュームと呼ばれる水路用の大きなU字型の資材を307本、総延長613メートルが使われることになった。これによるコンクリートの長寿命化で、通常のコンクリートを使った場合と比較して二酸化炭素排出量を28.4トン削減できるという。
不二高圧コンクリート公式ホームページより

不二高圧コンクリート公式ホームページより

バジリスクHAは、オランダのデルフト工科大学で研究されていた技術を、北海道の會澤高圧コンクリートが世界で初めて量産化したコンクリート材料だ。酸素と水に反応するバクテリアと、その餌となるポリ乳酸を混合したもので、それをコンクリートに混ぜて施工する。

自己治癒の原理はこうだ。酸素や水に触れなければバクテリアはコンクリートの中で200年間眠り続けるが、ヒビが入り酸素と水が浸入するとバクテリアは目覚めて活性化する。そして、ポリ乳酸を食べはじめ、炭酸カルシウムと炭酸ガスを排出する。炭酸カルシウムはヒビ割れを埋め、炭酸ガスはコンクリートから溶け出したカルシウムと結合して、さらにヒビ割れを埋める。実験では、人工的に入れたヒビが2週間ほどで塞がれた。

不二高圧コンクリートによれば、コンクリート1トンを生産するときに排出される二酸化炭素量は0.8トン、建築工事全体の排出量の3割にのぼるという。だから、長寿命のコンクリートを使えば脱炭素に大きく貢献できるわけだ。そのほか、メンテナンス工事の費用の大幅削減、受益者負担の軽減が見込まれ、安全性も高いことから「一石二鳥以上です、使わない手はない!」と発注者から評価され、採用となった。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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経済・社会

2024.07.21 11:00

AIブームと気温上昇で世界の電力需要が急増、17年ぶり増加幅に IEA報告

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国際エネルギー機関(IEA)は19日発表した報告書で、気温上昇と経済成長、人工知能(AI)によってエネルギー消費が跳ね上がる中、2024年の世界の電力需要はこの20年ほどで最も急速に増加するとの見通しを明らかにした。同時に、自然エネルギー電源は増加傾向にあるとも指摘している。

電力に関するIEAの中間報告によると、昨年2.5%増だった世界の電力需要は今年、約4%増となる見通しだ。この数字が現実になれば、世界金融危機やコロナ禍の反動で需要が回復した例外的な年を除き、2007年以降で最も大きな増加幅になる。さらに、2025年も4%の増加が予想されている。

気候変動で世界の気温が上昇しているため、エアコンの使用が増え、電力需要増の主な要因となると報告書は指摘している。すでに今年上半期に多くの「猛烈な熱波」が発生し、需要を押し上げて電力系統のひっ迫が起きた。

AIの急速な普及と用途の拡大も、今後数年にわたり電力需要を押し上げると予想されている。ただ、IEAによるとデータセンターがどれだけ電力を食うかについてはまだ不確定要素が大きいという。

電力需要は特にインドで大きく、今年は8%増えると予想されている。また、中国でも6%超の増加が見込まれている。米国では堅調な経済成長やデータセンター部門の拡大、冷房需要の高まりを背景に3%増となりそうだ。

再生可能エネルギーは今年から来年にかけて急増し、世界の電力に占める割合は2023年の30%から2025年には35%になるとIEAは予測している。

AIの消費電力と気候変動への影響

AIが消費するエネルギー量の正確な算出は難しいが、電力消費が大きいことはよく知られている。データセンターの消費電力量に関する信頼できるデータがほとんどないこと、またAIの普及のスピードや程度についても不確定要素が多いことから、AI関連の電力需要を将来にわたって予測するのは難しいとIEAは述べている。
次ページ > AI活用で排出量削減の可能性も

翻訳=溝口慈子

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製品

2024.09.06 18:25

肩掛けできるポータブル電源、約10年の長寿命も特長:気になるプロダクト

プレスリリースより

自然災害が相次ぐなか、防災用品としてポータブル電源の購入を検討する人が増えている。

アンカー・ジャパンの「Anker Solix C300 Portable Power Station」は、シリーズ初となる肩掛けストラップの付属が特長。避難所などへ携行する際に両手がふさがれないため、他の荷物を持ったり子どもの手を引いたりといったことが可能になる。コンパクトサイズで、重量約4.1kgという軽さもポイントだ。

バッテリー容量は288Whで、エントリーモデルの位置付け。とはいえ、最大300W出力のACポート3基を備え、停電時でも小型扇風機や電気毛布への給電やノートPCの充電などが可能。また、USB Type-Cポートは3基、USB Type-Aポートとシガーソケットも各1基ずつ搭載していて、家族全員のスマートフォンを同時充電することもできる。

バッテリーセルには、長寿命と高い安全性が特長のリン酸鉄リチウムイオン電池を採用。内部の電子部品の発熱抑制などにより長寿命化を実現するAnker独自技術も使われていて、約10年間は安心して使用できるのも嬉しいところだ。

●製品名:Anker Solix C300 Portable Power Station
  Amazon   楽天市場 

●本体サイズ:約16.4×16.1×24.0cm、約4.1kg


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文 = 加藤肇

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