渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

斬鉄剣康清

2024年11月28日 | open

私の単独作。

私は鍛人(かぬち)である。
私の本質はカヌチである。

名を源康清という。

斬鉄様(ためし)というのは
刀身のあり様を確認するに
おいて、極め
て重要だ。

本職の資格登録者の現代刀
でも、これを恐れて避け
る者
がほぼ現在は全てに近
い。現代刀は刀剣でも日本
刀でもなく、「美術刀剣」
という芸術作品だからだ。
眺めるだけの。当然の帰結
であり、それは良くも悪く
もない。美術刀剣は日本刀
とは別物だからだ。


昔のメモ。


こちらも自書のメモ。

 
私が私単独で造るのは刃長
15cm未満のあくまで和式小
(こがたな)であり、刀剣で
はない。
また、美術刀剣でもない。
いわゆる鋼のナイフだ。
 

水に濡らすとマルテンサイト
変態部分の焼刃のみが水が弾
けて浮かび
上がる。美術日本
刀のように研ぎ師が白く描く
疑似的な刃部ではなく、
本当
の焼刃部分。


A3変態点(+50℃程)まで
加熱した鋼はオーステナイ
トに変化し、焼入湯による
急冷により250℃まで冷却
された時にマルテンサイト
変態が一気に生じる。
「冷却水」とはいうが、特
定温度を保持した湯である。
面心立方格子は急激に炭素
を鉄の立方格子内部に固溶
させた体心立方格子に変態
する。
急激に態様が変わるので、
「変化」ではなく「変態」
という。
シャキーンと変わる。変身
に近い。

これが焼き入れだ。
一度刃部方向につよく屈曲

してからグンと伸びて反り
を生じさせる。
だが、短刀等の直刀物の場
合には、逆にその反りを抑
える特殊な焼入方法を採る。
ほんの僅かの手違いで、刀

身は真横に「くの字」に反
り曲がったりうつむいた筍
反りに
なったりする。
刀身の靱性を増すために私
は必ず間(あい)を取る。
「冴え」を出すために焼き
戻し工程を省くなどという
馬鹿なことは絶対にやらな
い。
冷却液には工夫がある。

だの清水ではない。

このナイフも、私が製作し
た江戸初期の水田国重の鋼
を使用した別な小さな刀子
もそうやって作っている。

この画像の自作ナイフも斬
鉄剣である。
この個体は折り返し下地鍛
錬が二代目小林康宏、鍛造
康清(私)、火造康清、焼入
康清。

平成7年(1995年)1月作。
斬鉄試験済み。

斬鉄剣刀工二代目小林康宏
は実質上引退した。
高齢と共に、身体的な事情
による。
幸いに、直系弟子は文化庁
の刀工免許を取得した者が
現在二名いる。



 



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