李琴峰さん「アウティングで追い詰められた」トランスジェンダー公表
台湾出身の芥川賞作家・李琴峰(りことみ)さん(34)が20日、自身のSNSでトランスジェンダーだと公表した。李さんは25日、朝日新聞の取材に応じ、SNS上でアウティング(暴露)の被害を受け、やむを得ず公表に至ったと明らかにした。
李さんは既にレズビアンであることを公表していたが、差別による犯罪などで亡くなった当事者を悼む「トランスジェンダー追悼の日」の11月20日にあわせ、自身のSNSに「私はトランスジェンダーでもあります」とつづった。
李さんは取材に「生まれた時に誤った性別を背負わされ、後に女性に訂正した」と語った。トランスジェンダーであることを理由に、いじめや差別を受け、「台湾では安心して生活できない」と11年前に日本へ「逃げてきた」という。
過去を明かさず暮らしてきたが、2021年に芥川賞を受賞後、X(旧ツイッター)など複数のSNSで、李さんの個人情報とともにトランスジェンダーだと名指しする投稿が広がった。当初は中国語圏内だったが、日本語でも投稿され、台湾在住の投稿者らと民事で係争中だという。
トランスジェンダーの人々の中には、性別移行を公表せず、移行後の性別で生活している例が少なくない。李さんもそれを望み、これまで「(トランスなのかという)卑劣な問いには答えない」としてきた。しかし、「提訴後もアウティング行為がやまず、自死を考えるほどに追い詰められ、カミングアウトして被害を訴えざるを得ない状況になった」という。
「アウティングは当事者を死に追いやることもあると知って」
李さんは「私は女性でありレズビアン。トランスジェンダーという属性は、私にとって自分の本質ではない。本当は公表などしたくなかったが、アウティングは当事者を死に追いやることもある深刻な人権侵害だと知ってほしい」と語った。
さらに、「性的マイノリティーとして抑圧や差別を受けてきた私が、小説家になるという夢をかなえ、生き延びている。アウティング被害の末のカミングアウトとはいえ、私の存在が誰かの希望になれたら」とも話した。
20年の東京高裁判決、アウティングは「人格権の侵害」と認定
性的マイノリティーのアウティング被害をめぐっては、一橋大の法科大学院生の男性(当時25)が15年、恋愛感情を伝えた同級生から、ゲイであることを暴露され、同大の建物から転落死した。両親が大学側に損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁は20年、大学側の対応に違法性はなかったとして請求を棄却する一方、アウティングについて「人格権やプライバシー権を著しく侵害する許されない行為だ」と指摘した。(二階堂友紀)
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