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第12話 国家祓魔官試験ー5

◇光太郎


 

 さすがは俺の子だ。

 夜虎は前世の記憶を持ち、しかし誰にも愛されず親の顔すら知らず、若くして死んだと俺達に話してくれた。

 泣きながら話す夜虎を見て、俺は泣いた。


 そんな夜虎が輪廻転生を経て、俺と香織の元へ来てくれたのは、きっと運命なのだろう。


 きっと何か大きな使命を背負っている。

 そして夜虎を強く育てることこそが、俺に与えられた使命だ。


 俺は上から、土人形を吹き飛ばした自慢の息子を見る。

 雷属性の魔術の基礎であり、原点であり、頂点に至る技――雷槍。


 それを小学生入学前にして使いこなす我が息子――夜虎。


 雷槍は、本来であれば、踏ん張る足、回転する腰、そして腕と……呪力を徐々に、そしてスムーズに移動できる技術がなければ十分な威力が出せない。

 というよりもそうしなければ呪力量が足りないのだ。

 だが、夜虎は、その巨大な呪力で全身を強化し、ただの力技であの威力。


 もしも魔力制御を身に着けたなら。

 正しき型で、雷槍を出せたなら。

 体の成長がその呪力量に……そしてその才能に追いついたなら。


「ふふふ、ははは!!」


 笑いが止まらん。

 さすが、俺の子だ!


 ドン!!


 そして、夜虎は土田君の最大火力である土人形参式――およそ霊度3相当をやはり一撃で消し飛ばした。

 どうだ! これが俺の息子だ! いやぁ……それにしても。


「夜虎ぁぁぁぁ! さすが、俺の子だぁぁ!!」


 にこっと笑って手を振ってくれる我が子が愛らしくてたまらない。





「あはは……そうだ、これは夢だ。僕は疲労でぶっ倒れたんだ。さてと、カフェインカフェイン! うーん、カフェインはやっぱりオイシイナ!」


 俺が土田さんがヤケクソで召喚した参式と呼ばれる土人形をやはり一撃で消し飛ばすと土田さんが壊れた。

 強さは確かにあの時の霊度3の(シン)相当のような気もするが正直よくわからない。

 こんなに弱かったかな、あの時は本当に怖くて、勝てるような相手に見えなかったんだけどな。


 どうやら俺はしっかり成長しているようだ。


「夜虎君……一級まで実技試験は合格です。文句なし合格! ……うん、合格合格! すっごいやぁ! あはは! 今どきの小学生は進んでるなぁ! おじさん驚いちゃった! よし! 転職しよう!」


 土田さんが笑いながら吹っ切れてしまったようだが、疲れてるのだろう。

 そろそろ寝て欲しい。

 そのあと、静香お姉ちゃんも実技試験を受けたのだが、参式に苦戦していた。

 

 雷槍では、一撃で貫けず何度も修復されている。

 それでも遂に、その一撃で貫いた。

 今の静香お姉ちゃんは、一級ぎりぎりということだろうか。

 そういえば、父さんでも一級には中学卒業時だって言ってたし。

 そう思うと、静香お姉ちゃんは父さんよりもすごいことになる。本当に天才なんだな。


「お、お疲れ様です、静香お姉ちゃん。い、一級実技試験合格おめでとうございます!」

「…………ええ」


 転生者でもないのに中学生で一級合格なんてすごいと純粋な気持ちでおめでとうと言ったつもりだったが、改めて思うとめちゃくちゃ煽ったような気がする。

 プライドを傷つけてしまっただろうか。

 一級合格おめでとう! 中学一年生ですごいね! まぁ俺は小学一年生だけど! みたいなニュアンスに聞こえただろうか。


「す、すみません」

「謝る必要はないわ。喜ばしいことよ! えぇ、この国にあなたのような天才が産まれたことは喜ばしいことよ……えぇ……喜ばしいことよ……喜ばしいことよ」


 最後の方どんどん声が小さくなって、明らかに落ち込んでいる静香お姉ちゃん。

 でも慰めの言葉も見つからないので俺は頭を下げて、その場を後にする。

 なんかクールビューティーって感じだったが、すごく人間味のある人だったな。

 

 紫電家か。

 御屋形様にもいずれ挨拶することがあるだろう。


「土田さん、次はどこにいけばいいですか?」

「え? あ、あぁ。次は面接だがお昼の後だから」


 すると俺の父さんと母さんが見学席から降りてきた。


「夜虎! お疲れ様! かっこよかったわ!」

「さすが、俺の子だ。だが力任せでは、ダメだぞ。魔力制御をしっかり学ばなくてはな」

「うん!」

「お二人とも! 先に言っておいてくださいよ! なんですか夜虎君は!」

「ん? 天才だと言っただろう」「そうよ、土田さん」

「いや、確かに言ってましたけど! はぁ……もういいです。お二人も常識を知らない方でした」


 土田さんがため息を吐く。

 父さんが背中をばしっと叩き、笑っている。

 どうやら俺の父さんと母さんは、少し抜けていると思ったが世間的にもそういう評価らしい。

 大らかな人だなーぐらいに思っていたが。


「静香様、お久しぶりです。随分と成長されましたな」

「……喜ばしいことよ……えぇ喜ばしいこと」

「静香様?」

「え? あ、あぁ。白虎家も息災のようね。それにとんでもない跡継ぎもいるようだし」


 すると父さんが静香お姉ちゃんに挨拶をしていた。

 しっかり頭を下げて挨拶をするあたり、うちと紫電家の関係性がわかるな。


 五大貴族の一角、紫電家。

 戦闘力という最もわかりやすい力で世界を支配している家のご令嬢というのなら、相当に偉いのもわかる。

 こんなところで会ったせいか、よくしてもらったのもあり、俺は親近感がわいているが。


「またうちの夜虎と本家にはご挨拶に行こうと思いますので」

「え、えぇ。待っているわ」

「では失礼します」

「失礼いたします、静香様」

「失礼します! 静香お姉ちゃん!」


 そして俺たち家族は、試験場を後にした。

 

 お昼。


「夜虎、何食べたい? なんでもいいわよ、ご褒美ね」

「じゃあ、チョコレートパフェ!」

「ふふ、じゃああそこのレストランにしよっか!」

 

 ファミリーレストランに向かった白虎家。


 俺はハンバーグセットとチョコレートパフェを注文した。

 俺は甘いものが大好きなのだ。

 前世の反動があるのか、あの日初めてチョコを食べた衝撃からか、俺はめちゃくちゃに甘党になった。

 それに魔術はエネルギー、つまり糖分を使うからな!


 腹を満たした俺たちは、気づけば昼を過ぎていたので試験会場に戻った。


「あ、あの! サインしてください!」

「あぁ、構わないぞ」

「握手もいいですか!」

「しゃ、写真とかって!」

「あぁ、もちろんだ」


 道中、父さんはサインや写真を道行く人に求められていた。

 それも一人や二人ではなく、たくさんの人にだ。

 握手すら求められて、感動で泣いている人もいた。


「普段は車だからこんなことはないが、俺はそんなに目立つか。これでも変装してきたつもりなんだが」

「……逆に目立つよ」


 革ジャンにサングラス、二メートル近くの筋骨隆々の大男。

 これで目立たないわけがない。一目で父さんか、ターミネーターだとわかる風貌だ。


 だが、それにしても俺が思っているよりずっと十二天将家は、この日本において英雄のような扱いみたいだ。

 いや、文字通り英雄なのだ。

 (シン)という恐怖は常にこの国を覆っているが、それを倒せるのは祓魔官のみ。

 ならば、父さんはきっと多くの人の憧れであり、英雄であり、ヒーローなのだ。


「あ、あの! あれやってもらっていいですか!」

「ふっ…………I'll be back」

「「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」」


 それは違うと思うが、サムズアップしてみんなのもとを去っていく父さんはなんかかっこよかった。

 俺はそんな父さんが好きだし、みんなに優しい父さんが好きで誇らしかった。



 そして祓魔局本部に戻った俺たち。

 いよいよ、面接試験が始まる。

 

 案内された大きな部屋で、俺を抱きかかえる母さんが座る。

 目の前には面接官らしき鋭い眼光の人達が、三人ほど机を挟んで俺を見る。


「では、一級祓魔官試験の面接試験を始めます。まず初めに、白虎香織さん」

「はい! 夜虎の身長は今朝は115、5センチ! 体重は、21、4キロでした! 好きな食べ物は私の作ったチョコレートケーキです! 息子のことならなんでも聞いてください! 夜虎のためならなんでもできます!」

「では、ご子息を膝から降ろして、あなたは部屋の外に出てください」

「――!?」

(当たり前である。なんで行けると思ったのか)


 俺を膝の上に抱えながら衝撃を受ける母さん。

 なんで面接に同伴してるの? いや、確かに小学校の面接とかならそんな感じだろうけど。


「…………だめ……ですか? この子はまだ小学校入学前です! 親の私がついてないといけないと思います!」

「なら小学校入学前に一級祓魔官試験なんて受けさせないでください」

「くっ!」

(正論である)


 そして母さんは膝の上にのせていた俺をしぶしぶおいて、立ち上がる。


「圧迫面接なんてしたら許しません!」

「母さん、大丈夫だから」

「うぅ……じゃあ夜虎がんばってね! ママ外で待ってるからね。嫌なこと言われたら大きな声で呼んでね!」

「はいはい」


 やっと外に出た母さん、俺はため息とともに椅子にちょこんと座る。


「はは、すみません。中々子離れできないみたいで。では本日はよろしくお願いします」

「…………君本当に六歳?」


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