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第7話 母の愛ー4

 俺は鬼をまっすぐ見る。

 ゲラゲラとバカにする笑い方だ。

 それもそうだろう、ただの三歳児に何ができる。

 そしてまるで虫を踏みつぶすようにその巨腕を振り下ろした。

 

 だが、俺はそれを身体強化でステップし、交わす。

 鬼は驚くような顔をする。

 

 こちとら母さんの溺愛育児で呪力量がカンストしかけてるんだ。


 だが、砕ける石畳を見るに、俺では一撃もらえばアウトだろう。

 強化してるとはいえ、そもそも強化元の体が脆弱すぎる。なんせ三歳だからな。


 それに長期戦をやってる暇なんてない。

 そんなことをしてる間に、母さんが危ない。


 だから全力だ。

 俺にできる全力を出し切って最速で決める。


「思い出せ……」


 呪力量を鍛えるばかりで、戦うようの呪術というものを俺は学んでいない。

 だが一つだけ知ってる呪術がある。

 テレビの向こうで、父さんが(シン)を倒した時に使った呪術だ。


 父さんは俺と同じ雷の属性だ。

 身体能力を強化し、その雷纏う剛腕で(シン)を貫き、祓っていた。

 それはまるで槍のように。


 だから俺も、きっと同じことができるはず。

 様子見なんかいらない。試し打ちなんてしない。

 今できる全力を、今できる最高を出せ。


 俺はこぶしを握る。

 全力で呪力を出力し、最大出力で雷を纏う。

 放電する雷が、周囲を焼き焦がし、空間すらもゆがめていく。


 雷の熱で、空気が爆ぜ続け、バチバチという音が連鎖していく。

 

『アァ、ヤッチャッタナ。コンナニ強イノカ』 


 俺は息を限界まで貯め、右足で踏ん張る。

 やり方があっているかはわからない。

 でもこの技の名前は憶えている。 

 ニュースキャスターが言っていたし、呪術の本にも名前だけは書いてあった。


 雷属性の呪術の初歩の初歩。

 一番最初に学ぶ技だ。

 しかし、原点にして頂点とも書かれていた。

 なぜならこの技は、全属性中最速、全属性中最強の攻撃力を持つと言われる。


 そして俺は全力で地面を蹴り上げた。

 ただ全身を全力で身体強化し、全力で走る。

 

 バチッ!!


 そしてその勢いを殺さずに、すべての呪力を右腕一本に集める。

 あとはただ、全力で貫け。


 一点の曇りなく、一点の迷いなく。

 己の力を信じて、全力で貫くのみ。


『オイシソウダッタノニナァ……』

「――雷槍!!」


 バチン!!!


 雷鳴轟き、空気が爆ぜる。

 まるでカミナリが落ちてきたような爆音が鳴った。


「はぁはぁ……」


 俺が通った箇所は、全て真っ黒に焼け焦げる。

 振り向けば俺が貫いた(シン)の上半身が消滅し、黒い粒子となって消えていく。


「勝った……」


 どうやら俺は勝利したようだ。

 リミッターが外れたのか、あんなに鍛えた俺の呪力を大幅に消費したようで、俺は意識を失いそうになる。

 しかも腕がめちゃくちゃ痛い。

 でもここで倒れるわけにはいかない。

 最後の力を振り絞り、母さんを背負って俺は必死に走った。


 もうみんな避難してしまったようで、誰もいない夏祭り会場。

 背中からはまだ息が聞こえる。まだ死んでない。

 まだ助かる。

 俺は、母さんを連れて神社を降りる。


 人がいる!


「誰か……誰か!! 母さんを助けてください!!」


 瞬間、まるで雷のような速度で誰かが走ってきた。

 俺はそれを見て、安堵した。とともに限界を迎えて、目を閉じた。

 でもあとで文句言ってやろう。遅いよ、父さん。

 




「う……う~ん」


 俺はゆっくりと目を覚ました。

 

「起きたか、夜虎!!」

 

 周りを見渡すと、おそらくは病院だろうか。

 真っ白なベッドに、真っ白な天井、そしてムキムキのパッパ。

 俺の右腕にはギブスがつけられている。もしかして折れたか?

 あぁ……確かに動かないかも、一切手加減せずに本当に全力だったからな。


「父さん……」

「よかった……本当によかった。遅くなってすまない。全力で走ったんだが……」

「いいよ、そんなに泣かないで…………!?」


 俺は飛び起きた。


「母さんは!!」

「あ、あぁ。隣だが……お、おい!!」


 俺はベッドを飛び降りる。

 急いで隣の部屋の扉を開ける。

 そこには、横たわる母さんとそして……白い布が顔に被せられていた。


 そして、俺は。


「母さん!」

「てへ?」


 その布をはぎ取った。

 その下には、いつもみたいにニコッと笑う母さんがいた。

 

「バカ!!」

「ほ、ほら……あんなことがあったからね。やっぱりユーモアが大事かなって――!?」


 俺はぎゅっと母さんを抱きしめる。

 少し驚きながら母さんも俺を抱きしめ返してくれた。

 そして優しく頭を撫でてくれる。


「頑張ったね、夜虎……うっすら見えたよ。夜虎の雷槍……パパみたいでかっこよかった」

「うん……うん……」

「ありがとう、助けてくれて」

「もう二度と……自分が犠牲になるなんて言わないで」

「うーん。夜虎を守るためなら言っちゃうかも」

「なら絶対僕がまた守るよ。どんな敵がきたって、母さんは僕が守る。たとえ霊度7がきたって……守るから」

「わぁ、パパよりかっこいい。さすが私の息子、惚れちゃうな」


 俺は少しだけ泣いた。母さんも少し泣いてたようだ。

 後ろで父さんのすすり泣く声も聞こえる。


「あのね……母さん。あのね……僕」

「ん?」


 俺はそして母さんの眼を見て、少し恥ずかしそうに、でも言わなきゃいけないとまっすぐと目を見て言った。


「僕も……それと俺も……母さんが大好きだよ」

「ふふ、それも知ってた」


 するとやっぱりいつものようにニコッと笑って返してくれた。

 この日からだろう。

 俺が本当の意味で、この世界で生きることができるようになったのは。



 そして、俺の三歳による初陣は終わった。

 そのあと俺の右腕がぐちゃぐちゃで、数か月安静にしなければならないことになる。

 それに(シン)を倒したのは、父さんということになった。


 母さんと父さんが口裏を合わせてくれたようだ。

 俺が倒したなんてことになったら、一体どんなニュースになるかわからないからな。


 まぁそんなこんながありながら、俺は両親の愛をたっぷり受けて、すくすくと成長する。

 たくさん食べて、たくさん寝て、この世界のことをたくさん勉強して、日々を過ごし成長した。



 そして俺は、六歳になった。

 小学校入学、ピッカピカの一年生である。


あとがき。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

ここから彼の最強呪力の無双物語が始まっていきますので是非ご期待ください。


面白かった! 続きが読みたい! という人は、フォローや★を頂けると、作者が小躍りします。指先一つで小躍りさせれれますのでちょっと指を伸ばしていただいて、タイトルからレビュータグで、★で称えるを押してくれると嬉しいです。


これから頑張って更新していくので、是非楽しんでいってください。

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